一人ケアマネの歩き方~独立を目指すケアマネのための実践ガイド~

独立型居宅運営のメリット・デメリットとは?

「いつかはケアマネジャーとして独立したい」―。こんな思いを抱いているケアマネジャーの皆さんも多いのではないでしょうか。本連載ではそのような皆さんに向けて、居宅介護支援事業所の独立開業に向けた具体的なステップや経営のリアル、さらには独立後の生存戦略まで、“生粋の一人ケアマネ”である筆者の経験を交えながらお伝えしていきます。

前回は、私が独立型ケアマネを目指した理由についてお話ししました。

公正中立な支援や自由な働き方の実現を目指し、2015年に独立をしましたが、これまで「失敗だった」「また雇われケアマネに戻りたい」と思ったことは一度もありません。

とはいえ、全てのケアマネジャーにとって独立が最良の選択肢だとは限りません。独立には多くの魅力がある一方で、課題や難しさもあるからです。

そこで今回は、私の経験をもとに、独立型の居宅介護支援事業所の運営におけるメリットとデメリットについてお伝えします。独立を考えている皆さんにとって、判断材料の一つになれば幸いです。

独立型居宅のメリット3つ

独立型居宅介護支援事業所には数多くの魅力があります。ここでは、私が実感しているメリットを3つご紹介します。

1. 自由な働き方が可能

居宅介護支援事業所は、最も自由な働き方ができる介護サービスだと感じています。一人で事業を立ち上げ、運営することができる介護サービスは他にはありません。さらに、設備基準等を満たせば、自宅を事務所にすることができる上、ICTツールを上手に活用すれば、場所に縛られず働くこともできます。

私の事務所は、自宅とは別の場所に構えていますが、クラウド型の介護ソフトやクラウドストレージ等の活用によって、自宅や外出先でも業務ができるようになり、働き方の自由度が大きく広がりました。

2. 意思決定が迅速

独立型居宅介護支援事業所(特に一人ケアマネ)の場合、自分自身が経営者として意思決定を行います。大きな組織では、現場のケアマネジャーが「便利そうなツールを導入したい」と考えても、上司や複数の部署の承認を得なければならず、最終的に実現できないケースも少なくありません。

その点、独立型ケアマネであれば、「これは良さそうだ」と思ったら、即座に試すことができます。効果があれば本格的に導入し、合わなければ中止すれば良いのです。

こうした試行錯誤を自由に繰り返せるのが、独立型ケアマネの大きな醍醐味です。私はそのプロセスを通じて、業務効率化と支援の質を高めることができました。

3. 人間関係に悩まされない

仕事の悩みの多くは、職場の人間関係に起因するものではないでしょうか?

私自身、介護職や雇われケアマネとして働いていた頃は、同僚や上司との人間関係に悩むことが多く、悶々とした日々を過ごしていました。しかし独立したことで、そうした職場の人間関係から解放され、心身ともに余裕を持って業務に取り組めるようになりました。

もちろん独立後も、利用者やその家族、多職種との関係性は欠かせませんが、それらの関係構築は、ケアマネジャーの業務の要であり、やりがいを感じる部分でもあります。こうした本質的な業務に集中できるようになったことは、雇われケアマネ時代との大きな違いであると実感しています。

独立型居宅のデメリットとその解決策

ここまで、独立型の居宅介護支援事業所の運営におけるメリットについてお伝えしてきましたが、もちろん良いことばかりではありません。独立にはデメリットや課題も存在し、それをしっかりと理解しておくことが重要です。

ここからは、私が実際に感じたデメリットとその解決策をお伝えします。

1. 身近に相談できる人がいない

先ほど、職場の人間関係の悩みから解放されることが、独立型の居宅介護支援事業所の運営における大きなメリットであるとお伝えしました。しかし、一人で働いていると、時に孤独を感じる場面もあります。特に、いわゆる「困難ケース」に直面した際、事業所内に相談相手がいないため、悩みを抱え込んでしまいがちです。

こうした状況を防ぐために、私は地域のケアマネジャー同士がつながるネットワークづくりに取り組んでいます。具体的には、虐待防止委員会やICTツール活用の勉強会等を地域で開催しています。

独立しても、地域とのつながりを大切にすることで、支え合える仲間を見つけることができます。皆さんも積極的に地域と関わり、「事業所内では一人でも、地域の中では一人じゃない」という環境をつくっていきましょう。

2. 本業以外でやることが多い

独立すると、ケアマネ業務だけでなく、経費計算や決算書の作成、法人税の納付など、これまで経験のなかったバックオフィス業務も担う必要があります。これらは事業運営に欠かせないものですが、本業と並行して行うとなると大きな負担になります。全て一人で抱え込むのではなく、外注を検討したり、ITツールを活用したりすることで、業務の効率化を図っていきましょう。

例えば、会計ソフトを導入すれば、日々の経費管理や決算業務をスムーズに行うことができ、業務負担を軽減できます。

また、経営者として最低限の会計知識を持っておくことも大切です。私自身、独立後に簿記3級の資格を取得しました。税理士に経理業務を依頼する場面でも、簿記の基礎知識があることで、スムーズに連携を取ることができ、経営判断をより的確に行えるようになります。

独立すれば、本業以外の業務にも向き合わなければなりませんが、工夫次第で負担を減らすことができます。効率的な経営を意識しながら、ケアマネ業務に集中できる環境を整えていきましょう。

3. 将来への不安が大きい

独立型の居宅介護支援事業所の運営は、「ハイリスク・ハイリターン」だと感じています。

一人ケアマネであれば、自分の努力次第で事業所の収入を増やすことができ、雇われケアマネの頃よりも収入を大きく伸ばせる可能性があります。その一方で、病気やケガで業務を続けられなくなった場合、担当ケースを外部へ引き渡さざるを得ない状況に陥ることも想定され、大幅な収入減となるリスクも抱えています。

さらに、居宅のケアマネジャーを取り巻く状況は年々厳しさを増しており、業務範囲の拡大や処遇改善の現状などを例に取っても、将来的な経営の不安要素は尽きません。

そうしたリスクを考えると、独立型ケアマネは、介護報酬だけに依存しない働き方を模索する必要があると考えます。この「独立型ケアマネの多様な働き方」については、今後の連載で詳しくお伝えしていきます。

次回は「独立型一人ケアマネのリアルな収支」

今回は、独立型の居宅介護支援事業所の運営におけるメリットとデメリットについてお伝えしました。これから独立を考えているケアマネの皆さんは、お伝えした内容を参考にしながら、独立後の働き方を具体的にイメージしていただければと思います。

次回のテーマは「独立型一人ケアマネのリアルな収支」です。独立型ケアマネの収益構造について、リアルな数字を交えながら詳しく解説していきます。ぜひご期待ください!

ヒトケア
2012年にケアマネジャーとしてのキャリアをスタート。2015年には居宅介護支援事業所を開業し、現在も「一人ケアマネ」として活動している。ケアマネ歴12年以上の経験を基に、業務効率化や居宅介護支援事業所の立ち上げノウハウを発信するブログ「ヒトケア(一人ケアマネ)の仕事術」を運営。NPO法人タダカヨが運営する介護従事者向けオンラインPCスクール「タダスク」の講師も務めている。

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