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弁護士からの応援寄稿「知っておきたいトラブル事例と対応策」

それって医療行為?法的な見極め方、教えます・前編

いわゆる医療行為。家族なら問題なくできるにもかかわらず、介護のプロには超えてはならない一線が設定されているという、やっかいな存在。それだけに、サービス事業所と利用者との間を取り持つケアマネジャーは、医療行為がらみの悩みや相談を持ちかけられ、トラブルに巻き込まれることも、しばしばあります。そこで今回は、医療行為に関するありがちなお悩みについて、法的にアウトかセーフかを判定し、その考え方について解説します。

ケース1:軟膏は塗っていいの?

Q:モニタリングで訪問すると、ご利用者のご家族から「昨日来てくれた新しいヘルパーさん、すごくいい!ガーゼ交換のついでに、褥瘡があるところにも軟膏も塗ってくれたのよ!介助も丁寧だし、いい人がきてくれたわ」と笑顔で伝えられました。軟膏の塗布…。介護職員には認められていなかったような気がします。私も笑顔で「それは良かった、です」と返しましたが心中は複雑です。

これってアウトですか、セーフですか。

A :アウトです。患部の洗浄やガーゼ交換までは原則として医療行為になりませんが、褥瘡部分を消毒することや薬を塗ることは医療行為となります。

前提として、訪問介護をするヘルパーは医療行為を行うことができません。医師法の第17条は「医師でなければ医業をなしてはならない」と明記しており、違反した場合、2年以下の懲役または100万円以下の罰金が課せられます。また、ご利用者に何らかの事故が発生した場合には、医療行為を行ったスタッフや事業所が責任を問われることになりかねません。

訪問介護のヘルパーは医師免許もないため、医業(医療行為を反復継続して業としてすること)を行うことは、違法行為になるのです。

もっとも、爪切りやガーゼ交換など、医療か介護かの分類が難しい「グレーゾーン」に含まれる行為もかなりあります。そこで厚生労働省は「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について」という通知を2005年に発出しました(「以下、05年通知」といいます)。これが今もなお実務を支配する基本的な規定ですので、必ずチェックしておきましょう。

この通知では、医師でしかできないとされる「医療行為」について次のように定義されています。
当該行為を行うに当たり、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為(医行為)」 つまり、一つひとつの行為について、医療行為か否か迷ったときは、この定義に照らし判断すればよいのです。

そして05年通知には、「原則として医行為ではないと考えられるもの」として以下が挙げられています。
「4 軽微な切り傷、擦り傷、やけど等について、専門的な判断や技術を必要としない処置をすること(汚物で汚れたガーゼの交換を含む)」

これによれば、ガーゼの交換自体は医学的判断と技術をもってしなければ人体に危害を及ぼすともいえず、医療行為に該当しないといえます。

一方、軟膏については、「皮膚への軟膏の塗布(褥瘡の処置を除く)」と明記されており、褥瘡処置としての軟膏の塗布は医療行為に該当するということになります。よって、軟膏の塗布はアウト。ヘルパーステーションに連絡し、中止を求めるべきでしょう。その一方、ご利用者には褥瘡に対応できる訪問看護の利用を提案してみるのもよいかもしれません。

ケース2:チェックリスト活用&受診勧奨が医師法違反?!

Q:医者嫌いのご利用者Aさん。動悸や息切れが目立つようになっても、病院には行こうとしません。やむを得ず、循環器の専門医が監修した心不全に関するチェックリストを持参し、一緒にやってみました。しぶしぶAさんも応じてくれましたが、「結果が思わしくなかったから、お医者さんに行きませんか」と勧めたところ、表情が一変。「あんたは医者か?こんなリストで俺を診断するとはどういうことだ、医師法違反だ!」と激怒したのです。良かれと思ってしたことなのに…とがっかりですが、このようにチェックリストを使い受診を勧めるのは、アウトですか。セーフですか。

A :セーフです。こうしたケースに関する情報は05年通知にも載っていませんが、そんなときに前述した医療行為の定義が役立ちます。

「当該行為を行うに当たり、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為(医行為)」ですから、リストを使いその結果をみて受診を勧めること自体は何ら「人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれ」はありません。そもそもリスト自体が、素人でも簡易にリスクを測ることができるよう作られたものですから、医師以外の人が使うことも想定内です。

したがって、こういうときは「お言葉ですが、05年通知の定義によれば医療行為には該当せず、医師法には抵触しないと考えます」と返答すれば良いということになります。

外岡潤
1980年札幌生まれ。99年東京大学文科Ⅰ類入学、2005年に司法試験合格。07年弁護士登録(第二東京弁護士会)後、ブレークモア法律事務所、城山総合法律事務所を経て、09年4月法律事務所おかげさまを設立。09年8月ホームヘルパー2級取得。09年10月視覚障害者移動介護従業者(視覚ガイドヘルパー)取得。セミナー・講演などで専門的な話を分かりやすく、楽しく説明することを得意とし、特に独自の経験と論理に基づいた介護トラブルの回避に関するセミナーには定評がある。主な著書は『介護トラブル相談必携』(民事法研究会)、『介護トラブル対処法~外岡流3つの掟~』(メディカ出版)、『介護職員のためのリスクマネジメント養成講座』(レクシスネクシス・ジャパン)など。「弁護士 外岡 潤が教える介護トラブル解決チャンネル」も、運営中。

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