

CMO特別インタビュー
※この記事は 2023年9月8日 に書かれたもので、内容が古い可能性がありますのでご注意ください。
デイの関係者もリハビリテーション手法を意識して/久保俊一氏(日本リハビリテーション医学会前理事長)× 別宮圭一氏(株式会社インターネットインフィニティー代表取締役社長)
- 2023/09/08 09:00 配信
- CMO特別インタビュー
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誕生から20年余りを経た今、介護保険制度が大きく様変わりしようとしています。ご利用者の生活の質や自立した生活を守るための活動に、より重点が置かれる制度になりつつあるのです。そんな中、「デイサービスをはじめとした介護サービス関係者も、リハビリテーション手法を意識し、頭に置く必要があると思います」と指摘するのは、日本のリハビリテーション医学をけん引してきた日本リハビリテーション医学会の久保俊一前理事長です。その久保先生とリハビリ型デイサービス「レコードブック」を運営する、株式会社インターネットインフィニティーの別宮圭一社長が、介護とリハビリテーション手法について、対談をしました。

写真右:別宮圭一氏(株式会社インターネットインフィニティー代表取締役社長)
リハ医学は医学・医療・介護・福祉の「基盤」
別宮:久保先生は、日本におけるリハビリテーション医学の黎明期ともいえる1970年代にこの分野に進まれ、一貫してリハビリテーション医学をけん引されてきました。
久保:「リハビリテーション」という用語が医学の分野で使われ始めたのは、約100年前です。その後、1950年代に日本に導入され、「リハビリテーション医学」と総括されました。そして、1963年には日本リハビリテーション医学会が設立されました。
私がこの医学会に入会したのは1979年のことです。以来44年間、整形外科学とともにリハビリテーション医学・医療の分野に携わってきています。
別宮:この分野を志された理由について、改めてお聞かせいただけますか。
久保:1978年に京都府立医科大学を卒業して整形外科学を専攻しましたが、脊髄損傷や切断の治療を学びたくて1979年に日本リハビリテーション医学会に入会しました。
1970年代の日本のリハビリテーション医学・医療の主な対象は脊髄損傷、切断、関節リウマチ、脳性麻痺など。脳血管障害は生命予後が不良で主な対象ではなかったころです。限られた対象ではありましたが、学びの中で強く印象に残ったのは、リハビリテーション医療・医学では疾患や部位に対する機能の回復ばかりではなく、社会復帰を図り、いかにADL(日常生活動作)やQOL(生活の質・人生の質)を向上させるかという視点があったことです。この視点は他の医学・医療の分野にはないものでした。
現在、リハビリテーション医学・医療は脊髄損傷、切断、小児疾患、関節リウマチに加え、脳血管障害、運動器疾患、神経・筋疾患、心疾患、肺疾患、腎疾患、周術期、がん、聴覚・前庭・顔面神経・嗅覚・音声障害、摂食嚥下障害などすべての診療科に必要とされるようになっています(図)。

また、介護や福祉の分野でもその有効的な活用に焦点があてられています。人の生活を重要視している医学・医療であるという点が大きなポイントになっていると思います。今やリハビリテーション医学・医療は医学・医療・介護・福祉のインフラストラクチャ(基盤)と言っても過言ではありません。そのめざましい発展を続けるリハビリテーション医学・医療の中にあって40年以上在籍しているリハビリテーション医学会の理事長を2016年から6年あまり務めることになったことに大きな縁を感じています。
「活動を育む医学」が少子高齢化社会に不可欠な理由
別宮:リハビリテーション医学について、久保先生は「活動を育む医学」と定義されていますね。
久保:「活動を育む医学」という定義は 新専門医制度の開始に伴って日本リハビリテーション医学会が提唱したものです。従来の「障害を克服」という考え方を踏まえた上で、「日常の活動」「家庭での活動」「社会での活動」とさまざまなフェーズの活動を活発にさせていきます。的確なリハビリテーション診断のもと科学的根拠のあるリハビリテーション治療を行います。また、治療と同時に社会的資源(介護施設の入所、家屋調整、補助金利用など)を活用したリハビリテーション支援を行って社会生活を支援していきます。
私は、この「活動を育む医学」こそが、少子高齢化が進む我が国において不可欠な存在だと考えています。
別宮:その理由をご教示ください。
久保:リハビリテーション医学・医療には高齢者の自立を助けるという大きな役割があるためです。さらに乳児期から青壮年期まで「活動を育む」ことの重要性を理解してもらうという重要な役目もあります。将来の介護予防にもつながる役割であり、人生100年時代の到来を見据えた対応が求められる日本社会では極めて重要な存在といえるでしょう。
別宮:さらに先生は、リハビリテーション医学・医療を通じた社会貢献の一つとして、「寛容社会」の実現を掲げられています。
久保:人生は「いつか来た道・いつか行く道」です。超高齢社会では、何らかの疾患や障害を持っているのが当たり前の状況になります。複数の疾患・障害を抱えることだってまれではなくなるでしょう。その際、困難な状態に対処する術(すべ)があることは前向きの気持ちを維持するために極めて大切です。たとえ完治が無理でも、生活を維持する治療法(リハビリテーション治療やリハビリテーション手法)があることは希望につながります。
なんらかの疾患や障害と向き合う際、リハビリテーション医学・医療というよりどころがあれば、心に余裕ができ、他者にも寛容になれるのではないでしょうか。だからこそ、身体だけでなく心の健康に役立つリハビリテーション医学・医療はinclusive society(寛容社会)に貢献できる存在だと思うのです。
今のデイサービスが抱える課題とは…
別宮:先生は「医療だけでなく、介護・福祉にまで横ぐしをさせるのがリハビリテーション医学・医療」とご指摘されています。そして、介護領域において大きな受け皿となりうるのが、事業所数が多いデイサービスです。そのデイサービスでリハビリテーション医学・医療の普及を目指すにあたり、課題といえるのはどのようなことでしょうか。
久保:さきほども申し上げたように医学、医療、介護、福祉を見据えて人の活動を育んでいくのがリハビリテーション医学・医療です。介護分野でも適切なリハビリテーション手法を用いれば、効果的に利用者の活動を賦活し、自立度をあげることができます。
ただ、介護分野で行われているリハビリテーション手法は地域や施設により大きなばらつきがあり、標準的なものがありません。機能回復という大きな役割があるデイサービスでも、施設間でリハビリテーション手法の活用や取り組みには大きな差があると聞いています。
ケアマネも頭においてほしい「科学的根拠のあるリハビリテーション手法」
別宮:ご提起された課題を解決する上で、デイサービス事業所やそのスタッフは何を学び、何を心がけていく必要があるでしょうか。
久保:重要な点は、利用者に「活動を育む」という意義を理解してもらうこと。そして、科学的根拠のあるリハビリテーション手法を用いること。さらにその際にリスクを減らしていくことなどがあげられます。厚生労働省は厚生科学研究費の補助によって、リハビリテーション手法の標準化を図っていますが、その研究班の責任者の一人だった広島大学の三上幸夫教授は、2023年5月に「介護領域のリハビリテーション手法手引書」(日本リハビリテーション医学教育推進機構※発行、写真)というテキストを上梓しました。具体的に科学的なリハビリテーション手法の内容を解説した初めての書籍です。役立てていただければと思います。

別宮:ちなみにレコードブックでは「介護領域のリハビリテーション手法手引書」を参考にしたエクササイズを導入していこうと考えていますが、こうした取り組みを、さらに充実させる必要があるということでしょうか。
久保:そうですね。デイサービスの現場で、科学的根拠のあるリハビリテーション手法に基づいた取り組みを定着させるのは、少し時間がかかるでしょう。それでも今後、デイサービスの現場では機能回復訓練の質が問われるようになることは確実です。科学的根拠のあるリハビリテーション手法に基づいた取り組みを早期に開始することは、中長期的な施設の評価にもつながると考えます。
別宮:介護保険制度の要と位置付けられるケアマネジャーは、科学的根拠のあるリハビリテーション手法と、どう向き合えばよいでしょうか。
久保:最近、厚生労働省は、科学的根拠に基づいた自立支援・重度化防止といった取り組みを進めています。その代表的取り組みと言えるのが、2021年度から始まった「科学的介護情報システム」(Long-term careInformation system For Evidence)でしょう。この流れを思えばケアマネジャーはもちろん、ホームヘルパーなど、介護に関わる方はすべて、科学的根拠のあるリハビリテーション手法を意識し、知っておいていただくことが重要と思います。
(※)日本リハビリテーション医学教育推進機構:日本リハビリテーション医学会が呼びかけて、関係25団体が社員団体となって2018年に設立された社団法人。社員団体には、学術団体のほか、病院や施設などの協会団体、PT/OT/STなどの専門職の団体があり、介護領域の団体で加入を検討されているところもあります。
- 久保俊一
- 1972年和歌山県立桐蔭高校卒業。1978年京都府立医科大学卒業。1983年米国ハーバード大学留学。1993年仏国サンテチエンヌ大学留学。2002年京都府立医科大学整形外科学教授。2003年厚生労働省特発性大腿骨頭壊死症研究班主任研究者(班長)。2012年日本整形外科学会学術総会会長。2013年京都府立心身障害者福祉センター所長(兼任)。2014年京都府立医科大学リハビリテーション医学教室教授(兼任)。2015年京都府立医科大学副学長(兼任)。2016年日本リハビリテーション医学会理事長(現・監事)。2019年京都府立医科大学退官後、同大学特任/名誉教授。その他、現在、日本リハビリテーション医学教育推進機構理事長、和歌山県立医科大学特命教授、藤田医科大学客員教授、京都地域医療学際研究所(がくさい病院)所長、京都中央看護保健大学校長などを兼務。
- 別宮圭一
- 1996年株式会社アスキー入社。2000年4月 サイトデザイン株式会社入社。2001年有限会社インターネットインフィニティー(現当社)設立、取締役社長に就任。2004年、同社代表取締役社長(現任)。2009年、株式会社あいけあ(現当社)取締役。2017年6月 株式会社名鉄ライフサポート取締役(現任)
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