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要支援者のケアプランが、居宅に戻ってくる?!

2021年4月の実施に向けた介護保険制度改正の議論が、大詰めを迎えつつある。前回取り上げた「ケアプラン有料化の是非」を筆頭に、注目すべきテーマや動きはたくさんあるが、かつてケアマネジャーの業務に取り組んだ身としては、どうしても気になることがある。

地域包括支援センター(支援センター)が担っている要支援者のケアプランを、居宅介護支援事業所に戻そうとする動きがあることだ。

要支援者のケアプランの作成が居宅介護支援事業所に戻されることになれば、多くのケアマネにとって、経済的にも業務的にも大きな変化を強いられる。介護保険部会の議論の趨勢から考えて、その可能性は高いとは言えないが、今回はこの点について考えてみたい。

6500円だった要支援者のケアプランの単価

居宅介護支援事業所が要支援者のケアプランの作成も担っていた03年当時、私はケアマネとして働いていた。当時、その介護報酬は1件につき6500円。現在の4300円とは大きく異なっていた。ケアマネジメントのプロセスは、要介護者とほぼ同様で、毎月1回の訪問も義務付けられていた。

この状況が大きく変わったのは支援センターが誕生した06年4月以降だ。要支援者のケアプランに関する業務は支援センターの業務と位置付けられ、報酬も1件当たり4000円に引き下げられた。居宅介護支援事業所は支援センターからの委託を受け、要支援者のケアプランの作成を担う仕組みとなった。

委託である以上、単価は額面の4000円よりも低くなるのが普通だ。その後の介護報酬改定で要支援者のケアプランの報酬は多少引き上げられたが、今でも委託料が1件あたり4000円に満たない地域も珍しくない。(図)

居宅が要支援を「お付き合い程度」にしか受けない理由

報酬が低い分、利用者宅への訪問は3か月に1回でよいなど、負担は緩和されている。ただし、実際に引き受けてしまうと、毎月のように訪問しなければならないケースもある。さらに支援センターでのケアプラン確認などの業務もあり、その負担感は、要介護者のケアプランとあまり変らない。

むしろ、要支援者の方が要介護者よりも負担が重い場合もあり得る。例えば、何かとクレームをつけたがる人や、長い電話対応を強いる人は、要介護者より要支援者に多い気がする。

そうした事情からか、支援センターからの委託は「お付き合い程度」にしか引き受けない居宅介護支援事業所が多い。支援センターでも、居宅介護支援事業所への委託があまり期待できないため、要支援者のケアプランを作成するための専門職員を雇う例が多いと聞く。

この状況は、国の施策が生み出した結果だ。だが今、国は改めて要支援者のケアプラン作成を、できるだけ居宅介護支援に担ってもらいたいと考え始めている。

不安その1-支援センターの職員の技量低下を招く?

支援センターは深刻化し続ける「8050問題」などにも対応しなければならない。それを思えば、負担軽減は必要だろう。

だが、それでも私は、要支援者のケアプランを完全に居宅介護支援事業所に戻すことには、不安を覚える。居宅介護支援事業所の技量に対してではない。ケアプランのプロセスを全く経験せず、理解もしていない社会福祉士や保健師らが支援センターに増える点が不安なのだ。

高齢者支援のうち、「総合相談」「介護・医療連携」「地域ケア会議」「認知症ケア」などでは、かなり高いケアマネジメントの知識・経験が求められる。そして社会福祉士や保健師らの中には、支援センターで初めてケアマネジメントに触れる人も少なくない。

つまり、要支援者のケアプラン作成は、社会福祉士や保健師にとって、ケアマネジメントを習得するための貴重なオン・ザ・ジョブ・トレーニングの場となっているのだ。

その現実を思えば、支援センターから居宅介護支援に要支援者のケアプランの移行するにしても、社会福祉士や保健師については、ある程度、ケアマネジメントに触れる機会を維持すべきだ。例えば、これらの職員は、一人当たり3~5件の予防ケアプランを担当することを定めるなどの工夫があってもよいと思う。

不安その2-要介護者のケアプランの単価引き下げの要因に?

もう一つ不安な点がある。ほかでもない報酬とケアプラン有料化に関することだ。

居宅介護支援費の総額は、予防支援も含めて約5000億円となっている。ただし、予防支援費は約360億円と1割にも満たない。(表)

仮に、完全に要支援1・2のケアプランが居宅介護支援事業所に戻ることになれば、現在の要介護者における介護報酬の単位も大きく変化することになるだろう。

まず、要支援者のプランの単価が引き上げられるはずだ。おそらく03年当時の報酬程度(1件あたり6500円)くらいまで引き上げられるのではないか。

しかし、社会保障財源の確保が難しくなっている昨今、無条件に居宅介護支援費が増やされることは考えにくい。

そこで考えられるのが、「要介護4や5のケアプランの報酬を引き下げ、その分を要支援の引き上げ分に回す」という手法だ。さらに、ケアプランの有料化によって得られる財源の一部を活用することも考えられる。

つまり、要支援者のケアプランの単価引き上げを理由に、要介護者のケアプランの単価引き下げやケアプラン有料化が推し進められる恐れもあるということだ。

いずれにしても、ケアマネにとって、これらの政策転換は極めて大きな変革だ。今後の審議会の議論の行方から、ますます目が離せない。

結城康博
1969年、北海道生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒、法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)。介護職やケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護系の仕事に10年間従事。現在、淑徳大学教授(社会保障論、社会福祉学)。社会福祉士や介護福祉士、ケアマネジャーの資格も持つ。著書に岩波ブックレット『介護職がいなくなる』など、その他著書多数がある。

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