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激変を乗り越える!居宅介護支援事業所の生き残り講座

「逓減制の緩和」、活用すべきか無視するか

2021年度の介護保険制度改正と介護報酬改定(21改定)は、介護保険制度の方向性を大きく変えるターニングポイントだったといえます。その方向性は、2024年度の介護保険制度改正・介護報酬改定(24改定)で、よりはっきりとした形で表れてくるでしょう。24改定を乗り切るためにも、居宅介護支援事業所は、今から制度改正の先を読み、できる限りの手を打たなければなりません。「生き残り講座」では、そのための具体策を独立型の居宅介護支援事業所を複数経営する株式会社マロー・サウンズ・カンパニーの田中紘太代表取締役が解説します。

逓減制の緩和、背景には居宅の経営難とケアマネ不足

21改定で「逓減制の緩和」が実施されました。居宅介護支援事業所のケアマネジャーは、「ICTの活用」か「事務員を活用」の、いずれかの条件を満たせば、44件まで基本報酬の単位を減らさずに担当できるようになりました。

改定が実施されるまでの議論を顧みれば、逓減制の緩和が実施された背景には、ケアマネの減少や「赤字」が続く居宅介護支援事業所の収支差率、コロナ禍における多職種連携の推進などの要因があると考えられます。

なかでもケアマネ不足については、居宅介護支援事業所を経営している身として私も痛感しています。

担当件数を増やす前にやるべきこと

こうした状況への配慮から実施された緩和ですが、前提として「要件を満たしたら、何が何でも44件まで担当件数を増やす」というやり方はお勧めできません。

まず、無理な担当件数の増加は、ケアマネジメントの質の低下を招く恐れがあります。その結果、ご利用者様のサービスへの不満が高まり、契約打ち切りにつながるかもしれません。

そもそも、「何が何でも44件の担当を求める」という姿勢自体に問題があります。当然のことですが、過度なストレスのない労働環境は、労使の同意があってこそ実現できます。合意もないまま無理に44件を担当させると、不満を募らせた職員が離職してしまう可能性もあります。

また、労使の合意があったとしても、「担当件数を増やした後に記録整備の遅れがないか」や、「業務負担感が強くなっていないか」などといった点については、管理者はきちんと確認すべきでしょう。

さらに、担当件数を増やしたケアマネに対しては、会社内や事業所内で検討の上、賃金引き上げをはじめとした待遇改善を実現できれば理想的です。

以上を前提として、逓減制の緩和を活用して頂ければと思います。

ICT活用か、事務員配置が緩和の要件

既に述べた通り、逓減制を緩和し、担当できる件数を増やすには、「ICTの活用」か「事務員の配置」の、いずれかを実現しなければなりません。

このうち、ICTの活用に関しては、逓減制の緩和に関わらず積極的に取り組むべきことですから、対応しきれていない事業所も、今回の改定を機に前向きに検討してみてはいかがでしょうか。

ちなみに私が経営する居宅介護支援事業所では、21改定の前から全ケアマネジャーにスマートフォンを支給し、希望者にはタブレット端末も支給してきました。現在でも社内や社外の一部事業所との連絡調整には情報共有アプリなどを活用しています。

とても便利なICTですが、一方ですんなり導入して活用できるかと言ったら、そういうわけでもありません。

ICTの導入の前に把握すべき「コスト」

まずICT機器の導入には費用の「壁」があります。

タブレット端末を例にとりますと、代表的なタブレット端末は「ipad」かと思われますが、Apple公式サイトを確認すると、事業所内だけで使用できる「Wi-Fi」タイプの購入費用は39,800円(税込)から。ただ、事業所内だけで使用することを想定していてはICTの活用の意味はなくなってしまいますので、「Wi-Fi + Cellular」タイプで考えておくと良いでしょう。このタイプだとお値段は59,800円(税込)からとなります。

本体価格に加えて、月額の通信費も発生します。例えばソフトバンクの定額プラン(通信量7GB)なら月額5940円です。ドコモ、auなどの他の会社でも概ね同様の金額が必要です。格安スマートフォンという選択肢もありますが、それでも月額5000円程度の費用は必要と見積もっておいた方がよいでしょう。

ただし、法人契約などにより契約台数が増えると価格交渉も出来るようになりますので、個人契約よりも費用を抑えることも可能です。

費用のコストに加え、セットアップをする時間数の人件費やマニュアルの作成、業務プロセスや作業工程を変更などの「スイッチコスト」も必要です。

事業所の規模や他事業所との連携の現状も考慮し、判断を

ICTの活用により、労働時間の短縮や残業時間の削減が期待できるのは間違いありません。逓減制の緩和を生かし、担当できるご利用者を増やすことができれば、収入増を実現できる可能性もあります。

ICTの導入によって、ケアマネが担当できる人の数を増やす際には、こうしたメリットと先に述べたコスト面のデメリットを天秤にかけなければなりません。

例えば、1人で居宅介護支援事業所を運営しているケアマネにとっては、先述したようなコストをかけてまでICTの活用を進め、担当件数を増やすべきかどうか、微妙なところでしょう。特にICTの活用を進めなくても、他事業所との連携や請求業務に支障がないようなら、無理をする必要はないのかもしれません。

一方、複数のケアマネが勤務している上、連携している他サービスの事業者もICTを活用している事業所であれば、ICTの活用を前向きに検討すべきでしょう。こうしたケースであれば、月額費用がある程度かかったとしても、費用を超える効果が期待できます。この点、当社で実証済みです。

いずれにせよ、「ICTを導入するかどうか」や「逓減制の緩和を活用するか無視するか」については、法人トップも含めた検討が必要です。ただし、国は介護業界でのICT活用を積極的に進めていますし、今後もその方針は変わらないでしょう。それを思えば、ある程度の規模がある居宅介護支援事業所であれば、前向きに検討すべきではないでしょうか。

ハードルが高い?事務員の配置

逓減制の緩和のもう一つの要件である「事務員の配置」についても、コストとメリットを天秤にかけて判断すべきです。

もっとも、新たに事務員を雇う場合、人件費と採用コスト、仕事に慣れてもらうまでの時間的なコストがかかります。そういう意味では、もう一つの要件である「ICTの活用」より、実現のハードルは高いといえるかもしれません。

田中紘太
株式会社マロー・サウンズ・カンパニー代表取締役、主任介護支援専門員。併設サービスを持たない居宅介護支援事業所「ダイバーシティ」を5事業所運営。在籍するケアマネジャーは35人。また、ケアマネ研修動画サイト「DiversiTV」も運営している。

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