21改定、オモテとウラ
※この記事は 2021年10月19日 に書かれたもので、内容が古い可能性がありますのでご注意ください。
特別対談:21改定と介護保険制度、そしてケアマネの将来・後編
- 2021/10/19 09:00 配信
- 21改定、オモテとウラ
- 斉藤正行
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今年4月の介護報酬改定について、さまざまな角度から解説してきた「21改定 オモテとウラ」。今回は特別編として同連載の執筆者である全国介護事業者連盟の斉藤正行理事長が、デイサービスや居宅介護支援事業所を全国で運営するインターネットインフィニティーの別宮圭一社長と、それぞれの立場から、大変革が見込まれる2024年度の介護報酬と診療報酬の同時改定(24改定)の方向性やケアマネジャーの将来について、突っ込んで対談しました。
24改定は「基本報酬大幅引き下げ・加算に濃淡」か
斉藤:24改定を考える上で、大きな問題となるのが、やはり、コロナ禍の行方でしょう。このやっかいな感染症が完全終息しているかどうか―。この点は、だれにもわかりませんから、ある程度収束はしているという条件で考えましょう。
政府は、昨年度、今年度とも、コロナ対策のため思い切った財政出動しています。その結果、国の借金はさらに膨らんでしまいました。
当然ながら、コロナ禍が一定程度収束したとなれば、緊急の財政出動はなくなるでしょう。そして、かつてないほどの厳しい支出への引き締めが始まり、介護報酬改定も厳しい結果が突き付けられる恐れがあります。これまでになかったような大幅なマイナス改定が断行され、基本報酬は大きく下がる可能性もあるでしょう。
だが、すべてがマイナスになるとは考えにくいです。すでに述べた通り、21年度の介護報酬改定(21改定)で、科学的介護の推進や自立支援・重度化防止のさらなる重視、生産性の向上とした方向が示されています。この方向にそった取り組みに対しては、24改定でも、加算という形で一定の評価が得られると見ていいでしょう。

別宮:斉藤理事長のご指摘、同感です。基本報酬は引き下げられ、加算の単位により濃淡がつけられるのは、間違いのないところでしょう。
正直に言えば、事業所の経営を預かる立場としては、24年度が来るのが怖いです。でも、その潮流に対応していくのが大切。むしろ、その潮流を見極め、成長のチャンスをつかんでいくことが求められるでしょう。
具体的には、ご利用者様にサービスのアウトカムを実感してもらえる取り組みを推し進める必要があると考えています。しっかり準備し、立ち向かっていくしかない。
「集合住宅」「訪看のリハ」「軽度者」そして「プラン有料化」の行方に注目
斉藤:24改定に伴い、特に厳しい状況におかれると予想されるのは、「集合住宅」に関するサービスでしょう。今後の3年間で、どのような規制が議論されるか、どの程度の報酬適正化が求められるか、特に注目しなければなりません。
もう一つ、21改定でも大きなテーマとなった訪問看護におけるリハビリ職が手掛けるサービスです。21改定ではあまり大きな制度改正につながらず、やや報酬が下がった程度だったのですが、24改定に向けた議論では、思い切った報酬適正化と制度改正が議論されるでしょう。
さらにもう一つは、軽度者改革です。特に要介護1・2をどのように扱うか、ですね。財務省は市区町村が主導する総合事業の対象とすることなどを提案してきましたが、この点も注目されます。
最後に見落とせないのが、ケアマネジメントへの利用者負担導入の是非でしょう。
この4つのテーマの中でも、真っ先に議論されそうなのは、「集合住宅」関連のサービスと、「訪問看護におけるリハビリ職」です。いずれも適正化と思い切った制度改正を前提とした議論が進められるのは、ほぼ確実です。
その次に議論されそうなのが、ケアマネジメントへの利用者負担の導入です。このテーマも議論の遡上に乗るのは間違いないでしょう。ただ、どのような決着を見るかについては、ちょっと読めません。
「質」と「負担」…きわめて慎重な議論が求められるプラン有料化
別宮:どのような決着を見るかはさておき、このテーマについては、慎重な議論が不可欠でしょう。
斉藤:そうですね。仮にケアマネジメントに自己負担を入れるにしても、その集金業務を誰がどのように担うのかといった問題があります。不払いへの督促など、大変な業務ですよ。そうした点も考慮した上で、十二分に議論しなければならないテーマと思います。なにしろ、ケアマネジメントの公正中立にもかかわってくる問題ですから。
別宮:斉藤理事長のご指摘に加え、利用料金の対価は何なのかということがクリアにならなければ話が進まないと思います。つまり、「料金を支払うに足る質の高いケアマネジメントとは何か」とはっきりさせるべきということです。
もちろん、とても難しいことであることはわかっています。例えば、改善が見込まれる軽度者と、寝たきりの生活を余儀なくされた重度者では、ケアマネジメントが目指す方向はまるで違います。その両者に共通するような質を定義することが、果たしてできるのでしょうか。そもそも定義付けすること自体が正しいのかどうか、それすらもわからない。
それでも、このテーマの是非を議論しようということであれば、「質の高いケアマネジメントとは何か」について、大論争することが必須と思います。
なお、こうした議論が行われる際、現場のケアマネはもっと声を上げるべきだと思います。感情的に「反対!」と叫ぶだけでなく、現場のケアマネにとってのケアマネジメントの質とは何なのか、明示すべきと思うのです。
激変が予想される10年後へ―科学的介護への対応がカギ
別宮:昨年は、介護保険制度が誕生してから20年の節目の年でした。さらにこれから10年が過ぎると、大人口を抱える団塊の世代が、すべて80歳代になります。
斉藤:介護業界をめぐる環境は激変しますね。
別宮:そうですね。ほぼ確実に予測できるのは、軽度の要介護者が急増し、そして緩やかに重度化しはじめている点でしょう。当然ながら、介護が必要な高齢者が今にくらべてずっと多い社会になっているはずです。
そこで、我々の業界がどう変化するか―。希望を含めての予測ですが、介護に対するアウトカム評価が確立し、科学的介護が浸透していることを期待したいですね。言い換えるなら、今の介護業界とは、まったく様相が違う、介護業界がそこにあると思いたいです。
ケアマネも重度化防止に最適なケアプランを効率よく作り、更新するため、AIやデータを使いこなすのが当たり前になっていてほしいものです。
一方で、そうした変化に対応できなかった事業者は、淘汰されてしまっているでしょう。
業界全体が変化を受け入れられず、10年後を迎えてしまえば、悲惨な世界が待っているでしょう。十分な担い手が確保できず、質の低いケアがまかり通る業界となっているでしょう。そして、社会にはサービスを受けたくても受けられない「介護難民」があふれているはず。まさに介護崩壊の世界ですよ。
介護は将来の日本の「強み」になりうる!
別宮:そんな未来を回避するためにも、10年後にもこの業界で活動できるよう、変化に果敢にチャレンジする事業者が、どんどん増えてほしいですね。変化へのチャレンジ、これは自分自身にも言い聞かせていることでもあります。
斉藤:その通りですね。具体的な現場の意識としては、現在は、加算のためにLIFEに取り組んでいるというのが大多数でしょうが、10年後にはエビデンスを確保するのが当たり前であるというようになってほしいですね。データを集めて報告し、フィードバックを受けるという流れが介護現場の文化として定着していてほしいのです。
さらに、そうやって得られたデータに基づき、医療にも負けないような介護のアカデミズムが生まれていてくれれば理想的です。
その実現のためには、この10年間でICTやAIの活用をさらに促進し、現場の生産性を飛躍的に改善しなければならないでしょう。
別宮:少し前までは、福祉・介護というと、なにかと北欧を持ち出し、モデルケースにしようとする傾向がありましたが、21改定で示された方向性が実現された10年後の日本であれば、世界から注目される成功事例となりうるはずです。そうなれば介護が輸出産業の一つとなることもあり得るでしょう。
斉藤:10年後には、先進諸国も韓国も中国も、今とはくらべものにならないくらいに高齢化しています。それだけに科学的介護とアウトカム評価が現場に浸透し、生産性がさらに上がった介護業界は、世界に誇りえる、日本の強みとなっているでしょう。

- 別宮圭一(写真右)
- 愛媛県出身。2001年に「インターネットインフィニティー」を起業した。コーポレートスローガンとして「健康な未来」を標榜。「創意革新と挑戦による、 超高齢社会における課題解決」の企業理念の実現にむけ、短時間リハビリ型デイサービス「レコードブック」事業を全国で展開。居宅介護支援事業所や通所介護事業所の経営も手掛ける。また、ケアマネジャー専用ポータルサイト「ケアマネジメント・オンライン」や、仕事と介護の両立支援サービス「わかるかいごbiz」など運営。

- 斉藤正行
- 奈良県生駒市出身。立命館大学経営学部卒業後、飲食業のコンサルティング、事業再生等を手掛ける。2003年以降、グループホームやデイサービスを運営する企業で要職を歴任。2010年には日本介護ベンチャー協会を自ら設立し、代表理事に就任した。18年、全国介護事業者連盟の専務理事・事務局長に就任。20年には同連盟の理事長となった。
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