

小濱道博の介護経営よもやま話
ケアプラン有料化とケアマネの評価を巡る“攻防”
- 2025/11/28 09:00 配信
- 小濱道博の介護経営よもやま話
- 小濱道博
-
居宅介護支援事業所は介護保険制度の根幹を支える要であり、ケアマネジメントにおける公正性と中立性は、高齢者の尊厳ある生活を保障する上で不可欠な要素である。制度創設時より、居宅介護支援費が利用者負担なしの全額保険給付(10割給付)となっているのもこのためである。
現在、社会保障審議会介護保険部会において、この10割給付の見直しに向けた極めて重要な議論が行われている。ケアマネジメントにおける利用者負担の導入、いわゆる「ケアプラン有料化」である。
政府の改革工程表によれば、この議論の最終結論は2026年度末までに得ることとされている。背景にあるのが2040年を見据えた介護給付費急増への対応、すなわち制度の持続可能性の確保という喫緊の課題である。
だが、介護保険部会では依然として賛否が拮抗している。
利用者負担の導入に慎重な委員は、実質的なケアプラン有料化によってサービスの利用控えが生じ、介護状態が重度化するリスクが高まることを強く懸念している。また、ケアマネジメント業務の客観性や公正・中立性の確保が難しくなり、自立支援の徹底が困難になることも危惧している。
これに対し、10割負担の見直しに積極的な委員は、介護給付費の増大に対応するための財源確保の必要性や、実質的にケアマネジメント費用を負担している施設サービス利用者の不公平感の解消を訴えるとともに、ケアマネジャーの専門性に対する評価も求めている。
事務的な業務の効率化を巡る新たな火種
厚生労働省は11月20日の介護保険部会において、仮に利用者負担を導入する場合は、利用者の所得状況を勘案するなど、低所得者層に配慮した仕組みとする方向性を示した。サービスの利用控えを懸念する声に配慮した形だ。
また併せて、ケアマネジャーの業務効率化の取り組みと連動した新たな提案も示した。ICTの活用による業務の効率化が十分に進展するまでの間、給付管理等の事務に要する実費相当分を利用者に求めるというものだ。
給付管理をはじめとした事務的な業務は、ケアマネジャーの法定業務の中でも特に負担感が大きく、ケアマネジメント業務の時間を奪っているという課題がある。厚労省はICTの活用、特にケアプランデータ連携システムを通じて、ケアマネジャーが本来の業務に注力できる環境を整備しようとしているのである。
ICT化が進むまでの“期限付き”とはいえ、ケアマネジャーが提供するサービスの一部を「有料化」する厚労省の提案に対して、介護保険部会では「業務負担の軽減や介護基盤の構築に向けた本来の目的と一致しない」など、否定的な意見や懸念が多数示された。
囲い込み対策とケアマネジメントの中立性
ケアプラン有料化の議論を複雑化させている要因の一つに、高齢者向け住まい、特に住宅型有料老人ホームにおけるいわゆる「囲い込み」の問題がある。
住宅型有料老人ホームでは、ケアマネジメントや居宅介護サービスを提供する事業所とホームを運営する事業者が同一・関連法人であることが多い。出来高報酬であることが、過剰なサービス提供の誘因となり、入居者のサービス選択の権利を侵害することが懸念されている。
この問題に対処するため、厚労省はケアマネジャーの中立性を担保する体制の必要性を示している。
具体的な方策としては、ホームの事業者と同一・関連法人の事業所がサービスを提供する場合、居宅介護支援事業所やケアマネジャーの独立性を担保するため、▽入居時に特定の事業所の利用を契約条件とすること▽家賃優遇等の条件を付けること▽ケアマネジャーの変更を強要すること―を禁止する措置を設けることなどが検討されている。
また、囲い込みの背景にある「住まい部分の利益を最小(もしくは赤字)、介護サービス部分の利益を最大に見込む」というビジネスモデルを是正するため、住まい事業と介護サービス等事業の会計を分離独立させ、それぞれの収支を公に確認できる仕組みづくりの必要性も指摘されている。
専門性の評価と処遇改善への期待
一方、社会保障審議会の福祉部会では、介護人材の確保・育成が最重要課題として位置付けられている。中核的な役割を担う介護福祉士については、「山脈型キャリアモデル」を参考に、多様なキャリアパスに対応した研修体系の整備や、専門性に応じた処遇改善が議論されている。
ケアマネジャーにおいても、この介護人材の確保・育成の枠組みの中で、多職種連携の中核としての役割、困難事例への対応、地域課題への取り組みなどを踏まえ、処遇改善や事務負担軽減といった環境の整備を進める必要がある。
2026年度に予定されている介護報酬の臨時改定においては、「骨太の方針2025」で示された「現場で働く幅広い職種の方々の賃上げ」の方向性に沿って、処遇改善加算の対象に居宅介護支援を加える方向で検討が進むであろう。
加算の対象範囲が広がれば、深刻な人材不足に直面している居宅介護支援事業所のケアマネジャーの確保・定着につながることが期待される。
ケアマネジメントの給付のあり方に関する議論は、ケアマネジャーの専門性に対する社会的な評価と処遇の改善に直結する。万が一、ケアマネジメントに利用者負担が導入される場合は、ケアマネジャーの専門職としての価値と処遇が適切に評価されることが前提としてあるべきだ。
迫りくる制度改革の中で、ケアマネジャーは自らの専門性と中立性を守り抜くとともに、地域課題の解決に主体的に関与し、さまざまな社会の要請に応える責務があるといえる。

- 小濱道博
- 小濱介護経営事務所代表。株式会社ベストワン取締役。北海道札幌市出身。全国で介護事業の経営支援、コンプライアンス支援を手掛ける。介護経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。個別相談、個別指導も全国で実施。全国の介護保険課、介護関連の各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター等主催の講演会での講師実績も多数。C-MAS介護事業経営研究会・最高顧問、CS-SR一般社団法人医療介護経営研究会専務理事なども兼ねる。
スキルアップにつながる!おすすめ記事
このカテゴリの他の記事
こちらもおすすめ
ケアマネジメント・オンライン おすすめ情報
介護関連商品・サービスのご案内
ケアマネジメント・オンライン(CMO)とは
全国の現職ケアマネジャーの約半数が登録する、日本最大級のケアマネジャー向け専門情報サイトです。
ケアマネジメント・オンラインの特長
「介護保険最新情報」や「アセスメントシート」「重要事項説明書」など、ケアマネジャーの業務に直結した情報やツール、マニュアルなどを無料で提供しています。また、ケアマネジャーに関連するニュース記事や特集記事も無料で配信中。登録者同士が交流できる「掲示板」機能も充実。さらに介護支援専門員実務研修受講試験(ケアマネ試験)の過去問題と解答、解説も掲載しています。



