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小幅な制度改正、それでも見落とせないポイントも-審議会意見書を読み解く(前)

すべて先送りになった大改革

2021年4月の介護保険制度改正に向けた議論では、かなり思い切った変更が検討されていた。中でも「ケアプラン有料化」や「2割負担・3割負担の対象者拡大」、「軽度者向けの生活援助サービスなどの自治体の事業への移行」は、どれか一つでも実現すれば、ケアマネジャーはもちろん、利用者の生活環境や介護サービス事業者の経営環境も激変させる可能性があった。

しかし、介護保険法改正に向けた議論が行われた審議会が昨年12月27日に取りまとめた意見書では、これらのテーマはすべて「継続審議」となった。加えて「被保険者範囲・受給者範囲」も「継続審議」とされた。

つまり、大改革をもたらす制度変更は、すべて先送りされた。21年4月の制度改正は、現状の仕組みを前提とした、小幅な内容にとどまることになる。


介護保険制度改正に向けた議論が行われた社会保障審議会介護保険部会

補足給付の厳格化がケアマネの業務増を招く?

それでも見落とせない変化もある。まず、注目すべきは、所得が少ない人が施設などを利用した場合、居住費や食費の負担を軽減する補足給付の基準の変更だ。

具体的には、現行の第3段階の所得層(世帯全員が市町村民税非課税かつ本人年金収入等80 万円超155万円以下)を、新第3段階①(世帯全員が市町村民税非課税かつ本人年金収入等 80 万円超 120万円以下)、新第3段階②(世帯全員が市町村民税非課税かつ本人年金収入等120 万円超155万円以下)に分割する。

これまでの審議会の議論の経過を見る限り、新第3段階②で、特別養護老人ホーム(特養)などの多床室を利用する人は、従来よりも毎月約2万2000円の負担増となる。ショートステイでも同様の改正が行われ、日額約300円の負担増となるようだ。

さらに補足給付を受けるための要件も厳しくなる。現行制度の要件は「単身世帯で預貯金などが1000万円以下、夫婦世帯で2000万円以下」だが、改正後は、第2段階では「650万円」、新第3段階①では「550万円以下」、新第3段階②では「500万円以下」と、所得段階に応じて新基準が設けられる可能性が高い。 

補足給付は、施設系の利用者を対象とした制度だから、在宅のケアマネの中には「自分には関係がない」と考える人がいるかもしれない。

しかし、今回の変化は在宅のケアマネにも余波が及ぶと考えておいた方がいい。「伴侶や家族が施設に入っており、自分は在宅で介護保険サービスを使っている」人から、サービス利用や生計に関する相談を受ける機会が増えると予測されるからだ。

現在、補足給付の預貯金の要件は、利用者だけでなく夫婦世帯の収入までを判定の対象としている。そして審議会の意見書では、「夫婦世帯における配偶者の上乗せ分は、現行の 1000 万円を維持」という文言が盛り込まれた。制度改正以降もこの仕組みを維持する方向性が示されているわけだ。

それだけに、「施設に入っている夫の毎月の支払いが2万2000円も増えてしまった。私も生活を切り詰めなきゃ。介護保険サービスも少し減らしたい」といった相談をケアマネに持ち掛ける人が増えると思われる。なにしろ補足給付の制度変更に伴い、毎月の負担が2万2000円増えると見込まれる人の年収は120万円超から155万円以下だ。この収入で年間26万4000円の負担増は、決して軽くはない。

ただし意見書では、預貯金の基準を見直すことについて、「配偶者の扶養など世帯の状況は様々であり、慎重な検討が必要」などと慎重な意見も記載されている。そのため、今後の与党内や国会の審議で、微妙に見直しの方向性が変っていくことも考えられる。補足給付については法案の審議の行方が注目される。

高額介護サービス費も変更されるが…

利用者の自己負担が高額になった場合の救済措置である高額介護サービスも変更されると思われる。

意見書では「自己負担上限額を医療保険の高額療養費制度における負担上限額に合わせ、年収 770 万円以上の者と年収約 1160 万円以上の者について、世帯の上限額を現行の 4万4400 円からそれぞれ 9万3000円、14万100 円とする見直しを行うことについて、概ね意見の一致を見た」と記載されている。その上、反対意見も述べられていないため、確実に実施されるのではないか。

この変更で影響を受ける年収770万円以上の高齢者は、高齢者全体の数パーセントにも満たない。高額介護サービスの改正の影響を受ける人は、ごく限られるはずだ。

要介護認定の有効期間の変更も、確実に実施されると見込まれる。意見書では「更新認定の二次判定において直前の要介護度と同じ要介護度と判定された者については、有効期間の上限を 36 ケ月から 48 ケ月に延長することを可能とすることが必要である」と記載されているため、有効期間は3年から4年に延長されると思われる。

今回の意見書で、もう一つ注目したい点がある。グループホームへの住所地特例の適用の是非に触れている点だ。

グループホームを利用できるのは、原則、そのグループホームがある自治体に住んでいる人だけだ。そのため、このサービスの利用者については住所地特例を考慮する必要はない。

この点について意見書では「制度が複雑になることも踏まえ、 現時点においては現行制度を維持することとし、保険者の意見や地域密着型サービスの趣旨を踏まえて引き続き検討することが適当である」とした。「引き続き検討」ということだから、21年4月の制度改正のタイミングでグループホームに住所地特例が適用されることはないだろう。しかし、このテーマが議論されたこと自体、注目すべきだ。

最近のグループホームは特別養護老人ホーム(特養)への入居を待つ人が利用する場としての性質が強まっている。それは、「在宅以外」で特養への入居を待つ人が増えていることからもうかがえる(表)。ここでいう「在宅以外」とは、有料老人ホームや老人保健施設、サービス付き高齢向け住宅、グループホームなどを指す。

特養への入居を待つ人が数多く利用するサービスのうち、住所地特例の対象になっていないのは、グループホームぐらいだ。この実情を思うと、グループホームは、住所地特例の対象に加える方向で検討すべきと思う。

まとめると21年4月の制度改正によって、ケアマネの日々の業務が大きく変わることはない。制度の変更を適切に把握し、利用者への丁寧な説明を心掛ければ、トラブルも生じないはずだ。

しかし、調整交付金に絡む保険者機能強化などの在り方は、今後のケア業務に大きく影響すると考えられる。先送りとなった負担増の議論の行方と併せて、次回で詳しく述べていきたい。

結城康博
1969年、北海道生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒、法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)。介護職やケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護系の仕事に10年間従事。現在、淑徳大学教授(社会保障論、社会福祉学)。社会福祉士や介護福祉士、ケアマネジャーの資格も持つ。著書に岩波ブックレット『介護職がいなくなる』など、その他著書多数がある。

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