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元ヤングケアラーからケアマネに伝えたいこと /宮崎成悟(ヤングケアラー協会代表理事)

昨年の「ユーキャン新語・流行語大賞」の候補30語に選ばれるなど、ここ数年で「ヤングケアラー」の認知度は一気に高まった。だが、元ヤングケアラーで、一般社団法人ヤングケアラー協会代表理事の宮崎成悟さんは、「ヤングケアラーの幅の広さみたいなものが理解されていない印象を受ける」と指摘する。ヤングケアラーの「幅」とは何を意味するのか。そしてケアマネジャーは、ヤングケアラーの支援でどんな役割を担うべきなのか―。宮崎さんにオンライン取材で聞いた。

宮崎成悟さん

―ヤングケアラー協会を設立した背景を教えてください。

2019年にYancle(ヤンクル)株式会社を設立して、ヤングケアラーの就労支援やオンラインコミュニティーの運営を始めました。コロナの影響もあり、相談件数やコミュニティーの人数がどんどん増えていく中、非営利な形の方が、より多くの人の助けになるかなと思ったんです。ちょうど、国や行政もヤングケアラー支援に動き始めたので、一緒に支援をしていきたいという思いもあって、昨年11月に協会を立ち上げました。

―ここ数年で「ヤングケアラー」という言葉が一気に社会に浸透した印象があります。これについて、どのように受け止めていますか。

僕がヤンクルを始めた時は、ネットで「ヤングケアラー」と検索してもほとんど出てきませんでしたが、今ではあふれかえっています。すごく認知が広まっていると感じる一方で、正しく理解されているかというと、そうでもないような気もしています。

―どんな場面でそう感じますか。

メディアが「ヤングケアラー」というキャッチ―な言葉を見出しにした記事を目にしますが、中身を見ると、ヤングケアラーとは関係がないようなこともよくあります。

例えば先日、埼玉で15歳の少年が暴行死した記事の見出しに「ヤングケアラー」という言葉が使われていました。確かに、その子はヤングケアラーだったんですけれども、それが直接の理由で殺されたわけではありません。その記事によると、親の虐待だそうです。とても悲惨な事件で、胸が裂ける思いです。しかし、こういった深刻な事例だけがクローズアップされ、ヤングケアラーのイメージとして定着してしまうことを危惧しています。

「ヤングケアラー」という言葉をひとくくりにしている方が多い気がしています。例えば僕みたいに、普通に生活できて学校に行けるケースもあれば、本当に食べていくのも苦しくて、学校にも全く行けていない子どももいます。ヤングケアラーの幅の広さみたいなものが理解されていない印象を受けます。

「点」ではなく「線」の支援が必要

―ヤングケアラーの支援を進める上で、どのような課題があるとお考えですか。

1点目は、横の連携ですね。教育、医療、福祉が一丸となって、ヤングケアラーを早期発見していく必要があると思っています。

学校だけに頼っても、子どもを見ているだけでは分からないケースもあるので、大人側から発見する手だてを用意しておくことも大切です。例えば、要介護者の退院時にヤングケアラーに該当する子を見つけたり、福祉の現場の人が要介護者のために家に入った時に発見する方法も考えられます。また、相談窓口を設けるだけじゃなくて、家庭の状況を整理して、それに対する適切な支援をしていくことも大切だと思います。

もう1つは、支援を「点」ではなく、「線」で考えること。行政の動きを見ると、「自分はヤングケアラーだ」と思っている子どもから相談してもらうことに注力している印象を受けますが、介護をしていても、特に辛いと思っていない子どももいます。

だから、その段階ではまだ相談していないけれども、もしかしたら1年後、2年後、あるいは高校を卒業する時にすごく悩むかもしれないですし、高校を卒業した後になって、もっと介護に関わらないといけなくなるかもしれない。一時点で大丈夫、ではなくて、長い目で見守る視点を持たないと、重要な時に孤立してしまうおそれがあると思います。

―宮崎さんは15歳からお母さまの介護に関わり、一度受験を諦めた後の大学進学、就職後の「介護離職」と、大変な苦労を経験されています。「この時にこういう支援があったら…」と思われたことはありますか。

そうですね。やっぱり、介護者のケアの重さによって、必要な支援は変わってくるのかなと思います。

ヤングケアラーの状況は、「年齢」と「自由度」で図式化できます。この図は縦軸が年齢、横軸が自由度になっています。自由度というのは、精神的な自由だったり、時間的な自由だったり、これが低い場合、ヤングケアラーであれば、通学が困難になったり、福祉に接触できていなかったりするような状況です。一方で、ボリュームゾーンは真ん中なんですよね。「孤立している」「何となく辛い」と感じている段階です。

ヤングケアラーの状況を表した図(宮崎さん提供)
ヤングケアラーの状況を表した図(宮崎さん提供)

僕が18歳未満の時も、この真ん中のところにいました。「なんか周りと違うな」「なんか辛いんだよな」みたいな感じ。この時は、ケアのコミュニティーや精神的なサポートみたいなものは欲しかったんですけど、「こんな支援策がほしい」という考えはありませんでした。ただただ、「理解してもらいたい」みたいな感じでした。

でも、高校を卒業した後、大学に行けなくなった時は、将来どうすればいいのか全然わからない状態でした。この段階になると、寄り添ってくれて、一緒にどう乗り越えればいいか相談にのってくれる大人が必要だと思います。幸い、僕は親戚が相談にのってくれたので、なんとか、自分が希望する進路に進めたんですけど、「もう人生諦める」みたいな、思い詰めた状況になる人もいると思います。

―やっぱり、ご家族やご親戚のサポートは大きいですね。

僕は運良く姉がいて、一緒にケアをしてくれたので、なんとか就職もできたんですけど、それが運じゃいけなくて、きちんと制度にしないといけないと思っています。

この図で言うと、支援の緊急度が「高」の人たちは、今すぐにでも支援が必要なんですが、「中」とか「低」の人たちって、特に具体的な悩みが無い方が多いと思うんです。でも、この人たちもこの先、「中」から「高」になるかもしれないし、「低」から「高」になるかもしれない。人生のターニングポイントできちんと寄り添ってくれる大人に相談できる場所が必要だと思っています。

―ヤングケアラー協会では、ヤングケアラーのためのオンラインコミュニティーを運営しています。

ヤングケアラーの問題って、「入り口」の支援はあるんですけど、「出口」の支援がないんですよね。ヤングケアラーになった人のための相談窓口はありますが、ヤングケアラーから抜け出したい時に悩みごとが具体化するケースもあるので、僕たちがそうした支援をやっていければいいなと思っています。

オンラインコミュニティーには、現在230人が参加しています。年齢は17歳ぐらいから25歳ぐらいまでが多いですね。月1回ぐらい、Zoomで集まって交流していますが、22歳から25歳ぐらいまでの方からの相談が多いです。

それぐらいの年齢って、“自立”していく時なんですよね。「家を出たい」とか、「就職する」とか、「結婚する」とか、「一人暮らしをする」みたいな。その時に介護の壁があって、それができない、あるいはできそうにない、そういった相談がすごく多くて、それが僕らが乗り越えなければならない大きな課題だと思っています。

ケアプランにヤングケアラー支援の視点を

―お母さまの介護をしていた当時、ケアマネジャーとの関わりはありましたか。

ありました。13年間ですかね、本当に親戚のおばちゃんみたいな感じでした(笑)。当時、僕は母の隣で寝ていたんですけど、朝ケアマネさんに起こしてもらって目が覚めることもありました。

―ヤングケアラーの支援で、ケアマネジャーが果たす役割は大きいと思う一方で、介護保険は利用者の自立支援が主な目的なので、ケアマネジャーの関心が向きにくい面もあります。

ケアマネさんが直接ヤングケアラーを支援する必要はないかもしれませんが、ヤングケアラーの支援を視野に入れたケアプランを作ってほしいとは思っています。

大学生の時、ほとんど学校に行けない時期があったんですけど、おそらくケアマネさんは、僕のスケジュールを踏まえずにケアプランを作っていたと思うんです。いつも父親に相談してケアプランを作っていたので、こっちが合わせざるを得ない状況でした。

―「スケジュール」というのは、時間割のことですか。

そうです。その頃、僕は東京の町田に住んでいて、そこから池袋の大学に通っていたんですけど、片道1時間半ぐらいかかったんです。朝、1限の授業に出た後、一度帰宅して母親に薬をあげてから、夕方の5限に戻ることもありました。結構しんどくて、ケアマネさんがいい具合にヘルパーさんを配置してくれたら、普通に通うことができていたかもしれません。

―最後に、ケアマネジャーに伝えたいことはありますか。

ヤングケアラーとしては、話を聞いてもらえるだけで嬉しいと思います。僕がケアラーとして一番辛い時、往診の先生がすごく気にかけてくれて、「体調大丈夫?」「何かあったら、いつでも連絡してね」と言ってくれたことが力になりました。例えば、ケアマネさんから「こういうのあるよ」と相談窓口を伝えてもらうだけで、ケアラーの安心感につながると思います。

取材・構成/敦賀陽平

宮崎成悟(みやざき・せいご)
元ヤングケアラー。15歳の頃から難病の母親の介護を担う。株式会社エス・エム・エス、株式会社JMDCなどを経て、2019年にYancle株式会社を設立し、ヤングケアラーのオンラインコミュニティーや就職・転職支援をスタート。2021年11月、法人形態を変える形で一般社団法人ヤングケアラー協会を創設した。厚労省「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」検討委員会委員。著書に「ヤングケアラーわたしの語り―子どもや若者が経験した家族のケア・介護」(生活書院)などがある。

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