

夏期集中講座 20年度診療報酬改定のポイント
※この記事は 2020年8月7日 に書かれたもので、内容が古い可能性がありますのでご注意ください。
「かかりつけ医機能」が充実、ケアマネは“営業”を!
- 2020/08/07 09:00 配信
- 夏期集中講座 20年度診療報酬改定のポイント
- 酒井麻由美
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今回の診療報酬改定を一言で表すと、「医療機関への患者の流れを変えるための改定」となるだろう。これから確実に進むことは、支える世代の減少と高齢化、そして単独・老老世帯の増加だ。これに伴って今後、退院困難な患者だけでなく、医療機関への通院が困難な患者も増える。
さらに高齢者に限らず、中高年も含めた単独世帯も増えるだろう。日々の健康状態を把握・指摘したり、相談したりする相手がいなければ、病気や身体機能の低下、認知症の発見などが遅れ、重症者が増える可能性が高い。
それを予測し、国はこれまで、病気を治すだけでなく、その人の生活環境も把握し、相談に乗ってくれる「かかりつけ医機能」(※)の充実を診療報酬上で進めてきた。しかしながら、▽診療報酬の算定要件が厳しすぎる▽「かかりつけ医機能」のイメージが、一般市民に非常にわかりにくい―という2つの理由から、届け出医療機関の数が伸び悩み、受診する患者数も増えてこなかった。
※「かかりつけ医機能」を評価する診療報酬とは、初診料の「機能強化加算」の届け出要件となっている「地域包括診療加算」(クリニックのみ算定可)、在宅療養支援診療所または在宅療養支援病院が算定する「在宅時医学総合管理料」、そして「小児かかりつけ医診療料」を指す。
福祉サービスの相談受け付けも要件に
そこで今回、上記の2つの課題をクリアするための仕組みが新設された。まず、「地域包括診療加算」の算定要件のうち、夜間・休日の対応については、他の医療機関との連携も対象となった。また、電話などで急病の連絡を受けた際、適切な救急病院等に繋げば、紹介状の作成に関する報酬(「診療情報提供料(I)」)を算定できるようになった。
さらに、初診料の「機能強化加算」の算定要件に、(1)健康診断などの結果に関する相談を受ける(2)必要に応じて専門医や専門医療機関に紹介する(3)保健・福祉サービスに関する相談を受ける(4)夜間・休日の問い合わせに対応する―が新たに加わったことで、「かかりつけ医機能」のイメージが明確になった(参考資料1)。
出典:令和2年度診療報酬改定説明資料(厚労省保険局医療課、令和2年3月5日版)
特に強調されたのが、(2)の部分だ。何かしらの症状がある時、「どこの医療機関に行ったら良いのだろうか?」と誰しも思う。そこで今回、「かかりつけ医機能」を持つ医師が症状を診て、必要性があると判断した場合、適切な医療機関を紹介する仕組みが導入された。算定要件には、専門医を紹介できることを院内に掲示することに加え、その内容が記された文書を患者に配布できるようにすることも含まれている(参考資料2)。

専門の診療科でも、医師によって得意分野や対応可能な治療は異なるので、患者側からすると、医療機関が紹介するところが一番信頼できるだろう。せっかく「かかりつけ医機能」がある医療機関を受診しているのに、患者がそのことを知らず、医師に相談しないで自分で医療機関を選んでしまうと、服用しているお薬と同じ効果を持っていたり、飲み合わせが悪かったりするお薬を処方されることもある。
医師に事前に相談していれば、紹介状を作成してくれる。その中に、処方されているお薬や既往歴も記載されるので、上記のようなリスクは減るだろう。
また長年通う医療機関で、「もらっているお薬が効かないから、専門医を紹介してほしい」とは言いにくい。その点、必要に応じた専門医を紹介するという案内が院内に掲示され、文書として配布されていれば、患者側も相談しやすい。
なお、掲示物及び配布物には、(1)について明示する必要があり、健診の結果が「要精査」や「要検査」となった場合は、精密検査に適した医療機関を紹介することができるため、重症化を防ぐことにもつながるだろう。
かかりつけ医と“繋がる”ケアマネになる
(3)についても明示する必要があることは、ぜひケアマネジャーの方に知っておいてほしい。かかりつけ医に保健・福祉サービスについて相談した場合、地域連携室や居宅介護支援事業所を持たないクリニックはどう対応するか。知り合いのケアマネジャーがいれば、おそらくその方を紹介するだろう。
「連携」とは「繋ぐ」という意味だ。そして、人と人を「繋ぐ」のが情報である。医師は、ケアマネジャーの仕事の範囲をよく知らないことが多い。ケアマネジャーに連絡して患者を繋げれば、(3)の対応を図ったことになることもおそらく知らないだろう。
大切なのは、ケアマネジャーからその情報を知らせること。医師と繋がりを持つための“営業”が不可欠だ。ケアマネジャーはケアプランを作成するだけでなく、介護保険申請時の支援や介護・福祉サービスに関する相談対応も行うということを、「かかりつけ医機能」を持つ医療機関にPRしておく必要がある。
介護サービスの利用が遅れれば、その方は地域で暮らせなくなり、医療機関にとっては、結果的に外来患者の減少にもつながる。「かかりつけ医機能」は、「地域包括ケアシステム=医療や介護が必要になってもできる限り住み慣れた地域で暮らし続ける仕組み」をつくるため、医療と医療、そして医療と介護を繋ぎ、重症化予防を図る仕組みとして設けられたと言える。

- 酒井麻由美
- 株式会社リンクアップラボ代表取締役。急性期病院の医事課、医療・介護専門コンサルティング会社を経て、2018年12月にリンクアップラボ設立。医師会や病院団体、社会福祉協議会などで、年間100件以上のセミナー講師を務めるほか、「月刊保険診療」(医学通信社)や「デイの経営と運営」(QOLサービス)ほか、医療・介護経営雑誌で執筆多数。日本医業経営コンサルタント協会の認定コンサルタント(運営)。
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