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弁護士からの応援寄稿「知っておきたいトラブル事例と対応策」

休日の対応…どこまで「業務」として対応すべき?

当然のことですが、ケアマネジャーだって、労働基準法に則った勤務時間内で働かなくてはなりません。ただ、仕事の性質上、法に則っているとは言えないような時間にご利用者や家族からの連絡が入ることもあるでしょう。さらにいえば「うちは特定事業所加算を算定しているからね。24時間365日、対応しなければならないんです!」と考えてしまう管理者や現場のケアマネもいるのでは。でも、本当にそこまでの対応が求められるのでしょうか?事例を通して考えます。

休みに私用電話での対応を求める管理者…納得しかねます!

  • 相談者Aさん:50歳代女性ケアマネ
  • ご利用者Bさん:70歳代女性、独居。要介護1。日常生活はほぼ自立。買い物のための移動がつらくなってきたため、試しに宅食サービスを使ったが、「口に合わない」ということでサービス停止を求めた。
  • 相談者の上司である所長(管理者)Cさん:60歳代男性、主任ケアマネ。口癖は「利用者ファースト」
  • ご利用者のサービス利用状況:デイサービス(週2回)

先日、私の担当するご利用者のB様が、「今の宅食サービスは、口に合わないので明日から必要ない」と、宅食事業者に直接連絡されました。そしてその事業者は、「本当に明日から必要ないのか、念のためケアマネさんからもA様に確認してもらえますか?」と、私の所属する居宅介護支援事業所に連絡してきました。その日、私はたまたま休みでしたが、「配食サービスをやめるか否か」の確認程度であれば、他の職員でも対応できるはずです。

ところが。この連絡を受けた管理者は、休日中の私に繰り返しLINEを送り、自分ですぐに対応するように求めたのです。

利用者の容態が急変し、何らかの対応が直ちに必要、というならわからなくもないですが、この件は、誰でも簡単に対応できることです。そこで私は、管理者のCさんに電話をしてそのことを説明し、当の管理者か事業所内の事務員さんに代わりに確認をお願いしたい旨、伝えました。

ところがCさんは「あなたの担当者なのだから、あなたが対応しなさい。すぐに連絡しなさい」と言うばかり。私もさすがにむっとして「いや、この電話だって私用電話ですよ。つまり所長は『休日、私用電話を使って、仕事の電話を掛けろ』と命じていらっしゃるのですか?!」と、少し強めの口調で返答しました。

それでもCさんの答えは「当然じゃないですか!『うちは利用者ファースト』と、常々言っているじゃないですか。それにうちは特定事業所加算を算定しているから、24時間ご利用者の相談に応じる義務があるんです。そんなことくらいはわかっているでしょう。というかあなた、B様のケアマネジャーでしょ?責任感はないのですか?」。Cさんの剣幕に押された私はBさんに電話確認をせざるを得ませんでした。

休日に私用電話での仕事を強要する。いくら担当ケアマネだからといって、これはやりすぎのような気がするのですが…。そもそも、ケアマネが休日に求められる業務の範囲というのはどの程度のものなのでしょうか。この機会に教えて下さい。

「勤務時間外は『完全に』労働から解放」が基本

A:勤務時間外は「完全に」労働から解放される必要があります。

ごく当たり前のことですが、ケアマネだって日本国の労働基準法が適用される労働者です。「勤務時間でない=休日」であれば、業務命令に応じる必要はありません。今回のケースでは電話対応を拒むことができますし、対応してしまった場合、休日に勤務したことになるため、その分の給与を請求できます。なお、法定休日の出勤に対しては、基礎賃金の1.35倍の休日出勤手当を支払わなければなりません。

緊急事態で休日に対応…自分の判断で動いても給与請求が可能

ただ、きっぱりと割り切れない状況も考えられるところが福祉の世界の難しいところ。

例えばご利用者の容態が急変したり、犯罪に巻き込まれたりするなどの緊急事態であれば、休日でも即応せざるを得ないでしょう。(※注)

こうしたケースで上司が休日の即応を求めた場合は、その命令に応じて問題ありません。また、上司の判断を待たずに自分の判断で動いたとしても、よほど不自然で理由のないものでない限り、その分の給与を請求することができます。

「休日は仕事から手が離れる仕組み」の確立を!

難しいのは、上司の判断と担当するケアマネの判断が食い違ってしまった場合ですね。今回の事例にあてはめれば、次のようなケースがありえそうです。

休日の早朝、Cさんから電話があった。Cさんは「Bさんが発熱し、体調が悪いようだ。本人から電話があった。様子を見に行ってほしい」と言ってきた。だが、自分は起きたばかり。正直、すぐにBさん宅を訪問するのはしんどい。それにBさんはいつも大げさに言う傾向がある。どうしたらいいのか…。

上記のケースについては、原則通りです。休日ですから対応する義務はありません。それでも誰かが対応するというのであれば、当日出勤しており、電話を受けた管理者のCさんが訪問するのが筋です。

言い換えるなら、同じ事業所内のメンバーで柔軟にフォローし合うなどして、「休日は仕事から手が離れる仕組み」を整えておくべきなのです。労働基準法遵守の観点からも、そうした対応は必須です。

※注:首都直下型地震など想定外の大規模災害が起きたようなときは、BCP(事業継続計画)の出番となります。BCPには、被災時に勤務日である職員と、休日である職員の両方を考えて各人の対応や行動を規定しておく必要があります。

外岡潤
1980年札幌生まれ。99年東京大学文科Ⅰ類入学、2005年に司法試験合格。07年弁護士登録(第二東京弁護士会)後、ブレークモア法律事務所、城山総合法律事務所を経て、09年4月法律事務所おかげさまを設立。09年8月ホームヘルパー2級取得。09年10月視覚障害者移動介護従業者(視覚ガイドヘルパー)取得。セミナー・講演などで専門的な話を分かりやすく、楽しく説明することを得意とし、特に独自の経験と論理に基づいた介護トラブルの回避に関するセミナーには定評がある。主な著書は『介護トラブル相談必携』(民事法研究会)、『介護トラブル対処法~外岡流3つの掟~』(メディカ出版)、『介護職員のためのリスクマネジメント養成講座』(レクシスネクシス・ジャパン)など。「弁護士 外岡 潤が教える介護トラブル解決チャンネル」も、運営中。

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