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AI活用で、より人間らしい仕事をVol.8 鹿野佑介/株式会社ウェルモ 代表取締役CEO【後編】

2018/09/07 配信

リハビリ計画の作成や認知症ケアのコーチングなど、AI(人工知能)を活用した介護の業務支援ツールの開発は、ケアプラン以外の分野でも進んでいる。ケアマネジャーの中には、急速なテクノロジーの発達に戸惑う声もあるが、鹿野氏は「AIが人間に足りない知識や経験を補うことで、利用者や家族と一緒にいる時間が増え、より人間らしい仕事に注力することができる」と強調する。

前回のインタビューはこちら→「基礎資格の経験知、AIで融合を

―もともとIT系のコンサルタントだったそうですが、どのような経緯で介護業界に入ったのですか。

前職では、人事部で大企業向けのコンサルタントをやっていました。IT関連の人的資源管理が専門でした。もともと、会社での働きがいに興味があったので、介護業界のことは気になっていました。介護は、今後の高齢化でさらに重要性が高まるのに、「3K」と呼ばれ、離職率も高い。ずっと、何とかならないのかと思っていました。

たまたま、仲の良かった同期の母親がケアマネだったので、ある時、介護の職場環境について話を聞いてみたんです。そうしたら、その内容があまりに衝撃的でした。これだけ情報化が進んでいるのに、事業所のパソコンの周りは付せんだらけ。壁には大量の紙が張ってあるし、書類はファクスで送っている。パソコンが苦手な方も多く、文書を作成するのに時間もかかる。「まるで昭和だ」と思いました。

当時、介護給付費の総額は8.8兆円でしたが、介護現場のコストの無駄を試算してみたら、すぐに兆単位になりました。仕事で関わっていた大企業とのギャップがあまりに衝撃的で、気が付いたら3カ月後に会社を辞めていました。

その後、まずは介護について勉強しようと、同期の母親が働いていた仙台の事業所で、8カ月間ボランティアをすることにしました。メーンの仕事はできないので、掃除などの雑務をやりながら、サービス担当者会議やデイサービスなどの現場を見学しました。でも、介護保険サービスは全部で53種類もある。全てを見るのは無理だと思い、途中から現場でのインタビューに切り替えることにしました。

全国約400カ所、特別養護老人ホームから小規模多機能型居宅介護、NPO法人まで、さまざまな事業所や施設に足を運びました。こうした中、国の政策動向を見ているうちに、業界全体の仕組みを変えなければ、介護の職場環境を改善するのは不可能だと気付き、AIを活用した事業の構想を思い付いたのです。

たまたま出会った福岡の自治体の方にその話をしたら、「一緒にやろう」ということになって、知り合いが一人もいない状態で、2013年4月に福岡で起業しました。

■将来、個別支援計画の作成支援も

―ウェルモは、放課後等デイサービス事業所も運営していますね。

会社名の「ウェルモ」には、「ウェルフェア(福祉)をもっと良くしたい」という思いが込められています。ウェルフェアは、介護と障害が2つの柱になります。放課後等デイサービスの事業所の中には、利用者ではなく利益を最優先する事業所もある。子供の心が明るくなり、お母さんが自尊心を保てる―。そんな事業所を作りたくて、2015年の秋に、福岡に「UNICO(ユニコ)」という事業所を開設しました。現在、福岡市近郊で4つの事業所を運営しています。

私たちは、家族の一員のような立ち位置で支援に取り組んでいます。担当の先生を付けて、子供だけでなく、お母さんのケアもやっています。お母さんが精神的に病んでしまうと、子供にも影響が及びます。発達障害の子供には未知の可能性があって、しっかりケアをすると、改善する場合もある。例えば、うちに通っている子供は当初、発達障害と認定されていましたが、8か月後に認定が外れて、今では普通の学校に通っています。

将来的には、当社のAIの「推論エンジン」を、障害福祉サービスにも応用できるようにしていきたいです。ケアプランのAI化がある程度進んだら、障害福祉サービスの個別支援計画の作成も支援したいと考えています。

■間接業務の時間、ゼロに近づけたい

―最後に、AIを活用した介護の将来ビジョンを教えてください。

介護をやっている方は、目の前にいる人を見ると放っておけない、熱い思いを持った方が多い。他人に寄り添うことが一番大切だと思っている。私たちは、こうした方々が利用者と接する以外の時間をゼロに近づけたいのです。AIを活用すれば、面倒な間接業務の時間を限界まで圧縮できる可能性があります。

誰しも、経験したことがないことをやるのは不安です。分からない時は、誰かに電話するのも良いですが、その方が分からない場合もありますし、情報が正確じゃない場合もある。AIを秘書のように活用すれば、正確な情報がすぐ手に入るのです。

歴史を振り返ると、18世紀に起こった産業革命で機械化が進み、職人が手作業をしなくても、製品が作れるようになりました。そして浮いた分の時間を、別のことに使えるようになった。私たちは、AIが人間に足りない知識や経験を補うことで、利用者や家族と一緒にいる時間が増え、より人間らしい仕事に注力することができると考えています。

鹿野佑介(かの・ゆうすけ)
大阪府豊中市出身。立命館アジア太平洋大学卒業。株式会社ワークスアプリケーションズ、東証一部上場企業の人事部で、大企業向けの人的資源管理のITコンサルタント。その後、仙台から福岡まで、介護現場でのボランティアで感じた問題意識から、日本の超高齢化社会を支援すべく、2013年に株式会社ウェルモ設立。経済産業省「つながるデータで築く未来」、総務省「地域ICT利活用普及促進セミナー」、データアカデミー等多数講師を務める。

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