

小濱道博の介護経営よもやま話
ケアマネも要チェック!再び注目の保険外サービス
- 2024/07/31 09:00 配信
- 小濱道博の介護経営よもやま話
- 小濱道博
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介護保険外サービスが、介護業界内で再び注目されている。政府が6月21日に閣議決定した経済財政運営の指針「骨太の方針2024」で、「深刻化するビジネスケアラーへの対応も念頭に、介護保険外サービスの利用促進のため、自治体における柔軟な運用、適切なサービス選択や信頼性向上に向けた環境整備を図る」と記されたためだ。
保険外サービスが過去に大きく注目されたのは、2018年の介護保険制度改正時である。厚生労働省は同年9月28日付で、「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて」という通知を発出。これによって、保険外サービスの規制緩和措置が明確になった。
東京都豊島区においては当時、「混合介護」のモデル事業が行われ、通所サービスにおける保険外サービスの一環として、送迎費用を徴収した移動支援や同行援助の実施が検討された。保険外サービスが一層拡大されることが期待されたものの、介護業界が慢性的な人材不足に陥る中、保険外サービスに回す人手を確保できず、尻すぼみとなって現在に至っている。
保険外サービスはビジネスケアラー対策
冒頭の「骨太の方針2024」に話を戻したい。今回、「深刻化するビジネスケアラーへの対応も念頭に」との文言が盛り込まれた。
「ビジネスケアラー」とは、働きながら親などの介護をする人を言う。経済産業省は2030年、家族介護者のうちの4割に当たる318万人がビジネスケアラーになると予測し、介護離職や労働生産性の低下に伴う経済損失額は9兆円に上るとしている。つまり、仕事と介護を両立させるための手段として、改めて保険外サービスが脚光を浴びているのだ。
保険外サービスの大きな問題は、全額自己負担になることである。ただ、介護保険サービスは、事前にケアプランにサービスを位置付ける必要があるなど、緊急時に融通が利かない欠点がある。急な出張や夜の接待などで家にいることができない場合などに、保険外の訪問介護サービスがあると便利である。
ただし、前述したように、保険外サービスは費用負担がばかにならないため、使い過ぎると、日常生活に支障を来す恐もがある。今後は、国主導による管理機能も必要となるであろう。
今回の「骨太の方針2024」の閣議決定を受け、厚労省が今後どのような施策を講じるのか注目したい。
SOMPOとRIZAPの業務提携の意味
去る7月1日、SOMPOホールディングスとRIZAPグループが資本業務提携を締結し、東京都内で共同記者会見を開いた。
今後、SOMPOケアの介護保険サービスとRIZAPの保険外サービスがシームレスに提供される環境が構築されていくだろう。
例えば、SOMPOケアの利用者家族が、トレーニングジムのRIZAPやChocoZAP(チョコザップ)を特別価格で利用できる可能性もある。そうなれば、ビジネスケアラーである介護者の健康維持にもつながる。こうした動きが今後、保険外サービスの1つの形として広がっていくのではないだろうか。
現時点での保険外サービスの緩和措置まとめ
最後に、現時点における保険外サービスの緩和措置をまとめておこう。
前述した2018年の通知で厚労省は、以下の(1)~(4)については、介護保険サービスの通所介護とは明確に区分し、一定のルールを順守すれば、保険外サービスとして提供可能とした。
- (1)事業所内において、理美容に加え、巡回健診、予防接種を行うこと
- (2)利用者個人の希望により事業所から外出する際に、保険外サービスとして個別に同行支援を行うこと
- (3)物販、移動販売、レンタルサービス
- (4)買い物等代行サービス
これらを保険外サービスとして提供するための「一定のルール」とは、以下の6つである。
- 両サービスを明確に区分して、それぞれ文書で記録すること
- 利用者等に対して、あらかじめ運営規程や重要事項説明書で保険外サービスの内容等を詳細に説明し、同意を得ていること
- 通所介護の利用料とは別に、請求書などで費用を請求すること。通所介護の提供時間には保険外サービスの時間を含めないこと
- 保険外サービスを提供する事業者からの利益収受は禁止。例えば、予防注射を依頼した病院からのバックマージンの授受などは不可
- 消費者からの苦情・相談窓口の設置等の措置を講じること
- 外部事業者が保険外サービスを提供する場合、事故発生時の対応を明確化すること
なお、これらのルールは、通所サービスに適用されているものだ。訪問介護サービスについては、大きな緩和措置が無いまま、現在に至っており、「骨太の方針2024」の閣議決定により、規制緩和が期待される。

- 小濱道博
- 小濱介護経営事務所代表。株式会社ベストワン取締役。北海道札幌市出身。全国で介護事業の経営支援、コンプライアンス支援を手掛ける。介護経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。個別相談、個別指導も全国で実施。全国の介護保険課、介護関連の各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター等主催の講演会での講師実績も多数。C-MAS介護事業経営研究会・最高顧問、CS-SR一般社団法人医療介護経営研究会専務理事なども兼ねる。
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