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弁護士からの応援寄稿「知っておきたいトラブル事例と対応策」

これってセクシャルハラスメント? セクハラ利用者・家族への対応策

ケアマネジャーやヘルパーがご利用者宅を訪問する際は、通常は一人で出向くことになるため、セクシャルハラスメント(セクハラ)の危険にさらされることもあろうかと思います。身体を触ろうとするなど、あからさまなセクハラであればはっきり拒絶できますが、モヤモヤする場合もありますね。本稿では、そのようなグレーゾーンへの対処法を解説します。

ケース:これってセクシャルハラスメント?

中堅の女性主任ケアマネ。最近、ご利用者と二人暮らしの息子さん宅に行くのが憂鬱になっている。息子さんから次のような行動が見られる。

  • 何かと理由をつけて、利用者がいないときに訪問を求める。
  • 訪問すると、対面ではなく隣に座ろうとする。
  • 入室すると部屋のドアを閉めようとしたり、部屋中のカーテンを閉めたりしようとする。

正直、気持ちが悪いのでなるべく遠ざかるようにしているが、そうするとまた距離を詰めてくるのできりがない。「止めてください」と言うことも考えたが、一つ一つの行動はセクハラとまでは断定できないようにも思えるし、対立関係になってしまうのも困る。男性ケアマネがいればすぐ交代してもらうところだが、あいにく事業所内にそのようなケアマネはいない。

このケース、ケアマネとして、どう対処すべきか―?

まず確認、セクハラの法的な定義とは

悩ましい問題ですが、まずはセクハラの法的な定義を確認しましょう。セクハラは、男女雇用機会均等法に以下の定めがあります。

第11条 事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

2 厚生労働大臣は、前項の規定に基づき事業主が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を定めるものとする。

いわゆるセクハラは、同条1項記載の、「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害される」ものと定義されます。本件のように顧客による行為も、「職場において行われる」ものである以上、セクハラに該当し得ます。

次に「性的な言動」とは、以下のような性的な内容の発言および性的な行動を指します(厚生労働省平成27年6月パンフレット「職場のセクシュアルハラスメント対策はあなたの義務です!!」より)。

1.性的な内容の発言

性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報(噂)を流布すること、性的な冗談やからかい、食事やデートへの執拗な誘い、個人的な性的体験談を話すことなど

2.性的な行動

性的な関係を強要すること、必要なく身体へ接触すること、わいせつ図画を配布・掲示すること、強制わいせつ行為、強姦など

「職場環境が害される」とは、「労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなどその労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること」を意味します。

最後に、セクハラの判断方法について、厚労省は「労働者の主観を重視しつつも、事業主の防止のための措置義務の対象となることを考えると、一定の客観性が必要」とアナウンスしています。

問題行動を止めるため、やるべきことと言うべきこと

以上を踏まえ本件についてみると、問題となる行為の一つ一つは「性的」なものと言い難く、また一般に「能力の発揮に重大な悪影響が生じる」とも言い難いと言い得るでしょう。しかし、だからといって全く抗議などができないということではありません。

セクハラに該当するか否かは別として、嫌なことは嫌であるとはっきり拒絶することはできるのです。それにより関係にひびが入る可能性はありますが、嫌悪感を押し殺してまで働く必要はありませんし、何も言わなければ相手も行為をエスカレートさせるかもしれません。

このようなとき、職場内に相談できる上司がいればすぐ相談すべきですが、自分が上司の場合は不安かと思います。まず、相手(息子さん)との会話などを秘密で録音することは合法であり、いざというとき裁判などで証拠とすることができるため、訪問時はスマートフォンの録音機能をオンにするようにしましょう。

その上で、例えばカーテンを閉めるといった行為があれば、次のように伝えます。

「失礼ですが、なぜカーテンを閉めるのでしょうか?そのことで外部から見えなくなり、私としても違和感を覚えますので、もし特に必要性が無いようでしたら閉めないで頂けますでしょうか。」

相手は「別に変な意味はない」など弁解するかもしれません。その場合、次のように続けても良いでしょう。

「この前もテーブルの隣に座ろうとされたことがありましたが、そのような行為も控えて頂きたいのです。一般の女性労働者の感覚からして、そうした行為に性的な意図が認められるようでしたら、事業所としてセクハラと認定せざるを得ないことも出てこようかと存じます。このようなことでご利用者様の支援に入ることができなくなるのは残念ですので、疑われないよう、ご配慮頂けないでしょうか。」

そこまではっきり伝えても止まないようであれば、事業所側から契約解除する他ないかもしれません。我慢せず、自分や同僚、部下の身の安全を確保することを心がけましょう。

外岡潤
1980年札幌生れ。99年東京大学文科Ⅰ類入学、2005年に司法試験合格。07年弁護士登録(第二東京弁護士会)後、ブレークモア法律事務所、城山総合法律事務所を経て、09年4月法律事務所おかげさまを設立。09年8月ホームヘルパー2級取得。09年10月視覚障害者移動介護従業者(視覚ガイドヘルパー)取得。セミナー・講演などで専門的な話を分かりやすく、楽しく説明することを得意とし、特に独自の経験と論理に基づいた介護トラブルの回避に関するセミナーには定評がある。主な著書は『介護トラブル相談必携』(民事法研究会)、『介護トラブル対処法~外岡流3つの掟~』(メディカ出版)、『介護職員のためのリスクマネジメント養成講座』(レクシスネクシス・ジャパン)など

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