

結城教授の深掘り!介護保険
策におぼれる厚労省のケアマネ有料化案~実現されれば現場は混乱し負担増は免れない~
- 2025/12/10 09:00 配信
- 結城教授の深掘り!介護保険
- 結城康博
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12月1日の社会保障審議会介護保険部会で、改めて厚生労働省がケアマネジメントへの自己負担(ケアプラン有料化)の具体案を示した。その内容は、①居宅介護支援のすべての利用者に負担を求める。場合によっては所得状況も勘案する(一律有料化)②特定施設入居者生活介護以外の「住宅型」の有料老人ホーム(該当するサービス付き高齢者向け住宅を含む)の入居者のケアマネジメントについて、利用者負担を求める(住宅型の有料化)③ICTによる業務効率化が十分に進展するまでの間、事務に要する実費相当分を利用者負担として求める(事務の有料化)―の3つが提示されている。今回は、この厚労省の3つのケアプラン有料化案について考えてみたい。
改めて述べておくが私は、ケアプラン有料化については反対の立場だ。理由は、これまでのコラムで何回か主張してきたので、過去の記事をご覧いただけるとありがたい。
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シンプルで、ケアマネの賃上げも期待できるが…一律有料化
さて。今回の3つの厚労省案のうち、もっともシンプルかつわかりやすいのは、一律有料化である。
居宅介護支援費用の総額は約5000億円となっていることから、仮に1割の利用者負担が導入されると、約500億円の財政効果が見込めることになる。そして、これらをケアマネジャーの処遇改善加算に割り当てられれば、かなりの賃上げが期待できるだろう。
ただし、この案については、「いきなり1~3割の負担を導入するのか、それとも定額制(例えば一律1000円、あるいは1割均一)を導入するのか」といった、実現を想定した踏み込んだ提案はなかった。
現場の混乱は免れない「住宅型の有料化」
一方、「住宅型の有料化」は、なんともわかりにくい。
提案を素直に読み解けば、「住宅型有料老人ホームにおけるケアマネジメントは有料となり、一般家庭のケースにおいては現行のまま負担なし」と解釈できる。
仮にこの案が実現されれば、公平性・平等といった視点から、どう考えても問題ありだ。「住宅型有料老人ホームか、在宅か」という住む場所の違いだけで、ケアマネジメントに「有料かタダか」という差が生じてしまうのだから。
また、住宅型有料老人ホームでは、全ての入居者を同じ法人系列の居宅介護支援事業所が担当している場合がある。いわゆる「囲い込み」といったビジネススタイルとして問題となっているケースである。このスタイルのケアマネジメントを有料化とする、ということは、見方によっては、国が「囲い込み」を是認する、ということになるのではないか。
さらに、住宅型有料老人ホームの入居者と、それ以外の在宅で生活している利用者を両方担当している居宅介護支援事業所では、有料の利用者と、無料の利用者が混在した状態で給付管理をしなければならない。当然、現場は混乱するだろう。
考えれば考えるほど、この提案には無理と矛盾がでてくる。もしかすると、案を練った担当者の間で「囲い込み」問題とケアマネジメント有料化の議論が錯綜してしまい、冷静な制度設計の議論がなされないまま、世に出てしまった案なのではないか―。そんな風にも思えてしまうくらいだ。
財源効果は薄く、シャドーコストが増大するばかり―事務の有料化
また、(3)の「事務の有料化」についても、詳細がはっきりしていない。単純に考えれば「一律にケアプラン有料化ではないが、事務所経費として利用者から負担を求める」ということだろうか。その場合、例えば「一律、月数百円」といった程度の有料化が導入されることもあり得る。
だが、そもそも事務経費は居宅介護支援費における基本報酬に盛り込まれていると理解すべきであり、改めて利用者から事務経費を求めることは筋違いだ。他の介護保険サービスにおいて事務経費として利用者から負担を求めることはないのだから。
さらにいえば、この案で得られる財源効果は薄い。その一方、シャドーコストの増大ばかりが懸念される。
複雑すぎる制度には、現場から反対の声を!
当然ながら制度が複雑化すると現場の負担は増すばかりだ。今回の3案のうち、①は単純に有料化を実施するのであれば、多少の事務処理は生じるが、大きな業務負担にはならないであろう。しかし他の2案では、現場の負担は増すし、公平性及び平等の視点からも問題であると考える。また、財政効果面ではあまり期待できないため、制度改正を実施しても、シャドーコストが拡大するだけで、非効率な運用となってしまいかねない。
利用者負担を求めるのであれば、一定の財政効果が見込めないと無意味であることは間違いない。財政規律の視点は重要であり、利用者負担増といった議論が生じるのもいたしかたない。しかし、今回のケアプラン有料化の議論は、その重要な財政効果をも軽視して、策におぼれ過ぎている感が否めない。
繰り返すが、私は、ケアプラン有料化は反対である。それでもあえて導入する、というなら、まだしも「一律有料化」を実施するほうが理にかなっている。最終的にどのような決着になるかは未定だが、少なくとも制度を複雑化して現場が混乱する有料化の議論には、現場からも反対の声をあげるべきであろう。

- 結城康博
- 1969年、北海道生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒、法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)。介護職やケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護系の仕事に10年間従事。現在、淑徳大学教授(社会保障論、社会福祉学)。社会福祉士や介護福祉士、ケアマネジャーの資格も持つ。著書に岩波ブックレット『介護職がいなくなる』など、その他著書多数がある。
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