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小濱道博の介護経営よもやま話小濱道博の介護経営よもやま話

小濱道博の介護経営よもやま話

次の制度改正は「過去最大級の激変」も!!

先月24日、社会保障審議会介護保険部会が開催され、2024年度の介護保険法改正に向けた審議がスタートした。同部会は年内に意見書を取りまとめ、その後、政府は来年1月から始まる通常国会に介護保険法の改正案を提出、6月頃に改正法が成立する見通しだ。

2021年度の法改正に伴い、ボランティア活動に依存する形で、「通いの場」が大きな役割を担うはずだったが、コロナ禍の長期化で普及・拡大には至っていない。元気な高齢者を介護補助者として活用し、社会参加を促す試みも同様である。

介護事業者の収益率と経営力を向上させるべく、事業の「大規模化策」として導入された「社会福祉連携推進法人」も、今年度になってようやくスタートする状況だ。「8050問題」の対策として導入された「重層的支援体制整備事業」(断らない相談支援)もあまり進んでいない。

こうした“宿題事項”をどのように修正するのかという点も、今後の介護保険部会の審議における大きなポイントとなるだろう。

福祉用具販売のケアマネ支援も論点に

福祉用具については、厚生労働省の別の検討会で審議が進められている。財務省は、要介護度に関係なく給付対象となっている廉価な品目(歩行補助杖、歩行器、手すりなど)を「貸与」から「販売」に切り替えるとともに、福祉用具貸与のみのケアプランの事例については、介護報酬を引き下げるべきだと主張している。厚労省は、これにどう対応するのだろうか。

同検討会では、福祉用具専門相談員やケアマネジャーの利用者支援のあり方も問題視されている。福祉用具を購入した際の定期的なモニタリングやメンテナンスのほか、特定福祉用具販売のみの場合にケアマネジャーの支援が行われないことも論点となっている。

一方、政府の規制改革推進会議においては、 ユニット型特養の1ユニットの定員を「おおむね15人以下」に緩和することや、介護施設と特定施設の人員基準を現行の「3対1」から「4対1」に引き下げることが論点となっている。今後、先進的な特定施設などでモデル事業を実施した後、その成果も踏まえ、介護保険部会で条件付きの基準緩和が検討されることになる。

「自己負担2割化」が実現する可能性も

さらに財務省では近々、財政制度等審議会(財務大臣の諮問機関)の分科会において、2024年度の介護保険法改正に向けた提言がまとまる見通しだ。

主なテーマは、▽利用者の自己負担2割への段階的な引き上げ(年収200万以上)▽居宅介護支援費の「自己負担1割化」▽福祉用具貸与のみのケアプランの報酬引き下げ▽介護老人保健施設、介護医療院、介護療養型医療施設の多床室料の「全額自己負担化」▽区分支給限度額の特例措置の見直し▽訪問介護・通所介護の軽度者の市町村事業への移行―などである。

このうち軽度者の市町村事業への移行については、2021年度の法改正で第一号事業(旧・予防訪問介護、旧・予防通所介護)が要介護者も利用可能となったことから、いつでも実現可能な状況となっている。

利用者の自己負担割合の2割への引き上げは、おおむね年収200万円以上が対象となるだろう。診療報酬では今年10月1日から、75歳以上の後期高齢者のうち、年収200万円以上の人の自己負担割合を2割へ引き上げる。

近い将来、医療と介護双方で、年収200万円以上の高齢者の「自己負担2割化」が実現する可能性が高い。そうなれば、年金の受給額が減少傾向にある中、利用する介護サービスの選別も起こり得る。今後は一層、利用者にとって「使いたいサービス」「必要なサービス」であることが求められる。

居宅介護支援費の自己負担導入も焦点

居宅介護支援費における自己負担の導入は、これまで財務省が何度も要求しており、介護保険部会でも継続審議となっている。

同省の言い分はこうだ。自己負担額が発生しない現状では、「ケアマネジャーにお世話になっている」との意識が利用者側に強く働き、サービスの内容や質に不満があっても、なかなか口に出せない。自己負担額を支払うことで、利用者はケアマネジャーに意見を言いやすくなり、それがケアマネジメントの質の向上につながる―というのである。

「自己負担1割化」は、2021年度の法改正の際も検討されたが、セルフプランが増加したり、利用者からの要求が強くなったりすることを懸念する声もあり、最終的に導入が見送られた。

だが、油断は禁物だ。財務省の意向が強いことを考えると、実現する可能性は決して低くはないといえる。

コロナ禍の財政赤字を反映?厳しい改定も

老健などの多床室料の「全額自己負担化」も、実現する可能性は高いといえる。2021年度の法改正の際は、介護療養型医療施設の廃止期限が迫っていたため、介護医療院などへの転換を推進することが優先事項となった結果、導入は見送られた。介護療養型医療施設は、2024年3月末での廃止が決まっており、次の法改正での実施に支障はないと思われる。

2024年度は、6年に1度の診療報酬との同時改定の年だ。コロナ禍の国の財政赤字を反映した厳しい結果になることも覚悟しておかなければならない。過去最大級の激変も見込まれるので、早期に情報を収集し、事前に対策を講じることが必要だ。2024年度に向け、議論のスピードは加速している。

小濱道博
小濱介護経営事務所代表。株式会社ベストワン取締役。北海道札幌市出身。全国で介護事業の経営支援、コンプライアンス支援を手掛ける。介護経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。個別相談、個別指導も全国で実施。全国の介護保険課、介護関連の各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター等主催の講演会での講師実績も多数。C-MAS介護事業経営研究会・最高顧問、CS-SR一般社団法人医療介護経営研究会専務理事なども兼ねる。

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