生成AI×編集部で紡ぐショートストーリー

【ケアマネ小説】離婚のカタチ、結婚の形・7

文書生成AIを活用し、ケアマネジメント・オンライン編集部が作成した「ケアマネ小説」。今回は、夫との離婚を考えている、施設のケアマネジャーさんのストーリーです。

※【この小説の前編】
【ケアマネ小説】離婚のカタチ、結婚の形・6

弘美さんからのアドバイスを受けたその日の夜。私は、わかりやすい不倫の証拠の数々を並べたテーブルの横に座り、帰宅した直人を出迎えた。

「言いたいこと、聞きたいことは、わかるわね」
「…うん」

直人は、黙って私の向かい側の椅子に腰を下ろした。その目にも表情にも、動揺の影はない。

その平穏さと冷たさが、私の精神の均衡を破壊してしまった。

気づけば、証拠の写真を掴み、直人に突きつけながら、なぜ、こんな破廉恥なことを続けたのか、と激しい言葉で問い詰め続ける私がそこにいた。しかし、いくら問い詰めても、激しくののしっても、直人は、うつむいたまま、答えようとしない。

「この写真の人、銀行の後輩でしょ?信頼第一のバンカーが、それも既婚者が、手近な後輩に手を出すなんて、どういう鬼畜よ?せめて、鬼畜に身を堕とした理由くらい、いいなさいよ!!」

そこまで罵倒され、ようやく直人は口を開いた。

「…好き、だから」

―それが答えだというなら、もう何も聞くまい。いや、何を聞いても意味はない。

「わかったわ。もういい。離婚してください」

離婚届を渡された直人は、拍子抜けするほどあっさりとその書類に名前を書き、捺印した。その口元は、わずかに微笑んでいるようにすら見えた。

(ことの重大さを理解しているのか、この男は…)

ダブルワークだったこともあり、マンションのローンは完済している。購入した時は5,000万円ほどだったが、今、売却すると4000万円ほどになるらしい。頭金の支払いが直人だったことなども含め、いろいろ面倒な計算はあるが、まあ、だいたい1800万円ほどが私への分与分となるそうだ。

そのほか、結婚後に蓄えた貯金は1200万円ほどあり、この半分=600万円が私に分与される。

その上で、直人は私に慰謝料を支払わなければならない。弁護士によれば、100万円くらいは取れるだろう、とのことだった。

私は、これらの事実を淡々と直人に説明した上で、これみよがしに録音機に電源を入れ、改めて確認した。

「この離婚、あなたが有責配偶者になりますから。慰謝料は支払ってもらいます」
「当然です」
「あなたの不倫のパートナーにも、慰謝料を請求します。弁護士から連絡が行く点、伝えておいてください」
「はい」
「このマンションはあなたの名義ですから、私が出ていきます。もう荷物まとめてあります。引っ越し業者は来週にも来ると思います。それまで、しばらく置かせてください。業者への支払いは直人が行ってください」
「もちろんです」

畳みかけるように突き付けた言葉にも要求にも、うつむいたまま、ごく冷静に即答し続ける直人。とにもかくにも、この男は、私と一刻も早く、円満に離婚したいのだろう。

もう話すべきことは何もない。

「では、これで私は出ていきます。今後の連絡は弁護士を通して行いましょう」

はじめて直人が顔を上げ、私を見た。あの夜の、子犬のような眼差しで私を見つめた。

「…なによ」
「そうだよね。わかりました。あの…最後に一つだけお願いがあります」
「なに?」
「ギュッ、って、させてください」

いまさら、この男に抱擁される?!ありえるはずがない。それでも、私は直人の懇願を断り切れなかった。

(この男への未練が残っていた、ということ?)

不実な男の腕に、だまって身を委ねながら自問する。

直人の腕が私の背中に回り、ゆるやかに私を締め付けた。ほとんど、条件反射のように私も直人の背中に手を回した。手のひらと腕に、直人の背骨や肋骨の感触がはっきりと伝わった。

「…直人、やせた?」

弾かれたように、直人は私から離れた。

「最後にありがとう。無理を言って、ごめんね。これからの人生、琴美が、新しい幸せをつかむことを祈っています」

直人は、深々と頭を下げながら、追い出すように、私を部屋から送り出した。

別れ際の最後の一言が、釣り針のように心に刺さり、抜けない。ふと、首筋に温かさを感じた。私を抱擁したあの時、直人は涙を流していたらしい。

(なぜ、最後に泣くの。なぜ、最後に私の幸せを祈るの、直人)

私が、その答えを知る事ができたのは、それから半年後のことだった。

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