生成AI×編集部で紡ぐショートストーリー

【ケアマネ小説】離婚のカタチ、結婚の形・5

文書生成AIを活用し、ケアマネジメント・オンライン編集部が作成した「ケアマネ小説」。今回は、夫との離婚を考えている、施設のケアマネジャーさんのストーリーです。

※【この小説の前編】
【ケアマネ小説】離婚のカタチ、結婚の形・1
【ケアマネ小説】離婚のカタチ、結婚の形・2
【ケアマネ小説】離婚のカタチ、結婚の形・3
【ケアマネ小説】離婚のカタチ、結婚の形・4

離婚届を正さんに渡した後、どんな道筋で事業所まで戻ったのだろう。そもそも、帰り際、正さんに、きちんと挨拶できただろうか―。

歯を食いしばって離婚届を見つめ、自分に言い聞かせるように、その書類を役所に提出するとつぶやく正さん。正視するのもつらくなるような悄然とした姿にいたたまれなくなった私は、逃げるように、正さんの家を後にしたのだった。

自席に戻った私に、足音が近づいて来る。いつも通りの嫌らしい笑みを浮かべた施設長が、私の横に立ち、正さんの様子を聞いてきた。

(本当は2人には何の関心もないくせに…)

その反発が、思わぬ返答を私の口から吐き出させた。

「離婚届けはお渡ししました。でも、二人は本当の意味で、離婚するわけではありません」

そう言い切る私に、施設長は不思議そうな顔をした。

「補足給付を得るために離婚するんでしょ?ぶっちゃけて言えば、『食費などの支払いがちょっと苦しい』と正さんが言ってきたものだから、私がこのアイディアを提案したのですよ。そして正さんも、そのメリットを理解され、離婚への準備を始めたのです」

なるほど、すべてに得心が行った。弘美さんと正さんであれば、そもそも離婚という選択肢が、出て来ること自体が不自然なのだ。

「安心してください。離婚届そのものは、明日にも提出されるそうですよ」
「ああ、そうですか。それなら結構。もう。もって回ったような言い方はしないでくださいよぉ」

馴れ馴れしい言葉遣いが気色悪い。すぐに弘美さんに報告すると言い残し、事務室を後にした。これ以上、ヤツと同じ空間にいれば、たちまち「ところで、今夜、食事でも♪」などと、倫なき誘いを受けることは、間違いない。

3号室に行くと、「お疲れ様。離婚届、送ってくれましたか?」と元気を取り戻した弘美さんが出迎えてくれた。

私は正直に伝えた。弘美さんが涙を流したことを聞いた正さんの様子も。そして、それでも、正さんが離婚の手続きを進める決意は揺るがなかったことも。

「正さんは仰っていました。『この緑色の書類を出すことで、私たちの思い出が消え去るわけでもなければ、未来永劫、逢えなくなるわけでもない。同じ墓に入る、という約束が果たせなくなるわけでもないのだから』と」 「そう…。わざわざ、ありがとう、琴美さん」

弘美さんは、深く頭を下げた。そして、問いかけてきた。

「私たち、離婚しなかった方がよかったのかしら…」

答えることはできない。少なくとも今の私には。

「ごめんなさい…私では、弘美さんのその問いに答えられません」
「どうして?あなたも、ご結婚されているのだから、わかるでしょ、夫婦のこと」

離婚という言葉を聞くと、どうしても思考が止まってしまい、感情が崩れそうになる。答えるどころか、泣かないようにするのが精いっぱい。同じ答えを繰り返すこと以外、できることがない。

「ごめんなさい。今の私では、弘美さんの問いに答えられないんです」
「そう…。じゃあ仕事が終わってから、改めて談話室で話をすることは、できる?」
「いや、そういうわけには…」
「お願いよ!仕事外のお願いになってしまうけど。年の離れた友人から相談を受けると思って」

弘美さんのお願いを私は受け入れた。「年上の女性に、そこまで懇願されて断るわけにはいきません」。業後に利用者と話をすることについて施設長に報告した時、そんなふうに理由を説明した。

だが、本当はそうではない。この人にこそ、今の私の苦しみを聞いてもらいたい。そう思ってしまったからこそ、私は弘美さんの願いを受け入れたのだ。

はいはい、わかりました。まあ、あまり長くならないようにね―。弘美さん夫婦の絆には全く関心のない施設長は、投げやりに、そして苛立ちながら、私が業後にご利用者と会話することを了承した。

一瞬、施設長は蛇のようなまなざしで私を睨み据えた。

(上司の誘いはことごとく断る癖に、金のために形だけの離婚しようという利用者の相談には乗るだと…?)

冷たい視線は、邪な欲望に加えて、屈折した「怒り」をも宿していた。

その日、施設長は私を流し見て来ることはなかった。代わりに、さきほどのような蛇のような冷たい視線を、事あるごとに投げつけてきた。そのたびに、流し見られた時に感じたものとは異質の、凍えるような悪寒が背筋にざわついた。

終業までの時間が、いつもずっと長く感じる。定時になったと同時に「お疲れ様でした」と吐き捨て、逃げるように事務所を後にしたが、部屋を出る際にも、背中に冷え切った視線が突き刺さった。

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