21改定、オモテとウラ
※この記事は 2021年8月30日 に書かれたもので、内容が古い可能性がありますのでご注意ください。
逆風の集合住宅(サ高住・住宅型有老ホーム)、ケアマネはどう向き合う?
- 2021/08/30 09:00 配信
- 21改定、オモテとウラ
- 斉藤正行
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2021年度介護報酬改定(21改定)はコロナ禍の中、2018年度に続いて2回連続のプラス改定となりました。従って「制度の持続可能性の実現に向けた介護報酬の適正化」に関連する見直し項目は、限定的でした。しかし、次の2024年度介護報酬改定(次期改定)は診療報酬・障害福祉等サービス報酬との同時改定です。報酬抑制に向けた議論が加速することが予測されていますが、その議論の一番の中心は、サービス付き高齢者向け住宅や住宅型有料老人ホームなどの集合住宅になることは間違いありません。21改定においても「制度の持続可能性の実現に向けた介護報酬の適正化」に関連する見直し項目は限定的でありながらも、その多くは、集合住宅に関するものでした。
ここからは、21改定における集合住宅に関連した見直し項目を確認していくとともに、次期改定の行方を予測し、ケアマネジメントの公正中立性の確保の観点からケアマネジャーが集合住宅と、どう向き合っていくべきなのかを考えたいと思います。
「同一減算時の計算方法の適正化」がもたらす影響
まず、今回の改定で最も大きな影響が生じることとなった見直しは、通所系サービス・小規模多機能型居宅介護(小多機)・看護小規模多機能型居宅介護(看多機)における「同一建物減算適用時の区分支給限度基準額の計算方法の適正化」です。
これは同一建物減算によりサービスの単価が下がったことを利用し、区分支給限度基準額の範囲内でサービス回数を増やすことを禁じた制度で、訪問系サービスにおいて適用されたルールを通所系サービス・小多機・看多機にも適用したものです。訪問系サービスとの整合性を図る観点から妥当な見直しといえますが、区分支給限度基準額いっぱいまでサービスを使うご利用者が多い通所系サービス事業所にとっては、減収の影響は大きなものとなります。
また今回、集合住宅で訪問系サービスを外付けしている事業者では、直接的な減収につながる見直しはありませんでした。ただし、過剰サービスに対する牽制的な見直し項目がいくつも盛り込まれています。
例えば、訪問系サービス・通所系サービス・福祉用具貸与の事業者が、事業所と同一の建物に居住する利用者にサービス提供を行う場合、居住者以外の近隣の利用者に対するサービス提供が努力義務となりました。
利用控えの恐れがある居宅介護支援に関する見直し
居宅介護支援に対する見直し項目は3つあり、いずれも集合住宅のサービス利用控えに繋がる可能性を秘めています。
1つ目は、2018年度の介護報酬改定で導入された生活援助の訪問回数が多い利用者のケアプランの検証の仕組みの見直しです。検証や届出頻度を柔軟に見直す一方で、区分支給限度基準額の利用割合が高く、かつ、訪問介護が利用サービスの大部分を占めるなどのケアプランを作成する居宅介護支援事業所を抽出する仕組みが、今年10月に導入されます。
2つ目は、集合住宅に居住する利用者のケアプランについて、区分支給限度基準額の利用割合が高い場合、適切なケアマネジメントに基づくプランとなっているか否かの自治体による指導監督体制が、より強化されたことです。こちらも10月に導入されます。
3つ目は、6か月ごとにケアプランにおける訪問介護・通所介護・地域密着型通所介護・福祉用具貸与のサービス利用割合と、同一事業者によって提供されたものの割合を利用者に説明し、介護情報公表システムに公表することが義務づけられたことです。
いずれも、集合住宅での過剰サービス実施をけん制するとともに、ケアマネジメントの公正中立性の実現も目指し、導入されました。しかし、ケアマネの業務工数が著しく増大する一因となることは間違いなく、結果として事務作業負担が増え、ケアマネジメント業務の時間が削られることとなり、公正中立性の確保を阻害しかねない可能性も秘めていると感じます。これらの新施策がケアマネから不評なのは、そのためでしょう。
集合住宅の行方を読み解く3つのテーマ
21改定の見直し項目を踏まえた上で、次期同時改定における集合住宅の行方を読み解いていくと、3つのテーマが見えてきます。
1つ目は、「同一建物減算のさらなる拡大」です。さらなる単位数の引き下げや条件の厳格化などが論点となることでしょう。2つ目は、「区分支給限度基準額の割合の高い利用に対する更なる規制強化」です。今回、努力義務とされたルールの義務化が検討されるはずです。3つ目は、「区分支給限度基準額の対象外となっている各加算の見直し」です。これは今年4月15日に開催された財政制度等審議会財制度分科会において財務省が提言した社会保障改革案の1つに盛り込まれていることもあり、区分支給限度基準額の対象外となっている加算を一つ一つ検証し、対象内に切り替えるべきかどうかを検討する作業が、さまざまなサービスで進められるでしょう。
そして、これら3つのテーマとともに、居宅介護支援に対するケアマネジメントの公正中立性の確保の議論が、いっそう大きな論点になることも間違いありません。
制度改正に委縮することなく、ケアマネジメントの専門性と質の向上を
最後に、これらの状況を踏まえてケアマネは集合住宅とどのように向き合っていくべきかをお伝えしたいと思います。
結論から言えば、細かな制度改正の内容にとらわれることなく、ケアマネジメントの専門性・質の向上に努めていくべき、ということになります。
ここまで全国各地に、たくさんの集合住宅が整備されている以上、集合住宅サービスが無くなるということは、まずありません。そして無くならないのであれば、改めて集合住宅の役割をしっかりと踏まえて、個々の利用者の状況に応じた最適なケアプラン策定を心がけていくより他の方策はないのです。
例えば、区分支給限度基準額の割合が高く、過剰サービスのように見えたとしても、適切にアセスメントし、ケアプランを策定していると自信を持てるのであれば、萎縮する必要は全くありません。
AIやICT化を前向きにとらえ、本業に専念できる体制を
ただし、あえて新しい視点でケアマネに必要とされることを述べるならば、21改定における「逓減制の見直し」において示された、「生産性の向上」に積極的に取り組むことでしょう。AIやICT化を前向きに捉え、単純作業や事務業務の工数削減に努めていき、本来取り組むべきケアマネジメント業務に専念できる業務体制の確立に努めることが、ケアマネジメントの専門性・質の向上に不可欠であり、新しい時代環境に求められるケアマネの姿であると思います。

- 斉藤正行
- 奈良県生駒市出身。立命館大学経営学部卒業後、飲食業のコンサルティング、事業再生等を手掛ける。2003年以降、グループホームやデイサービスを運営する企業で要職を歴任。2010年には日本介護ベンチャー協会を自ら設立し、代表理事に就任した。18年、全国介護事業者連盟の専務理事・事務局長に就任。20年には同連盟の理事長となった。
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