どうするICTへの対応…居宅のための導入講座どうするICTへの対応…居宅のための導入講座

有識者コラム苦手意識にサヨナラ!ICT化を推進できるケアマネジャーになろう 【前編】

科学的介護情報システム(LIFE)の運用開始もあり、介護現場のICT化は待ったなし。当然、ケアマネジャーもこの流れと無縁ではいられませんが、何から着手すべきか迷う方も多いのではないでしょうか。そこで、ケアマネジメントを専門に実践・研究を重ねるとともに、政府のさまざまな委員会で委員を歴任してきた、国際医療福祉大学大学院の石山麗子教授にインタビューを実施しました。前編となる今回は、稼働して間もないケアプランデータ連携システムの意義や、介護ソフト導入時の注意点などについて伺います。

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デジタル化には「ケアプランデータ連携システム」は外せない!

ケアマネジメント業務のICT化を考えるとき、2023年4月20日から本稼働した「ケアプランデータ連携システム」は外せないトピックです。皆さんご存じの通り、居宅介護支援事業所と介護サービス事業所の間でやり取りするケアプラン(サービス提供票の予定・実績)を、より安全な環境でデータ連携するために国が整備したシステムで、現場の負担軽減や業務効率化などが期待されています。

「ケアマネ不足」が叫ばれて久しいですが、昨年度辺りから深刻さが増している印象で、都市部でも人材が足りない地域が出てきました。すでに介護保険サービスを利用している方はもちろん、これから利用を検討している方も含めてケアマネジャーにアクセスしやすい環境を整えるためには、ICT化による業務効率化は必須だといえます。

多くの利用者やご家族は、ケアマネジャーの忙しそうな様子を敏感に察知します。仮に「忙しそうだから相談を控えておこう」と気を遣わせてしまうことがあるとしたら、利用者の不利益につながりかねません。もちろん、ケアマネジャーの仕事は多忙ですが、少なくとも利用者側からそう見えない程度の「ゆとり」は必要でしょう。それを実現する手段の一つがICT化であり、ケアプランデータ連携システムなのです。

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ICT化で起こる「ケアマネの月末月初」の大変革

ここで重要なのは、「人間がやるべき業務」と「ICTに頼ってよい業務」を切り分けるという考え方です。パソコン画面と書類を血眼になって対照させるような機械的な作業はICTを活用し、専門職にしかできない仕事に集中できるようになることこそ、ICT化の本質的な意義だからです。自分たちの業務負担軽減や経営改善といった話の前に、利用者への職責を果たすために大切なことだともいえます。

例えば、居宅介護支援事業所の給付管理業務だけでも、毎月約5.9時間(ケアマネジャー1人当たり)が費やされています。これを削減できれば、月初に起こった突発的な事態に本腰を入れて対応したり、必要に応じて休暇を取ったりしやすくなります。「月末月初は忙殺されるのが当たり前」というケアマネジャーの働き方が根底から変わる、大変革の時期に私たちは立ち会っているのです。

ケアプランデータ連携システムは、一事業者だけが利用すればよいわけでなく、地域全体での導入が不可欠です。周囲と足並みをそろえるためにも、関係各所と集まって話し合う機会をつくり、活用の方向性を検討してみましょう。国や自治体のサポートを待つばかりでなく、積極的に「できること」を探そうとする姿勢が求められます。

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介護ソフト導入・変更時は社内外への配慮を忘れずに

ICT化の流れを受けて、介護ソフトを導入・変更するケースも多くなるでしょう。注意してほしいのは、新しいシステムの導入時、一時的に作業効率が下がりやすい点です。介護ソフトの中身やコストを吟味することに加え、作業効率低下の影響を見越した対策を忘れないでください。社内外でどんなデメリットが発生しうるか、それを最小化できるタイミングはいつかなどを考え抜き、「○月はソフト入れ替えのため受け入れ人数が○人に減るが、○月には通常通りに戻る見込み」と地域包括支援センターに伝えておくなど、事前に準備しておきたいところです。

新しい技術に苦手意識を持ち、「できれば現状を変えたくない」と感じているケアマネジャーは少なくないかもしれません。しかし、今やICT化は世界的な潮流で、介護はその一つです。未来の私たちが今を振返ってみるとしたら、ICTのない生活は、まるで冷蔵庫のない生活のようにみえるかもしれません。ICT推進は大前提ととらえ、「どうすれば使えるだろう?」と前向きな視点で考えてください。

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石山 麗子(いしやま・れいこ)
国際医療福祉大学大学院 医療福祉経営専攻 先進的ケア・ネットワーク開発研究分野責任者/教授
1992年、武蔵野音楽大学を卒業後、知的障害児入所施設に入職し、音楽療法を実践。障害者職業センターの障害者職業カウンセラーの経験を経て、2001年に介護支援専門員資格取得。2005年、東京海上日動ベターライフサービス株式会社に入社し、シニアケアマネジャーとして140人のケアマネジャーを統括。2013年、国際医療福祉大学大学院博士課程修了。2015年、日本介護支援専門員協会常任理事。2016年、厚生労働省老健局振興課介護支援専門官。2018年より現職。

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