

小濱道博の介護経営よもやま話
「2040年問題」も影響、次期制度改正の審議の注目点
- 2025/03/31 09:00 配信
- 小濱道博の介護経営よもやま話
- 小濱道博
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「2040年問題」が15年後に迫る中、介護保険制度の維持と改革は喫緊の課題となっている。
厚生労働省は、「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方検討会」と、社会保障審議会介護保険部会において、2027年度の介護保険制度改正に向けた審議をスタートさせ、制度の持続可能性を確保するための具体策の検討に入った。
今後の社会保障制度の行方を左右するこれらの議論は、単なる制度改革にとどまらず、日本社会全体のあり方に大きな影響を与えるものである。今回はひと足早く、審議の注目点について解説したい。
地域ごとの需給バランスをどう調整するか
2040年には、団塊ジュニア世代が65歳以上に達し、高齢者人口がピークを迎えるが、より深刻なのは、85歳以上の高齢者が激増することである。
この年齢層は要介護認定率が高く、医療・介護サービスの需要が爆発的に増加することが見込まれるため、このままでは財源の確保が追いつかず、制度そのものが破綻しかねない状況にある。この危機を打開するため、厚労省は介護保険制度の抜本的な見直しを進めている。
介護事業者はこれから、利用者が本格的に拡大する、いわば成長期に突入するが、これに反比例するかのように職員不足が顕著になっていく。
前述した「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方検討会」では、地域ごとの介護サービスの需給バランスをどのように調整するかが議題の中心となっている。
特に都市部と地方においては、高齢者の生活環境の多様化や介護資源の偏在が顕著であり、これに対応する新たな制度設計が求められる。
都市部では、単身高齢者や共働き家庭の増加により、訪問介護や在宅医療の需要が急増することが予測される。このため厚労省は、ICTや介護ロボットの導入を進めることで、限られた人材で効率的にサービスを提供できる仕組みを整備する方針を示している。
一方、若年層の人口減少が進む地方では、介護人材の確保が困難になりつつある。今後、地域包括ケアシステムをさらに強化し、住民同士の支え合いを促進するための仕組みづくりが必要であろう。
ケアマネの処遇改善なども大テーマに浮上
同検討会では、介護現場の労働環境の改善も重要な議題となっている。介護職員の給与アップだけでなく、研修や資格取得に関する支援の充実策も検討され、ケアマネジャーの働き方改革や処遇改善も大きなテーマの一つとして浮上している。
また併せて、外国人労働者の受け入れ拡大についても議論されており、現在、訪問介護への対象拡大を含めた特定技能制度の見直しや、日本語教育支援の強化などの取り組みが進められている。
さらに、介護サービスの効率化に向けたテクノロジー活用の推進も大きなテーマの一つだ。
現在、介護ロボットや見守りシステムの導入、AIを活用したケアプラン作成支援、電子記録の統合などの取り組みが進められている。特に、夜間の見守り業務をICT化することで、職員の負担を軽減するとともに、限られた人材をより高度なケアに集中させるための試みが進められている。
また、医療・介護分野における訪問サービスの効率化を図るため、オンライン診療や遠隔モニタリングを活用した連携強化の動きも加速している。このほか大分県などでは、介護DXの早期実現に向けたペーパレス化に関するモデル事業も行われている。
次の報酬改定は決して楽観できない
一方、社会保障審議会介護保険部会では、2027年度の介護保険制度改正に向けた財源問題が議論されている。
現在、介護保険制度の財源は、国と地方自治体の公費(税金)と、被保険者が支払う保険料によって賄われているが、高齢化の進行に伴い、現行のままでは制度の維持が困難になると予測されている。
このため同部会では、公費負担の拡大や保険料負担の見直しが検討されており、特に、高所得者層における自己負担割合の引き上げや、資産課税の強化といった案が議論される。
加えて、介護報酬の見直しを進め、効率的なサービスの提供を促す仕組みも検討される。
こうした動きを考えると、次期介護報酬改定は決して楽観できない。
同部会でも、地域ごとの「介護格差」の是正が大きな課題として取り上げられており、介護保険外サービスを含めた民間事業者のさらなる参入促進など、多様な介護サービスの提供を推進する施策も検討される。
いまでも、都市部は介護施設が充実しているが、地方は介護サービスの提供が困難な地域が多い。これを解消するため、介護サービスの広域連携、移動支援の強化、そして自治体間の協力体制の拡充が求められる。
抜本改革は不可欠 事業者も変化を
介護保険制度の持続可能性を確保するためには、抜本的な改革が不可欠である。
財源の確保に関しては、新たな財政スキームの導入が必要だ。例えば、健康寿命の延伸に向けた予防策を強化し、要介護者の増加を抑制することが重要である。
このためには、健康管理プログラムや地域包括ケアシステムのさらなる拡充が求められる。
加えて、ICTやロボット技術の導入で介護の効率化を進め、限られた人材でより多くの高齢者に対応できる体制を整える必要がある。
介護人材の確保については、引き続き処遇改善を進めるとともに、介護職員の社会的評価を高めることが不可欠である。
このためには、介護職員のキャリアパスの明確化や、介護に関する専門資格の整備に加え、外国人労働者の受け入れ拡大に際しては、単なる労働力の補てんではなく、長期的な定着支援が重要となる。
これらの改革を着実に進めることで、日本の介護保険制度は、新たな時代に対応できる持続可能な仕組みへと進化するであろう。
新時代に向けた介護保険制度改革は始まったばかりである。介護事業者は、これまでの既得権にしがみつくのではなく、自らも変化することが求められている。今後も、次期改正に向けた審議に注目してほしい。

- 小濱道博
- 小濱介護経営事務所代表。株式会社ベストワン取締役。北海道札幌市出身。全国で介護事業の経営支援、コンプライアンス支援を手掛ける。介護経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。個別相談、個別指導も全国で実施。全国の介護保険課、介護関連の各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター等主催の講演会での講師実績も多数。C-MAS介護事業経営研究会・最高顧問、CS-SR一般社団法人医療介護経営研究会専務理事なども兼ねる。
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