“ケアマネ芸人”、ノン老いる小林の介護・言いたい放題“ケアマネ芸人”、ノン老いる小林の介護・言いたい放題

“ケアマネ芸人”、ノン老いる小林の介護・言いたい放題

あの世への”ご挨拶“もケアマネの役目?夏の怖い話…

厚生労働省ではなく、「幸生老道笑(こうせいろうどうしょう)」(幸せに生きる老いの道は笑いにあり!)を座右の銘にしている“ケアマネ芸人”こと、ノン老いる小林です!

全国のケアマネジャーの皆様、今日もご利用者からの電話対応、お疲れ様です。外は灼熱地獄、事務所は「電話地獄」と、ケアマネの心休まる場所がない時期がやって来ました…。

夏と言えば…、“階段話“!そうそう、手すりをつけなくちゃ…(こらっ!)。
と言うことで、今回は、ノン老いるが体験した怖い話で涼んでください。

始まりはヘルパーからの一本の電話

ケアマネという仕事は時折、この世とあの世の“境目”を踏むことがあります。

あの家もそうでした。

蝉の鳴き声が騒がしい、蒸し暑い夏の午後、ヘルパーさんから一本の電話がありました。

「すぐ来てください」。

向かったそのお宅は、昭和で時間が止まったような家でした。玄関扉の前に広がっていたのは、手入れもされてない荒れ果てた庭の草。

そこに足を踏み入れた瞬間、ブワッ…。

湧き上がってきた蚊の大群の、鈍い羽音が聞こえてきました。まるで私の侵入を拒むかのように、無数の針に皮膚が突き立てられます。

「こんにちは!お邪魔します」。

玄関扉を開けると、今度は肺の奥に、冷たい“何か”が入り込んできました。その空間には湿気ではない、独特の“淀み”がありました。

突然止まった掃除機…その理由は?

ご利用者の女性は90代。背筋は折れ曲がっていますが、眼光は鋭く、えぐるように私の瞳を見詰めてきます。

女性が、背後にある仏間のそのふすまを開けた瞬間の出来事でした。

ギィ…、ギィ……、ギィ………。

誰も歩いていないのに、床がきしむ音が聞こえたのです。それは、私の存在に気づいた“何か”が、こちらに迫ってくる足音のようでした。そして、首筋には誰かの息が…。背中に浮いた汗が、スッと引いていきました。

私の不安は確信に変わりました。

(…ここ、何かいる…)

こう思った瞬間、部屋の奥から笑い声が聞こえた気がしました。

「きゃー!」。

すると突然、ヘルパーさんが叫び声を上げました。急いで駆けつけると、「掃除機が突然止まりました…」とぽつり。電気が止まり、掃除機が動かなくなったようです。

ブレーカーを探していると、ご利用者が無表情のまま、こうおっしゃいました。

「そこにあるだろう」。

ご利用者の指差す先にあったのは、白磁の、異様に細長い“何か”でした。それは、人の骨を模したような、奇妙な形をしていました。私が触れた瞬間、火花が散り、掃除機は再び動き出しました。

ところが、しばらくすると、今度は台所から大きな物音が…。

どうやら、ヘルパーさんが持ち上げたポットの取っ手が砕け落ちたようです。煮えたぎるお湯が飛び散り、ヘルパーさんは大やけどを負う寸前でした。

このポットは、寿命をとうに過ぎた“生きた化石”でしたが、ご利用者は「壊したのはアンタたちだ。弁償しな!」とおっしゃって、責任を押し付けてきました。

私はご家族に電話で状況を説明し、その場はなんとか収まりました。

ところが、これがご利用者の気に障ったのか、その日から地獄が始まったのです…。

ご利用者の眼光はさらに鋭くなり、訪問のたび、ナイフのように私を突き刺してきました。

ギィ…、ギィ……、ギィ………。

仏間の前を通るたび、地べたを這いずる者たちのように“鳴く”床の音。ふと見上げると、仏間にある遺影が、ほんのわずかに角度を変えて笑っていました…。

しばらくして、ご利用者は天国に召されました。

“蚊の儀式”は亡き者の思い?

蝉の騒がしい鳴き声を聞くと、あの日のことを思い出すことがあります。

玄関にたどり着く前に繰り広げられる“蚊の儀式”…。あの群れは虫ではなく、この世に取り残された亡き者の思いが渦巻いていたのかもしれません。

人間が死を迎える時、何を感じるのかは、もちろんご本人にしかわかりません。

感謝、安らぎ、満足、許し、恨み、後悔、怒り、無念、怨念、不安、執着、悲しみ…。ケアマネという仕事は時に、これらの感情と対峙しなければならない場面があります。私達は、あの世に旅立つ方に”ご挨拶する役目”も負っているのではないでしょうか。

いかがでしたか?今回は、特にオチはありません(笑)。

今日も、水分を補給して頑張りましょう!

ノン老いる小林
1964年静岡市生まれ。大学卒業後、高校の英語教師として働いていたが、40歳という人生の節目を間近に控えた38歳の時、介護保険制度の創設を好機と捉えて転職。その後、介護施設を中心に経営支援などを行う。2013年にケアマネジャー、19年に主任ケアマネジャー取得。現在、静岡市内で居宅介護支援事業所「ケアプランはるな」を運営する株式会社はるな代表取締役。介護技能実習評価試験評価者のほか、セーフティマネジメントなど介護研修の講師も務めている。東京演芸協会理事。出演情報は同協会のホームページ

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