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弁護士からの応援寄稿「知っておきたいトラブル事例と対応策」

制度内ギリギリの無理難題を押し付けてくる利用者家族、対策は?

これまで、在宅ケアマネが利用者や家族から無理難題を押し付けられた際の対策として、コンプライアンス(法令遵守)を前面に出しケアマネジャーとしての業務を明確に区切っていくという方針をご紹介しました。その上で、家族らのハラスメントにも等しい逸脱した行為に対しては事業所からの契約解除を実行する他ないということ、その場合の注意点について解説しました。

今回は、「制度内ギリギリの無理難題」を押し付けてくるケースと、その実践的対処法について解説します。第2回で取り上げた事例(微熱があり心配なので訪問してほしい)のように、ケアマネとしての業務に含まれると言い得るものの、程度が過ぎると対応しきれず困ってしまう…といったケースが中心となります。

ケース1.ヘルパーが気に入らないという理由で、何度となく交代を求める利用者

気難しい利用者で、これまでキャンセルしてきた事業所は数知れず。ようやく条件の合うヘルパーステーションを見つけてきても、「あのヘルパーは態度が悪い」などと難癖を付け、ケアマネづてで何度も交代を求めてくる―。そんな場合、担当ケアマネとしてどう対処すべきでしょうか。

訪問介護のサービス提供について、運営基準には「指定訪問介護事業者は、正当な理由なく指定訪問介護の提供を拒んではならない」(第9条)と定められていることもあり、ヘルパーの交代を求めることは当然利用者の権利と思われるかもしれません。しかし、どのような理由でも交代を求めることが認められると、本件のようにきりがなく、問題がまったく解決しない事態に陥ってしまいます。

この点、具体的にどのような場合に職員の交代を求めることができるかについて法令上の定めは無く、筆者の知る限りでは裁判例なども存在しないのですが、もし裁判になったときは「交代を求めるに際し、そのヘルパーのケアが不適切であるなど、明らかに一般水準を下回るような合理的理由がある場合に認められる」といった規範により判断されるのではないかと考えます。

そこで、担当ケアマネの立場としては、以下のように返答すると良いでしょう。

※ケース1への対応例

「なかなかお眼鏡にかなうヘルパーがいない、というお気持ちは分かりますが、単にヘルパーの態度が悪いからといった理由では、交代を求め得るのは当たり前、ということにはならないのではないかと考えます。態度が悪いとお感じになった出来事を教えて頂ければ、私の方からサ責など上司に伝え改善を求めることができますので、そのような方法でまずは様子を見てみてはいかがでしょうか」

(「そんなこと誰が決めたんだ、どこに書いてあるんだ」と言われたら)

「明確に法令上根拠規定があるものではありませんが、一般常識からいっても、実質、無条件で交代を求めることが法的に認められるとすると、いつまでも担当ヘルパーが決まらず、結果的にご利用者にサービスを提供できないという不具合が生じてしまいます。ケアの提供者を決め、受諾する権利は確かにサービスのご利用者側にあるものと存じますが、それにも限度があり、交代の必要性については一般水準としてのケアを提供できているか否かで判断されるものと考えます」

ケース2:「特定事業所加算を算定している以上、24時間、365日の対応は義務である」と言い張り、深夜や早朝に不必要な連絡を繰り返す利用者

確かに特定事業所の要件は「24時間連絡体制を確保し、かつ、必要に応じて利用者等の相談に対応する体制を確保していること」とされている以上、「こうした対応を求めることは利用者の権利である」ということになります。しかし、それを字面通り捉えて対応を求めることは実質的に不可能な話。担当する事業所がつぶれかねません。

特定事業所加算の要件がこうなっている以上、うかつなことは言えませんが、例えば次のような伝え方が考えられます。

※ケース2への対応例

「弊所は確かに特定事業所であり24時間対応型ではあります。ただ、その主眼は緊急時の対応にあり、通常の業務時間内でも可能なご相談やご連絡などについては極力当該時間内に行って頂ますようご協力をお願いしております。つきましては、夜間18時から朝8時の間は、緊急の電話以外連絡を控えて頂き、メールなどで代替頂けないでしょうか」

「緊急でなければ営業時間外に連絡してはいけない」といったルールなど、実は存在しません。しかし、そうかといって「不要不急の連絡であっても夜間日中問わず受け付けます」という体制を取ろうとすれば、待機しているケアマネに、対応時間の全てについて給与と割増賃金を支払わなければならなくなります。いつでも対応できる状態で待機していることは、労働法上「勤務時間」とみなされるためです。

突っ込んでいえば、私は、そもそもこの24時間対応とすること自体が、地域包括ケアシステムという理想を実現するため、ケアマネに無理を押し付ける不適切な要件であると考えます。待機時間が労働時間となってしまうことを、厚生労働省はどこまで考えてこのような要件を課したのでしょうか。もし本当に利用者の生命にかかわるような緊急事態であれば119番通報すべきであり、小まめな対応が必要な場合は定期巡回型サービスなど、より効果的な手段が存在します。在宅ケアマネが深夜の1時、2時に電話で緊急対応しなければならない事柄など、ほとんど存在しないと思うのですが、皆様はどう思われますか。

外岡潤
1980年札幌生れ。99年東京大学文科Ⅰ類入学、2005年に司法試験合格。07年弁護士登録(第二東京弁護士会)後、ブレークモア法律事務所、城山総合法律事務所を経て、09年4月法律事務所おかげさまを設立。09年8月ホームヘルパー2級取得。09年10月視覚障害者移動介護従業者(視覚ガイドヘルパー)取得。セミナー・講演などで専門的な話を分かりやすく、楽しく説明することを得意とし、特に独自の経験と論理に基づいた介護トラブルの回避に関するセミナーには定評がある。主な著書は『介護トラブル相談必携』(民事法研究会)、『介護トラブル対処法~外岡流3つの掟~』(メディカ出版)、『介護職員のためのリスクマネジメント養成講座』(レクシスネクシス・ジャパン)など。「弁護士 外岡 潤が教える介護トラブル解決チャンネル」も、運営中。

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