弁護士からの応援寄稿「知っておきたいトラブル事例と対応策」
ケアマネはLルールや保険者と、どう向き合うべきか
- 2024/06/20 09:00 配信
- 弁護士からの応援寄稿「知っておきたいトラブル事例と対応策」
- 外岡潤
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先日のCMOのニュース記事「押印や研修…3割のケアマネ『理不尽なローカルルール』経験」で、読者のケアマネの皆様から寄せられた様々なローカルルール(以下「Lルール」。介護保険制度を運用する市町村ごとに扱う書式や法令・通知の解釈などが異なることによる、保険者独自のルールのこと)が多数紹介されました。記事では厚生労働省が開設している「行政手続の簡素化・利便性向上に係る要望受付フォーム」も、ほとんど知られていないという実態が明らかとなりました。こうした状況は、なぜ生じてしまうのでしょうか。
鉄則は「おかしいと思ったら、規定根拠を質問すること」だが…
本連載でも、おかしなLルールを押し付けられたときの考え方や対処法などを何度か取り上げてきましたが、何よりも大切なことは、「おかしいと思ったら行政の担当官に『その根拠規定は何ですか』と質問する」ということです。
当たり前のことですが、保険者は時代劇に登場するお代官様のような絶対権力者ではありません。あくまで法を執行するだけの存在です。指導や監査など、強い権限は与えられていますが、そうした行為のすべてに介護保険法や施行規則、運営基準等の根拠規定が必要となります。
居宅の7%近くが理不尽なⅬルールで処分対象に
ただ問題は、法などの規定があったとしても、その細かな解釈は各保険者が担っていること。残念ながら、首をかしげざるを得ないようなLルールの中には、担当官が深く考えず、法令の趣旨の確認もせずに提示しているものも少なくないと思えるのです(あくまで、筆者の経験に基づく感想ですが)。その結果、担当者によっては、その解釈を法の目指す方針から大きく捻じ曲げてしまうことがあります。
そのようなときこそ、先に提言した通り「根拠規定を確かめる」質問が必要なのです。ですが、保険者から「これが根拠規定です。そしてわが市ではこのような解釈です。以上!」と、ピシャリと決めつけられると、もう何も言えなくなってしまう…というケアマネさんが大半かと思います。
その現実を垣間見えるデータが、先のアンケートにありました。「制度上、どう考えても合理的ではないと思える理由で報酬返還などの行政処分を受けたことはありますか」という質問に対し、「ある」という答えが6.8%あったという結果です。行政は法の執行者ですから、本来誤った指導をしてはなりません。この数字は多すぎると言えるでしょう。
そして最大の問題は、どれほど理不尽な指導・処分であったとしても、事業所は泣き寝入りせざるを得ないという圧倒的な力関係です。理屈では行政が間違っていることがわかっていても、事業所としてこの先もこの地域でやっていく以上、行政に目を付けられるようなことはできない、と諦めてしまうのではないでしょうか。
これは事業者の立場に立ってみれば致し方ないことかもしれません。ですがそろそろ、事業者側もこの認識を変えていく時期に来ているのではないでしょうか。
繰り返しますが、行政に異議を唱えること、質問をすることは決して「逆らう」ことではありません。建前上、行政は事業所を「指導」する立場ですが、だからといって行政の方が偉いということは全くないのです。ただ、それぞれが社会において与えられた役割を果たしているに過ぎません。
理不尽な対応を求められた時、ケアマネ側が反論や意見を堂々と述べ、発信するようになれば、行政ももう少し襟を正すようになるのではないでしょうか。そうなれば、気まぐれなLルールも減り、結果としてご利用者とその家族が被る不利益や不便さも、少しは解消されるはずです。
「法廷」という選択肢だってある
それでも「どうせ結論は変わらないのだから無駄」と諦観しているケアマネも少なくないでしょう。ですが、それでも諦めてはいけません。
そして保険者に話し合いを求めても、一向に聞く耳を持たないというのならば、最後には法廷で争うという手段もあります。その実例について、来る6月23日正午の日本ケアマネジメント学会の研究大会のランチョンセミナーで紹介させていただく予定です。具体的には、大阪府寝屋川市を提訴し勝訴したケアマネ事業所の判例について解説しますが、その事業所の代表ケアマネの方は、「自治体もケアマネは、地域包括ケアシステムを支える両輪なのだから、本来協力し合っていかなければならない。そのためには私たちケアマネも声を上げる必要がある」と語っておられました。当日には、そのインタビュー映像を流しますので、ぜひ見に来て頂きたいと思います。
筆者も、介護弁護士としておかしなLルールとはこれからも向き合っていきます。共に頑張り、皆が支え合う地域包括ケアシステムを守っていきましょう。

- 外岡潤
- 1980年札幌生まれ。99年東京大学文科Ⅰ類入学、2005年に司法試験合格。07年弁護士登録(第二東京弁護士会)後、ブレークモア法律事務所、城山総合法律事務所を経て、09年4月法律事務所おかげさまを設立。09年8月ホームヘルパー2級取得。09年10月視覚障害者移動介護従業者(視覚ガイドヘルパー)取得。セミナー・講演などで専門的な話を分かりやすく、楽しく説明することを得意とし、特に独自の経験と論理に基づいた介護トラブルの回避に関するセミナーには定評がある。主な著書は『介護トラブル相談必携』(民事法研究会)、『介護トラブル対処法~外岡流3つの掟~』(メディカ出版)、『介護職員のためのリスクマネジメント養成講座』(レクシスネクシス・ジャパン)など。「弁護士 外岡 潤が教える介護トラブル解決チャンネル」も、運営中。
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