

小濱道博の介護経営よもやま話
居宅も対象、経営状況の報告のポイントまとめ
- 2024/05/28 09:00 配信
- 小濱道博の介護経営よもやま話
- 小濱道博
-
昨年5月12日の通常国会で成立した改正介護保険法において、介護サービス事業者は、所轄する都道府県の知事に経営状況を報告し、公表することが義務化された。
事業者が報告をしない、あるいは虚偽の報告を行った場合、知事は期間を定めて、報告もしくは内容の是正を命ずることができるとされ、それに事業者が従わない場合、指定の取り消しもしくは業務停止処分を行うことができるとされた。
知事に財務諸表等の経営情報を定期的に届け出るための提出方法として、社会福祉法人と同様、全国的な電子開示システムとデータベースが整備され、ここで手入力するか、会計ソフトでCSVファイルを作成し、電子データとして送信する形となる。
提出は必須だが、提出不要のケースとして、国から2つの事例が示されている。1つは、年収が百万円以下の場合、そしてもう1つは、自然災害などに被災し、提出そのものが困難な場合だ。
提出する財務諸表データは、法人単位ではなく事業所・施設ごとで、対象は、事業所・施設ごとの名称や所在地といった基本情報、収益と費用の内容、職種別の配置職員数などである。提出期限は決算期終了後3カ月以内とされているが、初年度となる令和6年度については、来年3月末までとなっている。
「会計の区分」での会計処理とは?
ここで問題となるのは、提出する財務諸表データが、法人が税務署に提出した決算書そのものではないということだ。
運営基準において、介護事業者は「会計の区分」に沿った会計処理をしなければならないとされている。
「会計の区分」は、厚生省令37号などの解釈通知に規定されている。同一法人で複数のサービス拠点を運営している場合は、その拠点ごとに会計を分けなければならない。これを会計用語で「本支店会計」という。一方、同一の拠点で複数の介護サービスを営んでいる場合は、介護サービスごとに会計処理を行う。これを「部門別会計」という。
介護事業者が会計を分けるということは、少なくとも損益計算書をそれぞれの拠点ごと、介護サービスごとに別々に作成することを意味する。
この時、収入だけでなく、給与や電気代、ガソリン代など、全ての経費を分けなければならず、水道・光熱費など、共通の経費を振る振り分ける際に使用する按分基準も通知で定められている。
どこまで厳密に会計処理を行うかについては、4つの方法が示されているが、これは、税務署に提出する決算書では求められていない作業だ。税務会計とは全くの別物であるにもかかわらず、多くの会計事務所は、「会計の区分」という基準の存在を知らない。このため、会計事務所任せでは危険である。
公表求められる財務諸表と特例
公表を求められる財務諸表は、障害福祉サービス事業所等での報告事項を踏まえ、▽事業活動計算書(損益計算書)▽資金収支計算書(キャッシュフロー計算書)▽ 貸借対照表(バランスシート)となる。
公表は原則として、事業所・施設単位となる。拠点や法人単位の一体会計としていて、事業所・施設の区分けが困難な事業者については、拠点単位や法人単位での公表も認められるが、その際は、公表対象が明確となるよう、会計に含まれている事業所・施設を明記することが求められる。
1人当たりの賃金の公表は任意に
1人当たりの賃金の公表については、介護サービス情報公表制度において任意となった。また、都道府県知事が、情報の提供を希望する介護サービス事業者から提供を受けた情報については、公表を行うよう配慮する情報として明確化される。
公表にあたっては、事業所や施設の特性に応じ、設置主体や職種、勤続年数などがわかるような形式とすることも可能だ。原則、事業所・施設単位だが、事業者の希望に応じ、法人単位での公表も可能とし、その場合、法人内の事業所・施設名を明記する必要がある。
会計事務所、使い方の再検討を
介護業界は、居宅介護支援事業者を含め、その7割が小規模事業者である。会計事務所に領収書を丸投げして記帳代行を依頼しているケースも多い。小規模事業の経営者の多くは、財務諸表の読み方がわからないだろうし、納税額くらいしか関心がないというのが現実だろう。ただ、これは介護業界に限らず、多くの一般の法人経営者にも当てはまることだ。
一方の会計事務所も、介護保険制度に精通していることはまれで、税金の申告のみという顧問形態が大部分であり、先述した「会計の区分」の知識も皆無である場合が多い。会計事務所が行う業務は税金の申告であり、そのための税務会計が中心であることから、無理もない話ではある。しかし、今回の義務化は、会計事務所の立ち位置を大きく変えるだろう。
「会計の区分」は、今回の義務化で新たに求められる作業ではない。従来から存在している運営基準の一つである。今後は、介護事業に精通している会計事務所を選ぶべきであり、今回の義務化を機に、そのことをしっかりと見極める必要がある。


- 小濱道博
- 小濱介護経営事務所代表。株式会社ベストワン取締役。北海道札幌市出身。全国で介護事業の経営支援、コンプライアンス支援を手掛ける。介護経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。個別相談、個別指導も全国で実施。全国の介護保険課、介護関連の各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター等主催の講演会での講師実績も多数。C-MAS介護事業経営研究会・最高顧問、CS-SR一般社団法人医療介護経営研究会専務理事なども兼ねる。
スキルアップにつながる!おすすめ記事
このカテゴリの他の記事
こちらもおすすめ
ケアマネジメント・オンライン おすすめ情報
介護関連商品・サービスのご案内
ケアマネジメント・オンライン(CMO)とは
全国の現職ケアマネジャーの約半数が登録する、日本最大級のケアマネジャー向け専門情報サイトです。
ケアマネジメント・オンラインの特長
「介護保険最新情報」や「アセスメントシート」「重要事項説明書」など、ケアマネジャーの業務に直結した情報やツール、マニュアルなどを無料で提供しています。また、ケアマネジャーに関連するニュース記事や特集記事も無料で配信中。登録者同士が交流できる「掲示板」機能も充実。さらに介護支援専門員実務研修受講試験(ケアマネ試験)の過去問題と解答、解説も掲載しています。



