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ケアマネ合格者激減、その計り知れない影響

低い合格率と少ない合格者の背景には…

合格率は10.1%、合格者数は4990人。今年度の介護支援専門員実務研修受講試験(ケアマネ試験)の結果には、介護関係者は誰もが驚いたに違いない。

私の見解ではあるが、昨今の合格率の推移を見る限り、厚生労働省はケアマネジャーを新たに生み出すことにかなり消極的になったのではないか。

受験資格の厳格化で受験者数が減ることは、今年度の試験問題を作る前からはっきりと予測できた。なのに、今年の問題は合格率が10%台にやっと届くような内容だった。ちなみに、社会福祉士(おおよそ20~30%台で推移)や介護福祉士(おおよそ40~70%台で推移)、精神保健福祉士(おおよそ50~60%台で推移)など、他の福祉系資格と比較しても今年のケアマネ試験の合格率は異様に低かった。

受験者減が確実視される中、合格率が伸び悩むような“一癖”ある問題を出した厚労省。やはり、新たに誕生するケアマネを絞り込もうとしているとしか思えない。

ちなみに、過去のケアマネ試験では、必ず1年で1万5000人を超えるケアマネが生まれていた。しかし、今年の合格者は1万5000人どころか5000人にも達しなかった。

「資格があってもケアマネにならない人」も多い?

さらに懸念されるのは、5000人にも満たない新人ケアマネのうち、現場に来てくれる人はどのくらいいるかということだ。言い換えるなら「資格を取ってもケアマネにはならない人」が案外多いのではないかということだ。

注目すべきは、今年度の資格者別合格者の構成だ。前年度と比べた場合、介護福祉士が20ポイント下がり、看護師や准准看護師、保健師、理学療法士、作業療法士といった医療系資格者の構成割合が倍増した。具体的には、社会福祉士を含めた福祉系合格者の構成割合は約8割から6割と減少し、医療系資格者が約1.5割から3割と増えた。

医療系資格者の割合が高まったこと自体に問題はない。医療との連携を思えば、むしろ歓迎すべきことかもしれない。ただ、大きな懸念がある。医療系資格者の場合、福祉系資格者に比べると、試験に合格してもケアマネとして働かない人が多いと予想される点だ。

例えば看護師や准看護師の場合、夜勤の手当もある病院や介護保険施設で働いた方が在宅ケマネよりかなり高い給与が得られる。しかもケアマネになってしまうと、患者と向き合うより書類や事務処理と格闘する時間が長くなり、仕事のやりがいを感じにくくなるというデメリットもある。

つまり、より高い給与をもらい、やりがいのある仕事を続けるために、基礎資格である医療系職種にとどまろうと考える人が多いのではないかと予測されるのだ。

大都市も地方も、ケアマネ不足に

そんな状況にあって、ケアマネの道を選んでくれる新人は将来の日本社会にとって宝石のように希少で貴重な存在だ。そうした人こそが、団塊世代が85歳以上となる2035年にむけて、中核的な役割を担わなければならないからだ。

なにしろ現在、活躍しているケアマネの平均年齢は47歳程度。もう20年もしないうちに、その多くは引退する。

適切な介護保険サービスの提供を維持するには、これからケアマネになる人材こそを大切に育てなければならない。一定のスキルを備えたケアマネを育成するには最低でも5年程度はかかるが、それでもやらなければならない。

ただし東京、大阪、名古屋、福岡など大都市部で、質の高いケアマネを35年にむけて養成していくことは、決して簡単ではない。少なくとも今年のような合格率が続けば、それは明らかに不可能だ。

一方、鳥取や佐賀では今年度は30人程度しか合格していない。高齢者が減り始め、介護需要が減る地方であっても、この数の少なさは極めて心もとない。大都市でも地方でも、ケアマネ不足が懸念される点は変わらないといえる。

新たな処遇改善加算の導入も不足に拍車

もう一つ、ケアマネ不足に拍車を掛けかねない動きがある。今年、勤続10年以上の介護福祉士を中心とした新たな処遇改善加算が設けられることだ。新たな処遇改善加算の導入は、ケアマネと介護職員の賃金の差を縮める。その結果、ケアマネを目指す介護福祉士は、さらに減少していくであろう。

まとめると、(1)ケマネ受験資格の厳格化(2)合格率の低下(3)新たな処遇改善加算―などの要素が重なることで、新人ケアマネはますます減るだろう。そして、良質なケアマネジメントを実施できる人材の確保も、どんどん難しくなると予測される。

人材難を前提とした戦略と戦術を

こうした状況は1年や2年で変化するとは思えない。言い換えるなら、各事業所は新たなケアマネの確保は難しい状況が続くと覚悟した上で、人材戦略と戦術を練らなければならない。

そこで各事業所でなすべきことは、現在のケアマネができる限り働き続けられる仕組みを構築することだ。最低でも、65歳定年まで。その後は70歳まで非常勤として継続雇用できる環境を、すぐにでも整えるべきだ。

そしてもし、新人ケアマネを確保できたなら、それこそ「金の卵」以上の存在として大事に育て、定着を図らなければならない。

日々の業務をこなしながら新人を大切に育てるのは、口でいうほど簡単なことではない。だが、ケアマネ合格率の低下などを思えば、10年後、日本全体がケアマネ不足に陥ることは、おそらく間違いない。各事業所は中長期的な事業の継続のためにも、新人の育成に力を入れるべきだろう。

結城康博
1969年、北海道生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒、法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)。介護職やケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護系の仕事に10年間従事。現在、淑徳大学教授(社会保障論、社会福祉学)。社会福祉士や介護福祉士、ケアマネジャーの資格も持つ。著書に岩波ブックレット『介護職がいなくなる』など、その他著書多数がある。

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