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弁護士からの応援寄稿「知っておきたいトラブル事例と対応策」

かみ癖のある怖すぎるペット!どう対応?

ケアマネジャーやヘルパーなど訪問系の介護従事者は、ご利用者の生活空間にお邪魔することになるため、ちょっとやそっとの不都合は、黙って耐えることが多いと思います。例えば「この部屋は暑いからクーラーを入れてください」とは言いづらいですよね。ですが、イヌなどのペットが吠えたりかみついたりしてきたらどうでしょうか。このように身の危険を感じる場合でも何も言えないのでしょうか…。法的に正しい対処法を解説します。

想定ケース:吠え癖・かみ癖があるペットのせいで、サービスも滞りそう…

利用者:87歳代女性、日中独居。脳出血により昨年、緊急入院した。退院後もその影響で左足が動かしにくい。要介護2。軽度の認知症もある。排泄・食事はほぼ自立。

ご家族:息子さん 40代独身。母と同居しているが日中は仕事で家にいない。休日に食料品の買い出しや掃除など、最低限の家事はするが、基本的に母の事は無関心であり、飼いイヌのこともほったらかし。

サービス利用状況:訪問介護、デイサービス、福祉用具(ベッド脇の手すり、杖)

利用者が柴犬を屋内で飼育。利用者と息子以外の訪問者が家に入ろうすると、激しく吠える。時にはかみつこうすることも。ひもで柱に繋がれているが、動ける範囲はかなり広い。柱や壁はかみ跡とひっかき傷だらけで、家全体が荒れている。

利用者の話では、「以前は大人しく聞き分けのいい犬で、こんなことはなかった」という。これまで利用者がしていた屋外の散歩が、利用者の退院後はできなくなっている。息子も散歩に連れて行かないため、イヌにもストレスが溜まっているのではないかと推測される。

ある日、訪問したヘルパーがイヌにかまれてしまった。幸い、服の上からかまれたため大きなケガにはならなかったが、ヘルパーが所属する事業所から「危ないので、もう人は出せない」と、サービス提供を断られてしまった。

こんな状況では、他の訪問介護事業所に依頼することもできない。そもそもケアマネ自身も身の危険を感じるので、正直なところ、訪問したくないと思っている。

今後この利用者にどう関わっていくべきか。

以下の3択から、自分なら採るであろう方法を選択してください。

A 大きなケガをする前に、こちらから契約解除し、ケアマネの任から降りる。
B 契約した以上、そう簡単に切ることはできないので、我慢して続けるしかない。
C 散歩の代行サービスを探し、散歩をさせるよう提案してみる。

いかがでしょうか。似たような経験をされた方も多いかもしれませんね。それだけに意見は割れるかもしれません。

「いきなりの契約解除」は、まだ難しい段階

まず、このような状況で契約を解除できるかを考えてみましょう。

たいていの利用契約書には「利用者(または家族)が、この契約を継続し難いほどの背信行為をしたとき」または「信頼関係を破壊する行為をしたとき」に、事業所から解除できると定められています。

問題は、「いかなる場合に解除相当といえるか」ですが、筆者としてはこのケースについては、いきなり契約解除するのはさすがに難しいものと考えます。なぜなら、イヌが吠え、かみつくという問題を解決するための方法を検討し、利用者側に提案していないからです。その意味でAは不正解といえるでしょう。

ちなみにこの段階でも契約解除すること自体は可能です。ですが万が一、裁判を起こされると、「危険なイヌがいる」というだけの理由で解除したことが「契約を継続し難いほどの背信行為」といえるかといったことが、法廷で争われることになってしまいます。そこまで行かずとも、かなり揉めるであろうことを考えると、よほど危険が切迫していない限り、撤退を決めない方が無難でしょう。

なぜかむのか…その原因をさぐり、対応策を

とはいえ、Bのように現状を放置しては、ケアマネ自身も大ケガをする可能性があります。

まずは、なぜイヌは吠えたりかみついたりしてくるのかを考える必要があります。具体的な対策としては、イヌを飼っている人や獣医の先生などに話を聞き、その原因と解決策を探りましょう。なお、今回のケースでは「散歩に連れて行ってもらえないからストレスが溜まっているんじゃないか」ということが分かっていますので、散歩の代行サービスの導入を検討しましょう。よって、正解はCと考えます。

いわば「イヌ専用ケアプラン」を立案するような対応ですが、仮説・目標を立て計画を作り、それに沿って実行するPDCAサイクルは何にでも使える優れた考え方です。

契約解除を求めるタイミングと、万一に向けて備えることは?

今回のケースでは、Cのような散歩代行の提案をすることが第一ステップとなるでしょう。ただ、利用者や息子さんにも、それぞれ都合と思惑がありますので、この提案を否定されることがあるかもしれません。その場合は、改めて代替案を考えなえればなりません。

それでも何を提案しても動いてもらえず「万策尽きた…」と思えるときが契約解除のタイミングです。法的な考え方は、どこまでも無理を強いるものではなく、「その時点でできる限りの策を講じたにも拘らず解決できなかった」と認められる場合には解除もやむなしという認定をします。ポイントは、支援経過記録にそのような試行錯誤を詳細に記録しておくことです。最後は記録=証拠がものを言います。自らを守るためにも、ご利用者のケアに直接関係しない取り組みや提案も、きちんと記録に残すよう心がけましょう。

外岡潤
1980年札幌生れ。99年東京大学文科Ⅰ類入学、2005年に司法試験合格。07年弁護士登録(第二東京弁護士会)後、ブレークモア法律事務所、城山総合法律事務所を経て、09年4月法律事務所おかげさまを設立。09年8月ホームヘルパー2級取得。09年10月視覚障害者移動介護従業者(視覚ガイドヘルパー)取得。セミナー・講演などで専門的な話を分かりやすく、楽しく説明することを得意とし、特に独自の経験と論理に基づいた介護トラブルの回避に関するセミナーには定評がある。主な著書は『介護トラブル相談必携』(民事法研究会)、『介護トラブル対処法~外岡流3つの掟~』(メディカ出版)、『介護職員のためのリスクマネジメント養成講座』(レクシスネクシス・ジャパン)など。「弁護士 外岡 潤が教える介護トラブル解決チャンネル」も、運営中。

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