“あるある”で終わらせない!失敗を生かすケアマネジメント

“引き継ぎができているアピール”を優先してしまった事例(1)

対人援助職が援助を行ううえで、対象者を理解するアセスメントは基本になります。これは学術的に学ぶ必要があり、私はスーパービジョンや研修などで、今も学習を続けていますが、どれだけアセスメントの大切さをわかっていても、失敗を招いてしまうことがあります。

今回お話させていただくのは、同じ事業所のケアマネジャーから引き継いだAさんのケースです。

Aさんを担当することになったのは、前任のケアマネが退職することになったためですが、実は、前任者が担当していた当時、すでにAさんの支援の内容について聞かされていました。

そのサービスを利用している背景まで把握していたので、すんなりと引き継ぐことができましたが、情報の伝達がしっかりと行われていたことに、ご利用者やご家族が安心していると思い込んでいた私は、最初の訪問の際、新規のご利用者ほど丁寧なアセスメントは行いませんでした。

アセスメントは、ケアマネの支援におけるいわば生命線です。「思い込み」や「決めつけ」による支援では、ご利用者の心身が不安定になってしまうことを、私はAさんの事例から学びました。

5年前にアルツハイマー型認知症に

ここで、前任のケアマネから聞いた情報と、私が実際に見て感じた内容をもとに、Aさんがどんな人なのかを整理したいと思います。

  • Aさん 女性、80歳。要介護2。
  • 既往歴:高血圧症。5年前にアルツハイマー型認知症の診断を受ける。
  • ADL:歩行、排泄、食事は自立。入浴は見守りが必要。電動自転車に乗ることができる。こぐスピードは速く、高齢者とは思えないほどの運動神経と体の軽やかさがある。
  • 性格:とても明るく、他人を気遣う優しい方。(例:他人が座る位置はおろか、椅子や座布団にまで配慮する)
  • 趣味:絵を描いたり、小物などを作ったりすること。自身の作品をセンス良く飾るので、自宅はカフェのようになっている。

元ヘルパー、「人の役に立ちたい」

元ヘルパーのAさんは、「人の役に立ちたい」という思いが強く、長女様も「ヘルパーの仕事は天職だった」とおっしゃっていました。前任のケアマネはこれに目を付け、デイ(認知症型)の食事を職員さんと一緒に作るプランを立てました。

Aさんのサービス内容だと、限度額をオーバーしてしまうので、週1、2回、特別にボランティアとしてもデイに行っていたようです。ただ、認知症が徐々に進行し、職員さんの指示が頻繁にないと家事もできなくなってからは、ボランティアとしては受け入れてもらえなくなったようです。

私は、「仕事がしたい」というAさんの気持ちの強さを、自分の目で何度も見ることになります。

ある日、外勤のためバイクで道路を走っていると、向こう側から、速いスピードで電動自転車をこぐ女性がやって来ました。Aさんでした。

私ははっとして、「Aさん!?」と呼び止めると、Aさんは自転車を降りて、「何?どうしたの?私のこと知っているの?」とおっしゃいました。

「3日前、Aさんの自宅で、長女さんも一緒におしゃべりをした山田です」と言うと、Aさんは思い出したかのように、「あー、山田さん!」と取り繕われました。

私が「どこへ行くのですか?」と尋ねると、「〇〇駅。駅前に兄がやっているお店があるから、そこで雇ってもらえるか聞きに行こうと思って!働かな、ご飯食べていけないからね!」と明るく、笑いながらおっしゃいました。

かなり速いスピードで駅へ向かって行くAさんを見て、私はすぐに長女様に連絡を入れました。

すると長女様は、「もうそのお店はないんです。でも、そう言って出かけていくことはよくあるので、大丈夫です。携帯電話にGPSもありますし」とおっしゃいました。その後、Aさんは道に迷うことなく、夕方に無事帰宅されたそうです。

区変でプランに家事や簡単な作業

認知症が進行してくると、Aさんは月に1回ペースで、デイの利用がない日に外出した際、道に迷って警察に保護されるようになりました。さらに日が長くなると、デイから帰宅した後も出かけるようになりました。

私は自宅訪問のたびに、「人の役に立つことが喜び」というAさんの性分を生かす機会がないか、長女様も交えて3人で考えました。

Aさんのサービス量が不足していたので、まず区分変更をしました。そして限度額いっぱいにサービスを入れました。

小規模多機能は、「ケアマネが変わるのが嫌」という長女様の反対で利用されませんでしたが、自宅でヘルパーと一緒に家事をしたり、ショートステイやデイで洗濯物を畳むなどの簡単な作業をしてもらったりするようにしました。

でも、Aさんは次第に、デイに行ったことも自宅でヘルパーと過ごしたことも記憶できなくなり、「誰も来てくれなくてさみしい…」と訴えるようになりました。

また、夜中に長女様の自宅のインターフォンを鳴らしたり、長女様に24時間電話をかけたりするようになり、長女様は疲労の色が隠せなくなってきました。

山田友紀
特別養護老人ホームやデイサービス、訪問介護、居宅介護支援の相談業務などに従事した後、2016年、京都市内でデイサービスなどを運営する株式会社「ふくなかまジャパン」の取締役に就任。2018年以降は、同市内にある居宅介護支援事業所「ふくなかま居宅介護支援センター」の管理者も務める。現在は、マネジメントや人材育成の講師を務めているほか、一般財団法人生涯学習開発財団が認定する「プロコーチ」としても活動している。

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