弁護士からの応援寄稿「知っておきたいトラブル事例と対応策」

ここがわからん、BCP!-どうしても作れないケアマネのためのQA特集

未曾有の災害や感染症で事業が危機にさらされても、事業を継続したり、できるかぎり速やかに復旧させたりするため、BCP(業務継続計画)の策定が全ての介護事業所に義務付けられました。当然ながら、一人ケアマネの事業所も例外ではありません。2024年3月末日までに完成させることが法的義務となっています。

法的うんぬんはさておいても、震災も風水害も、いつ何時、降りかかってくるかわからりません。また、依然として新型コロナウイルスやインフルエンザの跳梁跋扈も続いています。当然、どの事業者も、BCP策定が必要不可欠であることは認識していらっしゃるでしょう。

しかし、それでも、まだ策定中だったり、策定のめどすら立っていなかったりする事業者は7割ほどもいるという結果が厚生労働省から示されています。

そこで今回は、策定したくても策定できない皆様の「どうすればいいか、わからん!」に、ズバリお答えします。

わからん!その1-ご利用者の避難計画もBCPに書かないといけない?

A 書く必要はありません

高齢者や障害者、妊婦の方など、人では避難困難な方については、個別避難計画の策定が求められますが、これはあくまで「市町村の」努力義務とされています(災害対策基本法)。一方、介護事業者がBCPに盛り込まなければならない要件は、感染症・災害とも、それぞれ次の3つしかありません(居宅運営基準解釈通知 第2、指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準、3運営に関する基準、(14)業務継続計画の策定等)。

◎感染症に係る業務継続計画
  • a:平時からの備え(体制構築・整備、感染症防止に向けた取組の実施、備蓄品の確保等)
  • b:初動対応
  • c:感染拡大防止体制の確立(保健所との連携、濃厚接触者への対応、関係者との情報共有等)
◎災害に係る業務継続計画
  • a:平常時の対応(建物・設備の安全対策、電気・水道等のライフラインが停止した場合の対策、必要品の備蓄等)
  • b:緊急時の対応(業務継続計画発動基準、対応体制等)
  • c:他施設及び地域との連携

上記の要件を項目として書き写し、肉付けをしていけば、最低限のBCPが完成します。ただ、中には避難や安全確保を行政任せにするのは、ちょっと不安なご利用者もいるでしょう。そうしたケースについては、モニタリングや担当者会議などで話し合い、個別にケアプランに追記すると良いでしょう。

わからん!その2-厚労省のガイドラインやひな形に沿って作る必要がある?

A その必要はありません

先の運営基準解釈通知には、ガイドラインについて「参照されたい」としか書かれておらず、法的に認められるためには上記3要件を満たせばよいということになります。厚労省の資料は詳細で抜けもれもありませんが、小さな事業者にとってはハードルが高すぎるのではないかと懸念しています。

わからん!その3-災害BCPは、避難訓練とどう違うの?

A たとえるなら「避難訓練は点、BCPは線(または帯)」といったところでしょうか。

避難訓練はあくまで被災直後の身の安全を確保するためのものですが、BCPはその前後、つまり平時からの備えや被災後24時間、48時間…と経過し事業が完全復旧するまでの対応を網羅しています。計画を策定するときも、この「時の流れ」を意識することが大切です。

わからん!その4 感染症対策のためのBCPは、5類になった新型コロナも対象とする?

A 対象となる感染症は、法令などでは何も定められていません。

5類といえど危険性はあるので「感染症法所定の5類相当以上のものが発生したとき」はBCPが発動する、と定めた方が良いでしょう。

わからん!その5 2024年4月1日までに完成させないと、運営基準減算になるの?

A 未定です。ただ、その可能性は多いにあります。

運営基準に規定されている以上、これに違反した場合は減算になりうることも覚悟しておいた方が良いでしょう。既に述べた通り、今年9月の時点で事業者の約7割はBCPが未完成という状況に鑑み、国が策定期限を延期する可能性もあります。しかし、それが現実のものになったとしても、猶予期間が延びただけのこと。いつかは策定しなければならないものと腹をくくり、早めに取り組んでおくべきです。

現在、どうしてもBCPを策定できない方のため、オリジナルのひな形を無料公開中です。居宅介護支援を含むあらゆるサービス種別にあわせ、災害編・感染編を用意しています。ワードデータなので、ダウンロードし、必要箇所を書き換えればすぐに使うことができます。今のところ、どなたでも、いくつでも取得できますが、いずれ無料公開は終了する方針ですので、早めにダウンロードすることをお勧めします。

雛形を取得する際は、こちらから特設サイトに移動して頂き、法人名とメールアドレスを入力した上で、フォームを送信して下さい。その後、各種テンプレートをダウンロードするためのURLが自動返信されますので、必要なものをダウンロードし、ご利用ください。

  • ※登録頂いたアドレスに、自動返信で2通メールが届きます。1通目は確認メールなので無視して頂き、2通目の「BCP作成のひな型テンプレートはこちらから⇓⇓⇓⇓」をクリックし各ファイルから取得してください
  • ※頂いたアドレスに定期的なお役立ち情報をメールマガジンとして送らせて頂きますが、不要であれば登録解除して頂いて構いません。
  • ※本テンプレートは私が細心の注意をもって作成したものですが、全ての記載情報が正確であり適正であるという保証はできません。また、リリース後の情勢変動により必要な記載事項などが変更される可能性もあります。あくまで一つの参考資料としてご利用頂き、最終的にはご自身の責任において策定頂くことになります。その点をご了承頂きます。

なお、YouTube動画「弁護士外岡潤の介護トラブル解決チャンネル」でBCPの解説動画を公開しています。作成されるときはご参照ください。チャンネル登録もよろしくお願い致します。

外岡潤
1980年札幌生まれ。99年東京大学文科Ⅰ類入学、2005年に司法試験合格。07年弁護士登録(第二東京弁護士会)後、ブレークモア法律事務所、城山総合法律事務所を経て、09年4月法律事務所おかげさまを設立。09年8月ホームヘルパー2級取得。09年10月視覚障害者移動介護従業者(視覚ガイドヘルパー)取得。セミナー・講演などで専門的な話を分かりやすく、楽しく説明することを得意とし、特に独自の経験と論理に基づいた介護トラブルの回避に関するセミナーには定評がある。主な著書は『介護トラブル相談必携』(民事法研究会)、『介護トラブル対処法~外岡流3つの掟~』(メディカ出版)、『介護職員のためのリスクマネジメント養成講座』(レクシスネクシス・ジャパン)など。「弁護士 外岡 潤が教える介護トラブル解決チャンネル」も、運営中。

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