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「ケアマネの処遇改善は必須。プラン有料化も先送りすべき」-全国介護事業者連盟・斉藤理事長インタビュー・後編

この夏の参議院選に、介護・障害福祉業界では最大規模の業界団体である全国介護事業者連盟の斉藤正行理事長が、自由民主党・比例代表から出馬した。当選には至らなかったものの、斉藤理事長には約53000票が投じられた。それにしても、強い逆風が吹くタイミングで、与党からの出馬を決めたのはなぜか、そして、今後の活動の方針は―。改めて、斉藤理事長に話を聞いた。


全国介護事業者連盟 斉藤正行理事長

―これからやるべきこと、やろうと思っていることはなんでしょうか。

3年後、私が出馬するかどうかは白紙ですが、全国介護事業者連盟としては、自民党・参議院比例代表という立場で代表者を送り込む意義を、介護業界全体に浸透させる努力を続けていかなければならないでしょう。

―この後、政局と自民党への支持率がどのように変わるかは、まだ全く予測ができません。改めてお聞きしますが、野党からの出馬、ということは全く、選択肢にはないのでしょうか。

野党から出馬する、ということが全く無意味だとは思いません。

しかし、「介護・福祉のルール改善を、主導権を持って実現していく」ことを目指すなら、長らく与党を担ってきた自民党の比例代表という選択肢しかないと思っています。

その実現が難しい、ということであれば、介護事業者連盟での活動に力を注ぎます。野党から出馬するより、その方が介護・福祉のルール改善を実現できると思います。

―いまさらの確認で申し訳ないのですが、斉藤理事長は、ご自身が国会議員になる事を最優先にしているわけではないですよね。

もちろんです。「政界に入り、政治を担いたい」という個人的な想いがあることは否定しませんが、今は全国介護事業者連盟の理事長であるという、立場こそが重い。

とにかく「介護の現場の声を制度改正や報酬改定にしっかり反映させ、現場の従事者の平均年収を大きく引き上げたい、業界をよくしたい」ということを最優先で動いています。

ちなみに、単に国政を担う政治家になりたい、ということを最優先するのであれば、勝ち目がある衆議院の選挙区を探しますよ。(笑)

―今後、全国介護事業者連盟の理事長として、具体的に力を入れていく取り組みを教えて下さい。

私が選挙で得た票は約53000票でした。当選には至らない数でしたが、決して、軽い数ではありません。それだけの人から信任されたことを重く受け止めつつ、さらにその数を増やしていく必要があります。

そのためには全国介護事業者連盟の組織を広げていく必要があります。我々の団体の会員は、介護・福祉事業者の10%弱にすぎません。言い換えれば、我々には、まだまだ伸びしろがある、ということです。

組織を拡大させると同時に、参議院比例代表に組織内候補を送り込む意義など、これまで述べてきたことを、会員となった事業者やその従事者に、十分に理解してもらうようにすることも大切でしょう。

もう一つ、全国介護事業者連盟の組織改革もやろうと考えています。改めて会員に対し、連盟の存在意義を周知し、理解してもらった上で、強く賛同してもらえる人を中心に、組織そのものを再構築しよう、ということです。

―選挙で掲げた公約については、今後も実現を目指す、ということでよろしいでしょうか。

もちろんです。公約のうち、特に「介護、福祉に従事する職員の年収500万円の実現」は、多くの人に支持されていましたから、全国介護事業者連盟の理事長として、これまで通り、来年度の予算や、次の介護報酬改定を見据え、ロビー活動を続けていきます。

なお、この公約は、単に「給与が相対的に安いから」とか「大変な仕事だから」とかいった理由で実現を求めているのではありません。介護・福祉の従事者は高い専門性が求められる仕事という理由で、地位に見合った賃金向上を求めているのです。

―次の介護報酬改定では、基本報酬アップを目指す、ということでよろしいでしょうか。

当然です。物価高にみあった、すべてのサービスでの基本報酬アップを実現しなければなりません。これは不可欠です。

―ケアマネジャーに関し、全国介護事業者連盟として求めて行きたいことはありますか。

年内には次の介護保険法改正に向け、一定の方向性が示されます。その議論でもっとも注目されるテーマの一つが、「ケアマネジメントへの自己負担導入の是非」でしょう。全国介護事業者連盟としては、「ケアマネジメントへの自己負担導入」は見送りとするよう、積極的に働きかけていきます。

また、「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」が昨年12月に取りまとめた中間整理で示した内容は、着実に実現するよう求めていきます。この中間整理では、更新研修の大幅な負担軽減や、ケアマネの業務範囲の整理、主任ケアマネジャーの役割の明確化などが盛り込まれていますが、いずれも評価できる内容です。早急な実現を期待したいですね。

そして「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」の中間整理にも盛り込まれたケアマネの処遇改善も実現しなければなりません。処遇改善は介護報酬にも深く関わることです。2027年度の介護報酬改定での居宅介護支援の基本報酬アップは当然、実現すべきことですが、それだけではありません。その前の、来年4月のタイミングで実施が見込まれる処遇改善のための枠組みにも居宅介護支援のケアマネを含めるべきでしょう。まずは、その実現を求めて行きます。

斉藤 正行(さいとう・まさゆき)
1978年、奈良県生駒市で生まれ。2000年3月に立命館大学卒業後、コンサルティング会社に入社し、飲食業のコンサルティング、事業再生などを手がける。2003年に介護業界に転身し、「メディカル・ケア・サービス株式会社」の取締役運営事業本部長や「株式会社日本介護福祉グループ」の取締役副社長を歴任。2013年8月に株式会社日本介護ベンチャーコンサルティンググループを設立した。2018年6月に法人種別・サービス種別の垣根を超えた介護事業者の横断的組織・一般社団法人全国介護事業者連盟の設立に参画。2020年6月に理事長に就任した。

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