<終末期医療の本質>胃ろうの決断、医師に逆質問しよう――老年学公開講座レポ(1)


2013/02/21 09:00 配信   | 業界ニュース

東京都健康長寿医療センターは、2月7日、東京都内で第126回老年学公開講座「あなたに合った人生のしめくくりを」を開催した。

講座は三部からなり、冒頭、司会者より今回の講座の企画趣旨として、「胃ろうの是非が問われるようになるなど、医師だけが終末期医療を考えるのではなく、患者さんや家族と一緒に考える時代になっている」との言葉があり、今年、東京都健康長寿医療センターに緩和ケア病棟が開設することも紹介された。

会場は多くの人で埋まり、同じ会場で行なわれた老年学公開講座の中でも突出した聴衆の多さで、このテーマへの関心の高さが伝わってきた。

第一部は、東京ほくと医療生活協同組合王子生協病院医師の平山陽子氏による講演「かかりつけ医と考える人生のしめくくり~事前指示書のすすめ」。

内科医、家庭医として地域医療の最前線で働き、数多くの患者の看取りに携わってきた平山氏。王子生協病院では、自分が意思を表明できなくなった場合に備え、選択する医療などを記しておく「事前指示書」の普及活動を行っており、その豊富な経験を元に終末期医療について説明がなされた。

平山氏によると、終末期医療について考える際に重要なのは「いつ、誰と、何を」の3つで、それぞれのポイントについて次のように説明した。

1)いつ考えるか
大きな病気にかかるなど差し迫った時に考える人が多いが、その前に考えておくのが望ましい。体調に変化が起きた時や、還暦や古希など節目となる年に考えるのもいい。

2)誰と考えるか
家族と相談するほか、わからないことは医師や看護師、ケアマネジャーなど専門家に相談する。また、終末期医療においてかかりつけ医を持つことは大切で、「事前指示書を作成してかかりつけ医にコピーを渡せば、入院の際の紹介書に事前指示書についても書いてもらえ、一貫した医療を受けることができます」。

3)何について考えるか
「人生において何に価値を置いているか」「もうすぐ死ぬとしたら何がいちばん心残りか」など自分の価値観を見つめ直し、終末期に医師が薦める次の医療行為を希望するかどうかを考える。
・心肺停止になった時の心配蘇生を行うかどうか。
・人工呼吸器を使用するかどうか。
・胃ろうなど人工栄養にするかどうか。

「価値観は人によって異なり、それによって医療の選択も変わってくるものです」と平山氏。また、最近は胃ろうはよくないという論調になっているが、「私の患者さんには胃ろうをつくり、何年も自宅で元気に暮らしている人もいます」。

これらのことを理解し、「終末期医療について自分の意思を事前指示書に残すことが大切です。自分が意思決定できなくなった時、決定する代理人も決めておきましょう」。また、事前指示書を使うのは死が差し迫っている時で、本人が自分の意思を表明できる場合や、助かる見込みがある時は治療を優先するという説明があった。

■「食べられない」=終末期ではない
第二部は、東京都健康長寿医療センター研究所の島田千穂・福祉と生活ケア研究チーム研究員による「最期まで自分らしく生きるために~老人ホームでの生活から~」。
高齢期の生活について研究する島田氏の講演では、終末期の概念や終末期治療の考え方について本質的な知識を得ることができた。

終末期については、「高齢者の場合、どこからが終末期と線引きするのはむずかしく、そのため、終末期ケアがどこから始まるかもひとことで説明することはできないものです」と島田氏。
ひとつの手がかりとして紹介されたのが、特別養護老人ホームで実施したアンケート。亡くなった人について、「どこからが終末期ケアと認識したか」と質問したところ、43の事例のうち7割で「食べられなくなった時、または飲み込めなくなった時」との回答が得られたという。

食事をとれなくなった時に、すすめられるのが胃ろう。延命治療としての是非が問われる胃ろうだが、島田氏は、胃ろうにすることでその人の生活がどう変化するかこそを考えるべき、と述べ、「ですから、胃ろうにするかどうかを医師に聞かれたら、『胃ろうにするとどういう生活になるのか』と質問し直してください」。

終末期医療において、本人の意思を確認できない場合については、次のようにアドバイスした。
「家族とその人に関わる医療者や介護スタッフで話し合い、本人の性格や生き方を照らし合わせてどうするのがいいかを考えていくことが大事です。また、決定したことは絶対ではなく、変更してもいいということを知ってほしい」。決断後に、「本当にこれでよかったのか?」と後悔することがあっても、「みんなで『これにしましょう』とりあえず納得したことは間違いとは言えない、というのが一般的な考え方です」。

また、本人が意思を伝えられる場合は、家族と一緒にこれからどのような生活をしたいのかを話し合うことが大事で、治療の選択では、「どの程度機能が回復するか、生活はどうなるかを医師や看護師に聞いて判断することが大切です。どの方法が自分や家族にいい選択なのか考えてほしい」と語った。

◎東京都健康長寿医療センター
http://www.tmghig.jp/

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【ケアマネジメントオンライン編集部 土倉】

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