弁護士からの応援寄稿「知っておきたいトラブル事例と対応策」
【特別回】どうする、どうなるケアマネ業務のグレーゾーン
- 2025/01/31 09:00 配信
- 弁護士からの応援寄稿「知っておきたいトラブル事例と対応策」
- 外岡潤
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昨年12月12日、厚生労働省の「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」が中間整理報告を公開しました。ケアマネジャーの数が全国的に減少している中で、「利用者に対して適切なケアマネジメントが提供されるよう、ケアマネジメントの質を確保しながら、ICT等を活用した業務負担軽減を推進しつつ、必要なケアマネジャーのなり手を確保していくことが喫緊の課題である」と述べられています。
さらに同報告は「利用者のために質の高いケアマネジメントを実現する観点から、ケアマネジャーが個々の利用者に対するケアマネジメント業務に注力することができるよう、現行のケアマネジャーの業務や地域の実情を踏まえつつ、ケアマネジャーの業務の在り方について、改めてその役割を整理するとともに、居宅介護支援事業所及び地域包括支援センターにおける主任介護支援専門員についても、その位置付けを整理した」と続け、いわゆるグレーゾーンも含め、ケアマネの業務を整理し、その対応も提言しました。

国のケアマネ業務の分類、姿勢は評価できるが…
この分類表を見て、ケアマネの皆様はどう思われたでしょうか。私としては、ケアマネの負担に注目し、少しでも軽減しようとする姿勢自体を評価することができると思います。そして、上段にある「利用者からの相談対応、関係機関との連絡調整、ケアプラン作成」を、ケアマネの本来業務とする点にも全く異存はありません。
疑問と課題その1-「書類作成」の有償対応に潜む危険性
しかし、そこから下を見ていくと様々な疑問が湧いてきます。
まず「②保険外サービスとして対応しうる業務」について。いわゆる自費サービスとしてケアマネが行って良い業務を指しますが、特に注意すべきなのは「書類作成」です。行政書士法第19条には「行政書士又は行政書士法人でない者は、業として第1条の2に規定する業務を行うことができない」という定めがあり、官公庁に提出する書類や権利義務に関する書類の作成を無資格者が有償で行うと1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。こうしたリスクを考慮した上で書類作成を挙げたのかは、はなはだ疑問です。
実際、筆者が見聞きした話でも、ケアマネが認知症の利用者のために後見制度の申立書を代筆したということがありましたが、これを対価を受けて行うことは違法となるため注意が必要です。なお無償であっても、専門分野でありケアマネが手を出すべきではありません。
疑問と課題その2-自費サービス?「救急車同乗」
同じく②保険外サービスとして対応しうる業務」、つまる自費サービスとされるもので、「救急搬送時の同乗」も疑問です。利用者が救急搬送されるときは非常事態ですから、悠長に「同乗するときは1回1000円かかります」などと説明し同意を得ることなどできませんし、利用者の命に関わる一刻を争うときにお金を請求しようと考えるケアマネなどそもそも少ないでしょう。現実問題として考えても、「お金が貰えないなら同乗しない」など、利用者を経済力により選別する対応に繋がりかねません。
以上の理由から、救急車への同乗ついては「③他機関につなぐべき業務」に分類すべきではないかと考えます。
ちなみに利用者の救急搬送時に必要なものは、その利用者の治療に必要となる情報です。そうした情報を申し送りカードなどにまとめておけば、ケアマネが救急車に同乗する必要性は、ほとんどなくなるのではないでしょうか。
疑問と課題その3-「悪徳業者」を排除する工夫が不可欠、生活必需品の調達
「③他機関につなぐべき業務」に分類されている事はいずれもその通りであり、当たり前の話ではあるのですが「これらはケアマネの業務ではない」とはっきり確認したことは進歩であるといえるでしょう。
しかし、それでも問題はあります。例えば「入院中・入所中の着替えや必需品の調達」といった、こまごまとした日常の雑務を、具体的にどこに委託することができるかについては、リサーチや資金源の確保、ルールの制定が課題となります。この業務の対応例には「自費サービスやサポート事業者」とありますが、完全に民間業者間の自由な競争に委ねると価格破壊が起きかねません。もしかすると、逆に高額に設定し認知症の利用者からお金を巻き上げる輩も出てくる懸念があります。
どこまで規制するかは難しいところですが、少なくとも、自費サービスを促進する際は利用者が詐欺まがいの業者の餌食にならないよう細心の配慮が不可欠でしょう。着替えや必需品の調達を請け負った業者が「悪徳」であれば、これを機にどんどん取り入り、ありとあらゆる業務を法外な価格で引き受け、大金をせしめようとするかもしれません。
着替えや必需品の調達など、生活に必須となる日常雑務については、対応例の上段にあるように「社会福祉協議会の協力を仰ぐ」ことが理想であると考えます。
ただ、そうなると、そもそも社協にそのような業務を引き受ける余力があるのかという問題が出てきます。また、シルバー人材センターなど、なかばボランティアのような活動だけでは心もとないかもしれません。こうした雑務を引き受ける人に支払う報酬を上乗せするなど、予算配分の見直しもいずれ必要となるのではないでしょうか。
繰り返しになりますが、今までのケアマネへの「おんぶに抱っこ」状態から脱却するきっかけができたことは喜ばしいことです。しかし、ケアマネの背中から下ろした業務はどこに振ればいいのかという現実的な代替策を並行して検討しないことには、単なる掛け声で終わるおそれがあります。国や自治体が、この代替策を継続して真剣に検討し続けることによってこそ、全国のケアマネは真の意味で、本来業務に注力できるようになるでしょう。

- 外岡潤
- 1980年札幌生まれ。99年東京大学文科Ⅰ類入学、2005年に司法試験合格。07年弁護士登録(第二東京弁護士会)後、ブレークモア法律事務所、城山総合法律事務所を経て、09年4月法律事務所おかげさまを設立。09年8月ホームヘルパー2級取得。09年10月視覚障害者移動介護従業者(視覚ガイドヘルパー)取得。セミナー・講演などで専門的な話を分かりやすく、楽しく説明することを得意とし、特に独自の経験と論理に基づいた介護トラブルの回避に関するセミナーには定評がある。主な著書は『介護トラブル相談必携』(民事法研究会)、『介護トラブル対処法~外岡流3つの掟~』(メディカ出版)、『介護職員のためのリスクマネジメント養成講座』(レクシスネクシス・ジャパン)など。「弁護士 外岡 潤が教える介護トラブル解決チャンネル」も、運営中。
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