21改定、オモテとウラ

※この記事は 2021年10月18日 に書かれたもので、内容が古い可能性がありますのでご注意ください。

特別対談:21改定と介護保険制度、そしてケアマネの将来・前編

今年4月の介護報酬改定について、さまざまな角度から解説してきた「21改定 オモテとウラ」。今回は特別編として同連載の執筆者・全国介護事業者連盟の斉藤正行理事長が、デイサービスや居宅介護支援事業所を全国で運営するインターネットインフィニティーの別宮圭一社長と、それぞれの立場から、今回の介護報酬改定と今後の介護保険制度の行方、そしてケアマネジャーの将来について、対談しました。

実は恐ろしく厳しい環境にあった21改定

斉藤:2021年度の介護報酬改定(21改定)は、2期連続のプラス改定で、しかも18年度の介護報酬改定の上げ幅を上回る0.7%のプラスとなりました。政府や厚生労働省、財務省と交渉した立場として、一定の評価をしてもよいでしょう。

別宮:介護事業に取り組む立場としては、2期連続プラスは、大変ありがたかったですよ。各種団体、特に斉藤理事長をはじめとした全国介護事業者連盟の皆様には奔走いただいた点、感謝しています。ただ、「もう一声」というのが、本当のところでしたけど(笑)。

斉藤:そこはよくわかります。ただ、その「もう一声」が実現できないほど、財政再建に向けた圧力が強かったのです。というより、我々ふくめた各団体がしっかりとした活動を行っていかなければ、マイナス改定もありえたでしょう。

それから私は、今回の改定については数字もそうですが、何よりもその中身にこそ目を向けるべきと思うのです。

21改定、オモテとウラ

21年度は「科学的介護・元年」

別宮:確かに、今回の改定では、過去最大といっていいほど、数多くの見直しポイントが盛り込まれました。

斉藤:とりわけ、「LIFEを含めた科学的介護の推進」や「自立支援・重度化防止の取り組みのさらなる促進」、「介護現場の生産性の向上を目指した基準の緩和」、「アウトカム評価の拡大」は、介護保険制度の在り方を根本的に変える大きな改革といえます。

ただし、これらの改革は序章にすぎません。LIFEに関連した加算の点数もそれほど高いものではありませんし。サービスも限定されています。24年度の診療報酬との同時改定こそが改革の本丸でしょう。

別宮:確かに。21改定は高齢社会が抱える問題の本質的な解決を目指す、「科学的介護・元年」になったと受け止めています。

だからこそ、デイサービス事業所を運営する私たちも、LIFEの加算に対応するよう、システム開発も含めて全面的に動いています。また、加算を算定するだけでなくて、集めたデータでどんな取り組みができるか、国からフィードバックされたデータをどのように活用していくのか、どのように成果をだしていくのか、研究を進めていく方針です。

明暗が分かれた加算、デイでは対応を誤るとマイナスに…

斉藤:そうですね。御社のような取り組みを行った結果として加算が算定できる、というふうであるべきでしょう。

その加算ですが、21改定では、プラスとマイナスが入り組んだ結果となりました。各サービスの基本報酬が引き上げられたとはいえ、加算への対応を誤ると、収入が減ってしまう可能性もあります。

特にデイサービスには、その傾向がはっきり表れています。

デイサービスの基本報酬は他のサービスに比べても引き上げ率は高かったのですが、算定率が高い入浴介助加算については、二段階に分かれました。そして、従前どおりの対応では、算定できる単位数は10単位も下がってしまうことになりました。これは基本報酬の引き上げ分をふいにするほどのマイナスといって過言ではありません。しかし、入浴における自立支援に向けた個別対応を要件とした同加算「II」を算定できれば、確実に収入はアップします。

デイサービスの場合、自立支援に向けた取り組みがなければ、“マイナス”となってしまうケースもあるわけです。

自立支援に向けた取り組みに対応せず、新たな潮流から取り残された事業所にとって、21改定は決して満足のゆく内容ではなかったでしょう。

ただ、24年度の介護報酬改定か、あるいはその後の27年度の介護報酬改定では、LIFEに基づいたアウトカム評価が導入され、報酬に反映される可能性もあります。いや、そうなる可能性の方が高いでしょう。

だからこそ、現場の事業者は、別宮社長が取り組まれているように、科学的介護に前向きに向き合い、自立支援や重度化防止の実現を目指す必要があると思うのです。それができないと、今後、生き残るのは難しいのではないかと思います。

LIFEの登場が介護経営にもたらすこと

別宮:LIFEが登場したことで、介護業界は大きく変わる可能性があるという点は同感です。特に、介護の取り組みのアウトカムが可視化される方向性が見えてきたのは、とても大きい。これまでは見えにくかった介護サービスの成果が、わかりやすく明示される可能性があるわけですから。

21改定、オモテとウラ

経営者の立場からすると、この仕組みをどう活用していくかが、きわめて大切です。当然ながら、この仕組みの導入によって介護事業者の淘汰も進むでしょう。

だからこそ、各事業所は、科学的介護の推進という変化を、単に「LIFEをめぐる加算を算定する」という短期的な目標とするのではなく、中長期的な経営戦略にかかわる変化ととらえ、対応すべきだと思うのです。

斉藤:その通りですね。ただ、居宅介護支援のようにLIFEの加算の対象にならなかったサービスでは、別宮社長が指摘されるような意識は持ちにくいかもしれない。もちろん多くのケアマネは、その目的と意義を理解しているようです。ただ、中には評価スケールをしらなかったり、事業所がもらったフィードバックデータを見たこともなかったりする方もいます。

今後もケアマネは介護保険の要であり続けます。だからこそケアマネには、努めてLIFEについて学び、またそのデータに接するようにしてほしいと思います。

そして残念なことに21年度改定で拡充された「入浴介助加算II」の算定に関し、デイの事業所と意見が対立してしまっているケアマネも少なからずいるようです。

当然ながらデイサービス事業者とケアマネは対立するべき存在ではありません。利用者のため、家族のために連携しなければならないのです。そもそも、これまで述べてきた通り、ケアマネもデイサービスも、ともに大きな制度変革の嵐にさらされているのです。一致団結し、乗り切っていくという意識こそが大切だと思うのです。

この問題については、両方の事業所を経営されている別宮社長のご意見をうかがいたいところです。

ケアマネと事業者、さらに密なコミュニケーションが不可欠

別宮:そうですね…。まずいえるのは、この問題に限らず、加算算定を目指す介護事業者は、「加算を取得することで、利用者に何が起こり、どうなるのか」ということを常に意識し、行動しなければならないということです。

それともう一つは、デイサービスの事業所とケアマネが日常的にコミュニケーションを取り合うということも大切と思います。

「入浴介助加算II」についても、デイサービス事業所が加算を算定する目的と理由をはっきりと認識した上で、ケアマネとコミュニケーションをとっていれば、斉藤理事長が指摘されたような問題は起こらなかったのではないでしょうか。

実際、デイサービス事業所とのケアマネの間でコミュニケーションが密であれば、むしろケアマネさんのほうから「この加算への対応はなさらないのですか」と提案されることもあるようです。

斉藤:「入浴介助加算II」では、利用者の自宅での入浴の自立を図る観点から、個別の入浴計画に基づき、個浴など利用者の居宅の状況に近い環境で入浴介助を行うことなどが要件となっています。

つまるところ、「個別」のとらえ方で、ケアマネとデイの間がぎくしゃくしていることがあるようです。

その現実を思えば、別宮社長が指摘されるように、日々、デイサービス事業所とケアマネの間で、より密なコミュニケーションがあれば、問題の大部分は解決できるように思います。

21改定、オモテとウラ

別宮圭一(写真右)
愛媛県出身。2001年に「インターネットインフィニティー」を起業した。コーポレートスローガンとして「健康な未来」を標榜。「創意革新と挑戦による、 超高齢社会における課題解決」の企業理念の実現にむけ、短時間リハビリ型デイサービス「レコードブック」事業を全国で展開。居宅介護支援事業所や通所介護事業所の経営も手掛ける。また、ケアマネジャー専用ポータルサイト「ケアマネジメント・オンライン」や、仕事と介護の両立支援サービス「わかるかいごbiz」など運営。
斉藤正行
奈良県生駒市出身。立命館大学経営学部卒業後、飲食業のコンサルティング、事業再生等を手掛ける。2003年以降、グループホームやデイサービスを運営する企業で要職を歴任。2010年には日本介護ベンチャー協会を自ら設立し、代表理事に就任した。18年、全国介護事業者連盟の専務理事・事務局長に就任。20年には同連盟の理事長となった。

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