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利用者や家族からのセクハラ・パワハラから、どう身を守る?

昨年、財務省や日大アメフト部、体操協会などから端を発したセクシャルハラスメント(セクハラ)やパワーハラスメント(パワハラ)の問題が社会全体のトピックとなった。

ただ、長年、介護業界にいる人にしてみれば、「何を今さら…」と思えるトピックだったのではないか。介護現場では、10年以上前から要介護者による介護職員へのハラスメントが顕在化していたからだ。実際、2007年に厚労省所管の外郭団体が公表した調査結果でも、1割以上の介護職員がセクハラ被害に遭っていた。

その状況は、最近になって改善するどころか、悪化しているようにすら見える。

例えば、昨年4月に公表された介護系労働組合「日本介護クラフトユニオン」による調査報告によれば、介護現場で働く者のうち約3割が介護を必要とする人やその家族にセクハラを受けた経験があるという。

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人材確保にも足かせ?ハラスメントの横行

介護現場でのハラスメントの横行は、ただでさえ貴重な介護人材を離職へと走らせる。実際、私のゼミ生であった卒業生の介護職員も、要介護者やその家族のセクハラやパワハラに耐えられず辞めてしまったケースが数件あった。

昨年、公表された厚労省所管の外郭団体調査によれば、1年間の介護職員の離職率は16.2%(16年10月1日から17年9月30日まで)と、全産業の約15%よりもかなり高かったが、この離職率の背景にも、ハラスメントの横行があるように思えてならない。

昨年5月21日、厚労省から発表されたデータによれば、団塊世代が全て75歳以上となる25年には、介護職員が約34万人不足する恐れがあるという。この深刻な状況に対応するには、財源を確保し、新たな施策を充実するだけでは足りないだろう。介護職員が働く環境の改善も不可欠だ。

具体的には、国と自治体が音頭を取り、介護を受ける側から「介護職員は支えて当然」といった感覚を払拭しなければならない。介護は「支え手」と「支えられる側」の信頼関係で成り立つという、ごく当然のことを在宅の現場に浸透させなければならない。その努力を怠り、ハラスメントが横行する現場を放置したままでは、いくら国費と保険料を突っ込んだところで、34万人もの人材を確保できるとは思えない。

ケアマネにとっても無縁ではないハラスメント

要介護者やその家族からのハラスメントは、ケアマネにも無縁ではない。権利意識の強い要介護者であれば、パワハラともいえる言動で、理不尽な要求をしてくるケースも少なくないはずだ。

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しかし、経験の浅いケアマネだと、ハラスメントに該当するような過度な要求なのか、利用者ニーズなのか、判断できずに困惑する者もいるかもしれない。

また、ハラスメントに該当する過度な主張であっても、「ケアマネであれば、ある程度は受け止めるべき」と感じる人も少なくないのではないか。

ハラスメントかどうかの見分け方

要介護者らの要望がハラスメントかどうか―。確かにその見極めは難しい。それでもケアマネにとっての基礎理論の一つ「アセスメント理論」を応用すれば、ある程度の見極めはつく。

「アセスメント理論」によれば、基本的に生活ニーズは、「ノーマティブ(normative:規範的)ニーズ」と「フェルト(felt:体感的)ニーズ」に分類できる。「ノーマティブニーズ」とは専門家から見たニーズ。「フェルトニーズ」とは利用者が感じるニーズだ。そして、これら二つのニーズが調和され、「リアル(real:真の)ニーズ」が導き出される。 

普通、支援に入ったばかりの時期では、この2つのニーズは一致しない。しかし、「身体的機能状況」「精神的心理状況」「社会的環境状況」を考慮しながら、徐々に調和され、最終的には「リアルニーズ」にたどりつく。

言い換えれば、丁寧な説明を繰り返しても一顧だにせず、ただひたすら無理難題ばかり突き付ける要介護者の行為は、ハラスメントの域に達していると考えてもよいだろう。場合よっては、サービスの停止も考えていいと思う。

認知症や精神疾患の患者なら医療との連携を

悩ましいのは、認知症や精神疾患の影響で、適切な判断ができない場合に生じるハラスメントだ。

中には、「本人がやっていることじゃない。病気がやっていることだ」と、ハラスメントを受けても耐えようとする人もいるかもしれない。利用者を思うその姿勢には頭が下がる。だが、いつまでも耐え続けることはできない。ハラスメントは、受けた人の心と体を確実にむしばんでいくからだ。

当たり前のことだが、ケアマネやヘルパーはパワハラやセクハラの被害者なのだ。相手が認知症の人や精神疾患の患者であっても、対応をためらう必要はないと思う。医療機関や保健センターにつなぎ、医療機関による治療を含めた支援を考えていくべきであろう。

「ハラスメントには組織対応」が不可欠!

ハラスメントへの対応で、特に重要な役割を果たすのは現場の管理者だろう。管理者はケアマネからセクハラなどの相談を受けたなら、すぐに調整に乗り出さなければならない。場合によっては担当を変えるだけで解決することもあるだろう。時には、管理者が加害者と話し合いをもつ必要があるかもしれない。

最悪なのは、「セクハラなどは、処遇困難ケースの1つ。かわすのも対人技術の一環です」などと言い放ち、無為無策を貫く管理者だ。そんな事業所では、いくら採用に金を掛けても、ケアマネは定着しないだろう。

多くの場合、ハラスメントは担当者が1人で解決できるものではない。だからこそ管理者は事業所のメンバーに対し、「ハラスメントは1人で抱え込んではいけない。必ず組織で対応する」という姿勢を、常に明確にしておかなければならない。

保険者もユーザー教育に乗り出すべき

保険者である自治体も、そろそろ本気で介護保険サービスのユーザー教育を考えていくべきだ。

例えば、要介護申請の際には「マナー読本」などのパンフレットを配布して注意喚起するべきである。また、介護予防教室や元気高齢者が集う場でも、介護現場におけるハラスメント問題を挙げ、利用者による過度な権利意識が生む弊害を訴えるなどの施策を講じるべきではないか。

つまり、ケアマネだけが抱え込むのでなく、地域全体でハラスメントの問題を共有化して対応すべきということだ。

結城康博
1969年、北海道生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒、法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)。介護職やケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護系の仕事に10年間従事。現在、淑徳大学教授(社会保障論、社会福祉学)。社会福祉士や介護福祉士、ケアマネジャーの資格も持つ。著書に岩波ブックレット『介護職がいなくなる』など、その他著書多数がある。

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