弁護士からの応援寄稿「知っておきたいトラブル事例と対応策」

どうする、態度に問題がある役所職員

ケアマネジャーにとって、保険者をはじめとする行政といい関係を保つことが理想であることは論を待ちません。しかし、中には役所の担当職員がどうしようもなく横柄だったり、感情的になり取り付く島がなかったりすることも…。お役人も人の子ですから、そういうことも時にはあるかもしれませんが、一事業所としてはどう対応すればよいでしょうか。

ケース 傲慢すぎる役所職員、どう対応したら…

◆担当しているご利用者
78歳男性。加齢に伴う筋力の低下で、もともと、歩行などはおぼつかない状態であった上、県営住宅に長らく一人暮らし。身寄りもなく、引きこもりがち。昨年、民生委員からの連絡がきっかけで、認知症を発症していることが判明。日常生活を送ることが難しくなり要介護認定の申請に至る。
◆相談者
30代の女性ケアマネ

ケアマネを軽く見て、でたらめな暴言を吐く自治体職員に頭を痛めています。
私の事業所に要介護認定審査を依頼され、私が担当者となり申請しました。過去に同じ状況の方が要介護1か要介護2の判定を得ていたことから、そのくらいの判定が出るものと考えていました。介護保険課からは30日過ぎても音沙汰がなく、40日経過してようやく結果が通知されましたが…。

実際に出た判定は要支援2。当然ながら、介護保険で使えるサービスは要介護1や要介護2より、大きく制限されてしまいます。

そこで、過去の別件での実績を携え、介護保険課に、なぜこのような判定となったのかについて尋ねに行きました。できれば認定審査をやり直してもらえればという期待も込めての訪問でした。

ところが、担当の役所職員は「なぜこうなったのかと言われても。主治医意見書や認定調査に基づき、認定審査が行われて出てきた結果です。正しい手順に従って出された結果ですからどうしようもありませんね」と上から目線で返答するのみ。それでも、と過去の事例を見せつつ理由を尋ねようとしたところ、「認定調査や認定審査に携わっている人は、お前より年上だ。年上の言うことは敬いなさい!黙りなさい!」と意味不明の一喝をされました。

全く理解不能の叱責に呆然としましたが、改めて気を取り直し、冷静を取り繕いつつ、再検討をお願いしたのですが、次に飛んできた言葉は。
「…いい加減にしてくれ、あんたらに金を払っているのはこっちなんだ!」
ひどく怒った様子で、話を打ち切られてしまいました。

規模の小さな自治体で、上層部はコネ入職の身内ばかりだから、そんな職員でも存在が許されているのでしょうか。実際、私以外のケアマネでも、同じような暴言を吐かれたという人がいます。ケアマネが暴言を吐かれるのは、まだ我慢できますが、そのいい加減な仕事がご利用者のサービスのあり方にまで悪影響をもたらしていると思うと、何とかしなければという気持ちになります。

このようなとき、自分に何ができるでしょうか。

A あまりにひどい対応のときは苦情申し立てを

残念なことに、常識を疑うような態度をとる役人は実際に存在し、しばしば被害が報告されています。
暴言や恫喝があまりにひどい場合は、「役所による市民へのハラスメント」といえます。役所が設置しているハラスメント相談窓口や、人事部などに苦情を申し立てましょう。「市民の声」などの苦情申立制度を利用する手もあります。
それでも役所から返答がないなど、らちが開かない場合は、市長に直接手紙を書き、名指しで当該職員の問題点を指摘し改善を求めます。
そうした申し入れの下準備として、実際の問題発言を録音しておきたいところです。

不意に怒鳴り出すような場合はとっさに録音機をオンにすることも難しいですが、そんなときは「落ち着いて一旦退出。録音準備した上で出直し、同じように興奮したところをしっかり録音する」ということが考えられます。

最近はカスタマーハラスメントを取り締まる目的で「庁舎内での録音禁止」とする動きが広がっています。ですが、正に職員によるハラスメントが起きているときは例外的に自らの身を守る正当防衛として、秘密録音も許容されます。品行方正であるべき役所職員がひどい口調で罵っている…とあれば、マスコミも興味を持つかもしれません。

やり過ぎは禁物ですが、飛んでもないことを口走って市民をいじめる不届き者も確かに存在するのですから。

この件、「ハラスメント」に該当するのか?

参考までに、本件では、どのように対応すべきかについて考えます。
まず「認定調査や認定審査に携わっている人は、お前より年上だ。年上の言うことは敬いなさい!黙りなさい!」「…いい加減にしてくれ、あんたらに金を払っているのはこっちなんだ!」といった発言は、ハラスメントに該当するのでしょうか。

いわゆる「パワハラ」は職場において優越的関係を背景としてなされるものであり、行政の事業所に対するハラスメントをパワハラと言い得るかは難しい、という現実があります。

もちろん、先の物言いは、社会通念に照らせば、感情を前面に出し過ぎとはいえるでしょう。また「お前」「あんたら」という表現も、失礼な物言いです。

しかし、その前のやり取りも考慮すると、当該職員は「一度出た認定調査結果は正規の手続(不服申し立て)によらなければ覆ることはないという前提のもと致し方ない旨を説明し、それでも理解を得られなかったことに腹を立てつい興奮してしまった」…と、見ることもできなくはありません。これが、もし相談をしたとたん、このような剣幕で怒鳴ったのであれば、ハラスメントと認定されやすいでしょう。しかし、何かしらのやり取りを経た上で出た言動であれば、前段となるその事実も考慮に入れなければなりません。

さらに言えば、認定結果に不満がある場合、ケアマネができることは不服申し立てか区分変更申請しかないことは、基本的な制度知識と思われます。相談者の方も、そのことは半ば承知の上で素朴に疑問に思ったことを尋ねられたのでしょう。しかし、その制度下では役所の回答は致し方ないところがあり、そこで諦めるか正規の手続を検討するということが、この場面では相応しかったといえるとも思われます。

こうした要素に鑑みれば、客観的にみて本件でハラスメントが明らかに成立しているとは言い難いのではないかと思われました。

ただし。前述したように感情的になることはパブリックサーバント(公僕)の在り方に反する不適切なものであり、以後自重するよう反省を促す必要があります。

組織のマネジメントというものは、まずは上層部が現場で起きていることを知ることから始まります。ハラスメントの存否は別として、本件について苦情申立を試みることも、市政を改善する良い選択肢であるといえるでしょう。

外岡潤
1980年札幌生まれ。99年東京大学文科Ⅰ類入学、2005年に司法試験合格。07年弁護士登録(第二東京弁護士会)後、ブレークモア法律事務所、城山総合法律事務所を経て、09年4月法律事務所おかげさまを設立。09年8月ホームヘルパー2級取得。09年10月視覚障害者移動介護従業者(視覚ガイドヘルパー)取得。セミナー・講演などで専門的な話を分かりやすく、楽しく説明することを得意とし、特に独自の経験と論理に基づいた介護トラブルの回避に関するセミナーには定評がある。主な著書は『介護トラブル相談必携』(民事法研究会)、『介護トラブル対処法~外岡流3つの掟~』(メディカ出版)、『介護職員のためのリスクマネジメント養成講座』(レクシスネクシス・ジャパン)など。「弁護士 外岡 潤が教える介護トラブル解決チャンネル」も、運営中。

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