

小濱道博の介護経営よもやま話
ケアマネの処遇改善加算はケアプラン有料化次第?
- 2025/09/29 09:00 配信
- 小濱道博の介護経営よもやま話
- 小濱道博
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来年度の介護職員等処遇改善加算の見直しが現実味を帯び、社会保障審議会介護給付費分科会では、居宅介護支援の「加算創設」を求める声も出始めている。
今回は、介護職員等処遇改善加算の見直しの背景や今後の方向性などについて解説したい。
加算見直しの背景と加速する賃上げの動き
昨年度の介護報酬改定に伴い、それまで3つに分かれていた処遇改善関連の加算が介護職員等処遇改善加算に一本化された。
新たな加算は、サービスごとに4段階の加算率が定められており、1カ月の総請求単位数に加算率を掛けて請求できる。加算率には、介護職の基本給引き上げのための原資として、昨年度分は2.5%、今年度分は2.0%が含まれていた。
来年度以降の加算率については、「実態把握を踏まえて検討する」として先送りされていたが、今年6月に閣議決定された経済財政運営の基本指針「骨太の方針2025」において、医療・介護分野の「公定価格の引き上げによる処遇改善」が明記されたことで、来年度の加算引き上げはほぼ確実となった。
だが、最低賃金の引き上げが介護事業所の経営を圧迫している現状から、今年度中の引き上げを求める声も出ている。
背景には、介護業界が抱える深刻な人材不足と他産業との賃金格差がある。
一般産業では平均5.25%の賃上げが行われる一方、介護職の処遇改善による賃上げは2.5%にとどまり、この差は人材確保の大きな足かせとなっている。また、介護職の有効求人倍率は4.8倍に達し、特に訪問介護のヘルパーは15倍という異常な数値を示している。来年は25万人、2040年には57万人のヘルパーの不足が予測されているにもかかわらずだ。
加算見直しで生産性向上の要件厳格化も
来年度の介護職員等処遇改善加算の見直しでは、加算率のさらなる引き上げが期待される一方で、生産性向上への取り組みがより一層、要件として強化される可能性が高い。
生産性向上は、職員の業務負担を軽減することで、利用者に寄り添う時間を増やし、ケアの質を高めることを目的としている。昨年度の処遇改善計画書や、今年度実施された1人当たり5万4千円相当の補助金の受給要件にも生産性向上が盛り込まれていたことからも、その重要性は明らかである。
AIの活用も、業務効率化の強力なツールとして注目されている。会議の議事録作成や日常の記録業務において、AIや音声入力システムを活用することで、これまで数十分かかっていた作業が数分で完了するようになる。
また、直接的な身体介助を伴わない周辺業務を介護助手が担う「介護助手制度」を利用すれば、介護職員は利用者への直接的なケアに集中できるようになる。これは業務の負担軽減だけでなく、人材不足解消につながることが期待される。
ケアマネの処遇改善加算は実現するのか?
ケアマネジャーが特に注目すべきは、居宅介護支援の加算創設の行方であろう。
実は、加算創設に向けた国の動きは、2027年度の制度改正で検討されているケアプラン有料化と密接に関連している。これまで居宅のケアマネジャーが加算の対象から外されてきたのは、ケアプラン有料化の導入が見送られてきたからだとも言える。
仮にケアプラン有料化が実現すれば、現在介護保険だけで賄われている居宅介護支援費に自己負担、例えば、月額1000円程度の定額制が導入される可能性もあり、現場に混乱が生じる恐れもある。
その一方で、ケアプラン有料化が現実味を帯びれば、ケアマネジャーの処遇改善はいよいよ具体化に向けて動き出すであろう。「年収500万円」の実現に向け、国の動きが一気に加速する可能性もある。
「ピンチをチャンスに変える」絶好の機会
このような大きな変化に対応するためには、今から積極的に準備を進める必要がある。
まず、ICT化への対応は避けて通れない。パソコンやタブレットの導入、Wi-Fi環境の整備、給付管理ソフトなどの更新には費用がかかる。国が提供するICT・IT補助金、カードリーダー購入費用への補助金などを積極的に活用すべきである。
また小規模事業所では、単独での対応が難しいケースも多いため、近隣の事業所と連携して共同で研修を行ったり、ICT導入のノウハウを共有したり、国に義務付けられている委員会の設置や訓練を合同で行うなど、地域全体で「小規模事業所グループ」を形成し、互いに協力し合うことが有効な手段となるだろう。
この変革期は、ケアマネジャーにとって「ピンチをチャンスに変える」絶好の機会である。常に情報のアンテナを張り、変化を恐れず、戦略的に対応していく覚悟が今こそ求められている。

- 小濱道博
- 小濱介護経営事務所代表。株式会社ベストワン取締役。北海道札幌市出身。全国で介護事業の経営支援、コンプライアンス支援を手掛ける。介護経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。個別相談、個別指導も全国で実施。全国の介護保険課、介護関連の各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター等主催の講演会での講師実績も多数。C-MAS介護事業経営研究会・最高顧問、CS-SR一般社団法人医療介護経営研究会専務理事なども兼ねる。
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