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現実味帯びるケアプラン有料化、あえて財政効果から考えてみた

2021年4月の施行に向け、介護保険法の改正の議論が本格化している。改正案の中でも、まず注目すべきは「ケアプランの有料化」の動向だろう。これまで何度も導入が議論され、そのたびに結論が先送りされてきた議題だが、今回はちょっと雰囲気が違う。

実現の可能性が高まっているように感じるのだ。

特に18年度の「骨太方針」で、ケアプラン作成の有料化を検討する趣旨の文言が盛り込まれたことや、19年度の「骨太方針」で、前年度の方針を維持することが示されたことは重い。「ケアプランの有料化」は、かつてないほどに現実味を帯びているといえる。

プラス改定全体にも匹敵する巨大な財源

「ケアプランの有料化」を目指す人たちは「利用者がケアプランの内容への関心を高めるきっかけになる」ことなどを大義名分として掲げている。だが、その根底に財政効果への期待があることは、疑いようがない。

なにしろ居宅介護支援及び介護予防支援の給付費は、年間約5000億円(表参照)に達する。単純に一律1割負担を導入したとしても、約500億円の財政効果が期待できるのだ。

ちなみに18年度の介護報酬改定の改定率は「+0.54%」。引き上げ分を金額に直すと約540億円だ。少し大げさに言えば、居宅介護支援に利用者負担を求めるという法改正によって、介護保険サービス全体の改定一回分の財源が、ほぼ賄えてしまうことになる。

法改正一つでこれほど巨大な財源を生み出せる施策は、あまりない。国の財布を預かる財務省が、飽くことなく「ケアプランの有料化」を求め続ける真の理由も、おそらくこのあたりにある。

かみ合わない賛成派と反対派の議論

一方、「ケアプランの有料化」に反対する人の主張は「利用者の代弁者機能を担っているケアマネジメント(居宅介護支援)は、通常のサービスと異なり、人権を守る機能。負担導入で公平性が保てなくなるのは大問題だ」といったあたりが一般的であろう。

まっとうな反論だと思う。しかし、こうした反論は財政効果を期待して制度を変えようとする人には、あまり響かない。だから「ケアプランの有料化」の是非を議論すると、導入論者と反対論者がそれぞれに意見を述べ合うだけで、どこかかみ合わないまま終わることが多い。

「ケアプランの有料化」は、国民生活に大きな影響を及ぼす大改正だ。その是非を真剣に考えるには、まっとうな主張を繰り返すだけでは足りない。あえて財政効果の面からも「ケアプラン有料化」の是非を検討しなければならない。

中長期的にみれば、むしろマイナスが大きい

財政効果から「ケアプランの有料化」を検討すると、どうなるか―。

結論から述べたい。その導入によって短期的な効果は期待できるものの、中長期的には不適切な介護保険サービス利用が増え、マイナス効果となる。だから私は財政効果の面からも、「ケアプランの有料化」には反対だ。

財政効果にマイナスをもたらす要因について、細かく見ていきたい。

自立支援の取り組みを難しくする懸念

ケアマネジメントが主に目指すのは、自立支援だ。そのためにケアマネは「自分でできることは、自分でやる」よう、利用者や家族に促さなければならない。しかし、「ケアプランの有料化」が導入されると、それ自体が難しくなる。

例えば、体が一部不自由で杖を使う人に、「買い物などは、できるだけヘルパーに依存せず、自分で頑張ってください」と伝えるのも自立支援のためには必要だ。つまり、利用者にとって面倒なことや疲れることを勧めるわけだが、金銭的な負担がない現在の制度であれば、たいていの利用者はケアマネの言葉を素直に聞いてくれる。

しかし、そこに金銭的な負担が生じてしまえば、どうだろう。金を払った相手(ケアマネ)から、面倒なことや疲れることを「あなたのためだから、やってください」と言われて、素直に受け入れる利用者がどのくらいいるだろう。

むしろ、「私はあなたの客ですよ。ご立派でおためごかしな能書きは、もう結構。とりあえず、使いたいサービスを使えるようにプランしてくれ」と反応する利用者が増えるのではないか。

そんな利用者に対し、自立支援のための取り組みを勧めようとするケアマネが、たくさんいるとは思えない。今でさえ利用者や家族の都合ばかりを重視した「いいなりプラン」を作るケアマネが少なくないのだから。

利用者の権利意識の高まりというリスク

もう一つ、心配なことがある。ここ10年ほどで権利意識が強い利用者や家族が増えている点だ。先日、介護保険創設時から活躍しているケアマネと話す機会があったが、「最近は『高い介護保険料を支払っているのだから、楽をしたい』という意識で、サービス利用を主張するケースが増えた」と嘆いていた。

「楽をする」ために介護保険サービスを使うことが権利と考える利用者。そんな利用者に、ケアプランが有料化となった後も、遠慮なく適正なサービス利用を促すことができるであろうか。

残念ながら、有料化の導入は「楽をしたい」という利用者の要求ばかりを受け入れた、「いいなりプラン」を増やすと予測せざるを得ない。

本来業務ではない雑務が増えるおそれも

さらに、権利意識が高い利用者の増加と「ケアプランの有料化」は、本来業務でない雑務をケアマネにもたらす恐れがある。

例えば、通院介助や各種手続きなどを利用者から押し付けられるケアマネは増えるだろう。さらに単に話し相手が欲しいからと、ケアマネに長電話をする人が出てくるのではないか。もしかすると、居宅介護支援事業所にまでやってきて長々と無駄話をする利用者が現れるかもしれない。

その他にも、セルフプランに切り替える利用者が増える可能性もある。そして、セルフプランの増加は、地域包括支援センターや自治体の介護保険関連部署にとって、新たな事務負担となる恐れもある。

財政面の危険性、強く早く現場から発信を!

まとめると、「ケアプランの有料化」は、中長期的に財政負担をより重くし、現場のコストを増大させる危険性をはらんだ「劇薬」といえる。今、現場に求められるのは、この危険性を強く、そして少しでも早く発信することではないか。次の介護保険法改正に向けた議論のために残された時間は、もうわずかしかない。

結城康博
1969年、北海道生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒、法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)。介護職やケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護系の仕事に10年間従事。現在、淑徳大学教授(社会保障論、社会福祉学)。社会福祉士や介護福祉士、ケアマネジャーの資格も持つ。著書に岩波ブックレット『介護職がいなくなる』など、その他著書多数がある。

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