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「ケアマネ受験者数激減」の衝撃

前年の4割弱まで減った受験者数

今年10月に実施された介護支援専門員実務研修受講試験(ケアマネ試験)の受験者数が公表された。その数は、昨年の受験者数の4割弱。まさに衝撃的な数字だ。

受験者激減の背景にあるのは、受験資格の厳格化だ。

2014年、厚生労働省はケアマネジャーの専門性を高める目的から受験資格を変更した。具体的には介護福祉士や社会福祉士、看護師、医師といった法定資格の保有者や生活相談員、相談支援専門員などに対象を限定。その上で、いずれにも「通算して5年以上であり、かつ、当該業務に従事した日数が900日以上であること」を満たすよう求めている。

一方、「介護等の業務経験が10年以上」「実務者研修修了者や介護職員初任者研修修了者などで5年以上の業務経験」といった人は、対象外となった。

そして改正は、3年間の経過期間を経て今年から適用された。

この改正によって、ケアマネ試験の受験をあきらめた人は少ないないだろう。事実、私が所属する大学の卒業生でも「従来の制度であれば受験できたのに、今年は受験を見送らざるを得なかった」という人がいた。この人は、介護施設で介護職員として3年働いた後、自ら相談業務を希望。今は社会福祉士として働いている。従来の規定であれば、高齢者分野での経験年数が併せて5年以上であることから受験できたのだが、「社会福祉士であれば相談業務を5年」といったように、経験年数の要件も厳格化されたため、受験資格が得られなかった。

処遇や事務負担も「激減」に影響はしているが…

もちろん、受験資格の厳格化だけが受験者数減少の原因ではない。

例えば、介護職員処遇改善加算が何度か拡充されたことによって、介護職員とケアマネの年収格差が縮小し、「給与を上げるためにケアマネを目指す」という人が少なくなっていることも影響しているだろう。

さらに、ケアマネの事務負担の増大に伴い、利用者と時間を過ごすよりも事務処理に時間を費やさなければならなくなったという現実も、受験者数減少に影響しているのではないか。介護の現場では、人と接することにやりがいを感じる人が多い。それだけに「事務員のようにしか見えないケアマネになるより、介護職員として利用者と接していたほうが、やりがいがある」と考える人が増えても、何の不思議もない。

加えて、ケアマネが、権利意識が強い利用者や家族との交渉の矢面に立たなければならないことも、受験希望者の減少に拍車をかけているのかもしれない。

ただし、これらの問題は、何年も前から指摘されてきたことだ。やはり、今年の受験者数の急減は、受験資格の厳格化が主因と考えるべきだろう。

懸念される「35年」段階のケアマネ不足

ケアマネ試験の受験者激減について、私は強い危機感を抱いている。このまま受験者数が減った状態が続けば、団塊の世代が85歳となる35年ごろ、深刻なケアマネ不足に陥る危険があるからだ。

特に今回、過疎地を抱える鳥取、島根、あるいは近未来に高齢者人口が急増する首都圏などで、ぐんと受験者数が減っている。こうした地域では、その影響は深刻になるのではないか。

中には「ケアマネは不足していないのではないか」と考える人がいるかもしれない。確かにケアマネは、一部の地域を除いて不足しているわけではない。

しかし、今、活躍しているケアマネの多くは、団塊の世代が85歳になり、介護の需要がひっ迫する35年には現場を退いているはずだ。その点は、ケアマネの平均年齢が47歳(15年現在、平均勤務年数8.7年)であるという事実だけで、十分に理解して頂けるはずだ。

今、現場を担っているケアマネの多くは、真にケアマネの活躍が求められる35年ごろには、自分がケアされても不思議はない年齢になってしまうのだ。

だからこそ、今から35年以降に向けたケアマネ育成に取り組まなければならない。

具体的には介護保険制度創設以来、現場を担い続けている「一期生時代のケアマネ」がじっくりノウハウを引き継げるよう、20歳代や30歳代の人材を、大量にケアマネに引き上げていかなければならない。

人材確保にも悪影響を及ぼす可能性

この問題意識を持てば、受験資格の厳格化によって門戸を狭めてしまう国のやり方は、間違いと断じざるを得ない。真に介護需要がひっ迫する35年以降に対応するために、早急に改めるべきである。

さらに加えるなら、受験資格の厳格化は、介護業界全体の人材確保にも悪影響を及ぼしかねない。

ケアマネは介護系職種の中では重要な専門職で、現場ではキーマンとして位置付けられている。それだけに、「介護職員でがんばり、将来はケアマネになる」というキャリア形成を目指す職員が多い。

つまり、今回のケアマネの受験資格の厳格化は、そのキャリア形成の道までも難しくしてしまったわけだ。

今は介護ばかりでなく、あらゆる業界・業種で人手が不足している。そんな売り手市場の中で、キャリア形成の道筋を険しくしてしまっては、介護に興味を持っていた人材まで、そっぽを向いてしまうのではないか。

結城康博
1969年、北海道生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒、法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)。介護職やケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護系の仕事に10年間従事。現在、淑徳大学教授(社会保障論、社会福祉学)。社会福祉士や介護福祉士、ケアマネジャーの資格も持つ。著書に岩波ブックレット『介護職がいなくなる』など、その他著書多数がある。

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