

小濱道博の介護経営よもやま話
厚労省が初のマニュアル作成…改めて「監査」とは?
- 2024/04/25 09:00 配信
- 小濱道博の介護経営よもやま話
- 小濱道博
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厚生労働省は4月5日付で、介護保険最新情報Vol.1249「「介護保険施設等に対する監査マニュアル」について(通知)」を発出した。これは、自治体が監査を実施する際に活用するマニュアルである。
2022年度、従来の実地指導の名称が運営指導に変更された。これは、オンライン指導が可能となり、必ずしも「実地」で行われるものではなくなったためである。この際、厚労省は「介護保険施設等運営指導マニュアル」を改定している。
運営指導のマニュアルは既にあったが、監査のマニュアルが出されたのは初めてである。今回は、改めて監査について考えてみたい。
「運営指導」と「監査」の違い
「来月、監査がある」「監査は●年前に入った」など、よく運営指導と監査を混同している方がいるが、運営指導と監査は全く異なる。
運営指導はその名の通り、「指導」が目的である。事業者の任意の協力によって行われるものであり、そこに強制力は働かない。行政には、情報を集めるための権限のみが認められていて、指導に従わなかったことのみを理由として行政処分(不利益処分)を行うことはできない。
これに対して監査は、重大な違反である疑いが強い時に行われ、立ち入り検査などの強制力を伴う行為が認められる。例えば、介護報酬の請求指導では、単なる手続き上の誤りといった軽微なミスの場合、自主返還の形が取られるが、監査で不正請求と認定された場合、徴収金として返還を強制され、40%の過料が上乗せされることになる。
監査はどんな時に行われるのか
監査は、▽人員基準違反▽運営基準違反▽不正請求▽不正の手段による指定▽高齢者虐待―のいずれか、もしくはこれらの疑いがある場合に行われる。細かくは以下のケースが該当する。
- 人員、施設及び設備並びに運営に関する基準に従っていないと認められる場合、もしくはその疑いがあると認められる場合(人員基準違反、運営基準違反)
- 介護報酬の請求について不正を行っていると認められる場合、もしくはその疑いがあると認められる場合(不正請求など)
- 不正の手段により指定等を受けていると認められる場合、もしくはその疑いがあると認められる場合(不正の手段による指定)
- 利用者等について、虐待防止法に基づき市町村が虐待の有無の判断を行った場合、もしくは高齢者虐待等により利用者等の生命又は身体の安全に危害を及ぼしている疑いがあると認められる場合(人格尊重義務違反、もしくは高齢者虐待)
行政は、対象となる居宅介護支援事業所等に対して、状況の報告や帳簿書類の提出を命じるとともに、役所に出頭してもらい、担当職員が直接ヒアリングを行う。また、設備や帳簿書類、物件の状況を調べる立ち入り検査も実施し、事実関係を的確に把握した上で、悪質と判断された場合は行政処分などの措置をとる。
立ち入り検査は、介護保険法上の行政の権限に基づき、超過定員など、違法の実態を確実に把握する必要がある場合に行われる。役所への通報や相談、国保連や地域包括支援センターに寄せられた苦情など、さまざまな情報から必要性を判断するが、特に、利用者とその家族、現場の従事者からの通報については、最重要情報として扱われる。
「内部監査システム」の構築を
運営指導の結果、事業者側に運営基準違反や介護報酬の不正請求等が認められた場合、監査で事実関係を確認した上で、行政処分が行われる。
行政処分の種類は、「報告等」「改善勧告」「改善命令」と比較的軽いものから、「指定の効力の全部または一部停止」や「指定取り消し」といった重いものまである。
「指定の効力の全部または一部停止」とは、例えば、「業務停止処分」の場合、執行の猶予期間に別の事業所に利用者を移してもらった上で、一定期間、全ての業務ができなくなる。
最も重い「指定取り消し」は、改善命令や指定の効力停止の措置を取っても是正されない場合や、改善の余地のない著しい不正があった場合に下されるもので、介護サービス事業を継続することが不適切と判断された場合に行われる。違反が指定の申請段階から続いている場合は、申請時までさかのぼって処分が行われ、介護報酬の返還も求められる。
運営指導にあたっては、事前に「各種加算等自己点検シート」「各種加算・減算適用要件等一覧」の提出が求められる。
厚労省は、全てのサービスにおける標準確認項目と標準確認文書、自己点検シート、算定要件シートを公開している。居宅介護支援事業者も少なくとも、これらに示されているチェックポイントを職員間で共有し、定期的に点検し合う「内部監査システム」を構築しておくことが重要である。また併せて、年1回程度は、外部からのチェックが入る体制も作るべきだろう。

- 小濱道博
- 小濱介護経営事務所代表。株式会社ベストワン取締役。北海道札幌市出身。全国で介護事業の経営支援、コンプライアンス支援を手掛ける。介護経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。個別相談、個別指導も全国で実施。全国の介護保険課、介護関連の各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター等主催の講演会での講師実績も多数。C-MAS介護事業経営研究会・最高顧問、CS-SR一般社団法人医療介護経営研究会専務理事なども兼ねる。
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