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弁護士からの応援寄稿「知っておきたいトラブル事例と対応策」

特別編・ケアマネジャーのとってのBCP

前回、運営基準で指定された項目こそが、ミニマムなBCPを作る上で「骨格」になると指摘しました。今回は、感染症と災害に分けて詳細なBCPの定め方を解説します。なお、これは私の考えに基づくもので、唯一の正解ではありません。あくまで一例として、参考にして頂ければと思います。

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感染症は真似でOK、災害は想像力豊かに

まずはおおまかな考え方をお伝えします。感染症については既存のBCPの真似で十分である一方、災害は時間をかけて練る必要がある、ということです。ポイントとなるのは「想像力」。被災状況や時系列に沿った復旧の進み具合を、どこまでイメージできるかが重要です。以下、個別に解説します。

「発動基準」こそがポイントー感染対策のBCP

「感染症は真似でいい」と申し上げましたが、その理由は、感染状況は日本全国共通であり、その対応もほぼ同一であるためです。また、新型コロナウイルスへの日々の対策で基本的予防策や迅速な情報共有、隔離などは既に現場で実行できていると思われますので、BCPを作る際にあえて特別なものとする必要もありません。その中身の構成に時間をかけるくらいなら、いざという時でも定めた手順をスムーズに、確実に実践できるよう注力しましょう。

ただし、注意点もあります。「一度BCPとして策定すればその規定を遵守しなければならない」ということです。

例えば、BCPの発動基準を、「感染疑いが一人でも出たときには、BCPを発動する」と規定すれば、かなり頻繁に発動することになるでしょう。その事自体は悪いことではありません。むしろ、良い訓練になるともいえます。ただ、現場が一連の手順に慣れてしまい、本来すべきことを怠けるようなことになっては本末転倒です。

そういう意味で考えると、「陽性者が1人以上出たとき」という発動基準は少しハードルが低すぎるかもしれませんね。

「大地震」の想定がスタンダード:災害のBCP

続いて災害についてです。災害といっても火山の噴火から水害まで多種多様ですから、地域ごとに最も起こり得る固有の災害を想定し、BCPを設定するのが理想です。

ただ、多くの場合は「大地震」を想定することが一般的と考えます。

その理由は、近い将来、南海トラフ地震や首都直下型地震などの大地震が発生するといわれている上、それ以外にも全国各地で地震は起きているためです。さらに地震は広範囲で同時に起きる災害であるため復旧に向けた計画が重要となるという理由もあげられます。

台風や水害用のBCPを作成しても良いのですが、いずれも不意打ちで発生する地震と異なり、ある程度、発生が想定できる上、エリアによって被害状況も大きく異なることから、災害を想定したBCPを作りづらいという問題があります。

ここで、私が作成したBCPの雛形を読者の皆様にプレゼントします。自由にご活用ください。

BCP雛形ダウンロード

前号で紹介した運営基準の項目に沿って、できる限りシンプルに、最低限の記載でありつつ実践的なものとなるよう考えて作成しました。なお、この雛形が完璧である保障はなく、あくまで参考例として、自己責任でご利用頂くことが前提となります。

メンバー全員が感染した場合を想定し、他事業所との連携を

私が作った雛形の大きな特徴は、目的、基本方針の後に「BCP発動時(感染症や災害の発生)」から始めている点です。一番困る状況に陥ったときどうするかについて考えておこう、ということです。

その上で、「普段からこのようなことを最低限やっておけばよかった」という視点から、思いついたことを平時の対応として書き出していきます。その際、どうしても「あれもこれも」と盛り込んでしまいがちですが、盛り込む要素が増えるほど難易度が高まってしまいます。最低限のものにとどめる勇気を持ちましょう。

感染症については、前述の通り、ほぼそのまま活用すれば良いでしょう、残された課題としては「事業所のメンバー全員がり患したときに、ご利用者を外部の事業所に引き継がなければならない」があげられます。この点については事業所の規模や協力を求められる状況が異なるため、個別にシミュレーションした上で、他事業所と連携しておく必要があります。

災害発生時は、自らの安全確保こそを優先して!

災害については、「地域一帯で震度5強以上の地震が発生」したと想定しています。ここを、水害や噴火などに置き換えても問題ありません。ともかく一つBCPを作成すればよいのです。

地震への対応は、発生した瞬間、職員がどこにいて何をしているかにより、大きく異なります。「全員が事務所にいる場合」「自宅にいる場合」「一部の職員が外出中で、残りの職員が事務所にいる場合」など、複数の状況を想定し、それぞれで各職員がどのように対応するかをイメージしなければなりません。

その際、在宅のケアマネジャーにとっての最大の悩みとなるのが「発生時、安否確認など、担当するご利用者にどこまで関わるべきか」でしょう。

2021年に改正された災害対策基本法は、市町村に対し、高齢者や障害者らの避難行動要支援者に関する個別避難計画を策定することを努力義務としました。となれば「ケアマネもこの避難計画を作らなければならないのだろうか」と思われるのも自然な話です。

しかし、担当するご利用者は常に入れ替わるものです。これをBCPに完璧に盛り込もうとすると、永遠に完成することは無いでしょう。

繰り返しますが、運営基準所定の項目を網羅すれば必要十分なBCPとなるのです。もちろん、理想は担当利用者の生命身体を守り救助できることですが、自分や自分の家族を犠牲にしてまでご利用者を優先することまでは求められていません。この最低限の雛形を参考に、無理のない範囲でまずは二種類のBCPを作ってしまうことをお奨めします。

なお、本号の特典としましたBCPの雛形について、詳しい解説動画を公開予定です。こちらは有料になりますが、在宅事業所向けに作成方法について講義したものをご覧頂くことで、よりBCPの理解が深まることでしょう。雛形をそのまま取り入れるということでもよいのですが、ブラッシュアップして実践的なものとするため、ぜひご活用ください。

外岡潤
1980年札幌生まれ。99年東京大学文科Ⅰ類入学、2005年に司法試験合格。07年弁護士登録(第二東京弁護士会)後、ブレークモア法律事務所、城山総合法律事務所を経て、09年4月法律事務所おかげさまを設立。09年8月ホームヘルパー2級取得。09年10月視覚障害者移動介護従業者(視覚ガイドヘルパー)取得。セミナー・講演などで専門的な話を分かりやすく、楽しく説明することを得意とし、特に独自の経験と論理に基づいた介護トラブルの回避に関するセミナーには定評がある。主な著書は『介護トラブル相談必携』(民事法研究会)、『介護トラブル対処法~外岡流3つの掟~』(メディカ出版)、『介護職員のためのリスクマネジメント養成講座』(レクシスネクシス・ジャパン)など。「弁護士 外岡 潤が教える介護トラブル解決チャンネル」も、運営中。

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