“あるある”で終わらせない!失敗を生かすケアマネジメント

※この記事は 2023年12月20日 に書かれたもので、内容が古い可能性がありますのでご注意ください。

事例で考える利用者との信頼関係の築き方(後編)

前回は、私の「何でも言ってください」が引き起こした、“トイレ詰まり直して事件”のお話をしました。

ご利用者からの「山田さん、頼りになる」の一言に喜べない―。これが、あの時の私の正直な気持ちでした。

のちに、福祉業界以外で働く友人たちに、「お客さんから『頼りになる』って言われたら、その方と信頼関係があると思う?」と尋ねてみたところ、「そりゃ、そうでしょう!」と即答されました。

でも私は、その言葉に納得がいかず、信頼関係について自問自答する日々が続きました。

「信頼関係ってなんだろう?」―。私は、自分の家族に質問してみました。すると、「相手が困った時に助ける。相手を気にかける(関心をもつ)。相手に誠実である。あとは、思いやりかな」といった言葉が返ってきました。少しは納得しましたが、何かが足りないと感じました。

専門職の意見も聞いてみたいと思い、今度は、事業所のケアマネジャーに相談してみました。

すると、「トイレ詰まりって急だし、生活を支えるケアマネが動いて当然よ」「さすがにトイレの詰まりは困るけれど、家族とか身寄りがいないなら、ケアマネが動くのは仕方ないかな」などの反応がありました。

でも、なんだか腑に落ちません。どうすれば納得できるんだろう―。

もやもやが解消されないまま、私は日々、ケアマネジャーとしての業務をこなしていました。

その中で、「これって、ケアマネジャーの仕事?」と思う場面に、何度も遭遇しました。

例えば、「郵便物を出してきてほしい(外勤の時にポストに投函して)」「役所に行くついでに、バスの無料チケットをもらってきて」「明日の分の薬が無いの。薬局に行こうと思っていたけど、雨だから、代わりに行ってくれない?」などです。

こうした声がご利用者から出るたびに、「これって、ケアマネジャーの役割なの?」と、疑問が湧きましたが、その一方で、「これに応えないと、ご利用者との信頼関係が崩壊するのではないか」とも思い、おびえていました。

勇気を出して利用者に打ち明けたら…

悶々と過ぎていく日々でした。

ケアマネジャーとして着任して半年が過ぎた頃、私は思い切って、ご利用者に打ち明けてみることにしました。

「〇〇さん、ごめんなさい。これは、ケアマネジャーとしてお応えできない支援なのです。ヘルパーさんが代わりに支援してくれるので、介護サービスのご利用につなげさせていただいても良いですか?」

すると、そのご利用者は、「前のケアマネジャーさんは、快くしてくれたよ」とおっしゃいます。

私は食い下がり、「そうでしたか。そう思って、しばらく(前任のケアマネと)同じようにさせていただきました。でも、私が支援できないこともあります。契約書の内容を再確認する機会があるので、改めてご説明させていただけないでしょうか?」と、強くお願いしました。

私の必死の説得に対して、ご利用者からは意外な言葉が…。

「ありがとう。最初からそう言ってくれたら、無理にお願いしないのに」。

てっきり怒りを買うと思っていた私が思わず、「怒らないのですか?」と尋ねると、ご利用者は「だって、ルールなんでしょう?最初に言ってくれたら良かったのに。ケアマネジャーさんがしてくれるから、良いものだと思っていました」とおっしゃいました。

私はようやく、納得のいく“答え”を手に入れることができました。ご利用者にちゃんと説明していなかったことが、全ての原因だったのです。

あれは“ただの人間関係”だった

それから2年後、私はMスーパーバイザーと出会い、定期的にスーパービジョンを受けることになりました。

Mバイザーのレクチャーで、はっとしたことがありました。それは、「ケアマネジャーと利用者の関係は、ただの人間関係ではなく、援助関係です」との教えでした。

あの時の私は、ご利用者の機嫌をうかがうだけで、あれはまさに“ただの人間関係”だったのです。

では、援助関係はどのように築けば良いのでしょうか?

その法則となるのが、「バイステックの7原則」です。

「バイステックの7原則」は、対人援助職者が信頼関係を構築するための行動規範で、アメリカの社会福祉学者であるバイステック氏が考案しました。この原則を用いれば、誰でも同じ成果を出すことができます。

つまり、対人援助職者の意思で、ご利用者との信頼関係(ラポール形成)を築くことができるのです。これこそが、まさにプロフェッショナルな支援といえます。

対人援助は「相手を信頼してこそ」

ご利用者から、「最初に言ってくれたら良かったのに。ケアマネジャーさんがしてくれるから、良いものだと思っていました」と言われた時、私は「もっと早くご説明すれば良かった」と思いました。

私は、「ご利用者が怒る」「信頼関係が崩れる」と思い込んでいました。このこと自体、私がご利用者を信頼していない気持ちの表れです。相手を信頼していないのに、「自分だけ信頼してもらいたい」というのは、虫の良い話です。

“トイレ詰まり直して事件”を通して、私は、主体的に相手を信頼するという、対人援助の基本に立ち返ることの大切さを学びました。

山田友紀
特別養護老人ホームやデイサービス、訪問介護、居宅介護支援の相談業務などに従事した後、2016年、京都市内でデイサービスなどを運営する株式会社「ふくなかまジャパン」の取締役に就任。2018年以降は、同市内にある居宅介護支援事業所「ふくなかま居宅介護支援センター」の管理者も務める。現在は、マネジメントや人材育成の講師を務めているほか、一般財団法人生涯学習開発財団が認定する「プロコーチ」としても活動している。

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