

CMO特別インタビュー
介護離職防止でケアマネ有志が結集、全国初の組合/大城五月(「おきなわ仕事と介護両立サポート協同組合」代表理事)
- 2024/01/29 09:00 配信
- CMO特別インタビュー
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経済産業省の試算によると、働きながら介護をする「ビジネスケアラー」の労働生産性の低下などによる経済面の損失は、2030年には9兆円を超える。望まない介護離職を防ごうと、沖縄のケアマネジャーの有志は昨年春、「おきなわ仕事と介護両立サポート協同組合」を設立した。仕事と介護の両立を支援する組合としては全国初。自身も、家族として父親の介護を支える大城五月代表理事に、組合を設立した経緯などを聞いた。

―組合を立ち上げるまでの経緯を教えてください。
ケアマネジャーの資格を取得してから5年後の2016年、沖縄市内に単独型の居宅介護支援事業所を立ち上げました。独立してみると、組織にいた時には見えていなかった、ご家族の困り事が見えるようになりました。
―それはなぜでしょう。
以前の職場にいた時も、同じことが起こっていたはずなんですけど、おそらく、“自分事”になっていなかったんでしょうね。法人の方針に従って仕事をする中で、「仕方ないよね」で終わらせていたんだと思います。
自分の決定で物事を動かせるようになると、それは「何かできないかな」という発想に変わります。2018年に保険外事業の病院付き添いサービス「ケア・シェアリング・ポノ」を始めたのは、まさにそれでした。
保険外サービスにすることへの葛藤もありました。行政からは当初、「通院介助を使えばいいのではないか」とも言われましたが、引き受けてくれる事業所はありませんでした。
付き添い時間が全て報酬になるわけではありませんし、ヘルパーさんも高齢化しています。ケアマネが通院に付き添うこともありますが、やらざるを得ないケースがほとんどで、対症療法になっています。
「ケア・シェアリング・ポノ」を始めてみると、家族が近くにいても、親の受診に付き添えないケースがあることがわかりました。これは、介護保険のケアマネをやっていた時には見えなかったことです。「会社を抜けられないので、費用を払ってでも支援を受けたい」とおっしゃる方もいました。沖縄は島なので、県外に嫁いでいる方も多く、何かあってもすぐに沖縄に来ることが難しいこともあり、「親が心配なので、受診の付き添いをお願いしたい」という依頼もありました。
活動のきっかけはケアマネとしての気づき
―2021年3月、沖縄県で第一号となる産業ケアマネの資格を取得します。
資格取得に向けて国の統計について学んでいた際、多くの方が介護離職をしている現状を知りました。きっと企業側も困っているはずなので、自社で何かサービスができるのではないかと考えました。
新サービスの立ち上げに向けて動き始めた2021年夏、沖縄県内の400社を対象に、仕事と介護の両立に関するアンケート調査を行った結果、回答した104社のうち26%が、家族の介護を理由とした従業員の離職を経験していることがわかりました。
また、従業員300人に対して、家族に介護が必要になった時、今の職場で仕事を続けられると思うか尋ねたところ、「できると思う」と回答した人はおよそ1割にとどまりました。
介護離職を防ぐため、多くの企業は、何らかの対策を講じる必要性を感じてはいますが、やり方がわからない上、ニーズを掘り起こすことに、ある種の恐怖を感じているようでした。ただでさえ人手不足の中、従業員を休ませることは、企業にとってはリスクが伴います。一方、従業員は、介護を理由に会社を辞めることに不安を感じているものの、相談先がわからないという現状も見えてきました。
そこで2022年から、仕事と介護の両立サポート「晴れるや」を開始したのですが、反響は良かったものの、なかなか思うように契約が取れませんでした。
やはり、1つの事業所だけでは信頼も弱いので、「たくさん依頼が入った時に受けられるのか」と心配する声もありました。また、ケアマネとして働いてきた中で、相談を受けることには慣れていましたが、企業側の問題点を掘り起こしたり、営業活動をしたりすることには慣れていません。
産業ケアマネやワークサポートケアマネジャーとして活動する有志4人が集い、それぞれの得意分野を生かしながら、仕事と介護の両立支援を進めようということで立ち上がったのが、「おきなわ仕事と介護両立サポート協同組合」です。
例えば、組合の副理事の中山哲郎はもともと営業マンでしたので、企業へのアプローチは得意です。「望まない介護離職を防止したい」という共通の理念を持ちながら、誰が何をするか、方法・手段を分けましょうというのが、組合を結成した一番の理由です。
なぜこの活動をしているのか考えてみると、ケアマネとしての気づきから始まっています。仕事と介護の両立支援に関わってから、ケアマネとして利用者さんと向き合う時の姿勢も変化したと感じています。
ケアマネはすごく高いスキルを持っています。利用者さんに傾聴し、寄り添いながらアセスメントを行い、サービスを提案した上で、課題解決につなげる。その能力を生かす場面が介護保険だけではもったいない気がします。
今後、他の業種がケアマネのキルの高さに気づくと思います。それに伴って、これからケアマネの働き方も変わっていくのかもしれません。
介護離職した人も復帰しやすい社会を
―ご自身も、5人の子供の育児をしながら、父親の介護を支える「ビジネスケアラー」です。
父は6年前、仕事の帰りに車にはねられ、そのまま意識が戻らなくなりました。現在は、娘の立場から主介護者である母を支えている状況です。
実は、私自身は、母の介護離職を防ぐことはできませんでした。それもあって、介護を理由に離職した人が復帰しやすい社会をつくりたいという思いが強くあります。
もちろん、介護離職を選択する人がいてもいいと思うんです。介護に専念したいのであれば、無理して両立をしなくたっていい。ただ、介護を終えた後に復帰しやすい職場がたくさんあれば、安心して目の前の介護に向き合うことができますよね。いったんキャリアを中断したとしても、40代、50代になっても、やり直せるような社会を作りたいと思っています。
これまで5社の両立支援に関わってきて感じているのは、契約されている企業には皆、共通点があるということです。
仕事と介護の両立を支援するとなると、「辞めてほしくない」という気持ちが先にあると思われがちですが、企業の方とお話すると、「従業員のために何ができるか」という思いやりを強く感じます。これまで育児の支援に取り組んできたので、「次は介護に手を打ちたい」「育児と介護の両面から支えたい」と考えているのです。正直、これは意外でした。
―この春で、組合の設立から1年を迎えます。今後、どんなことに取り組んでいきたいですか。
「両立サポート」という言葉を組合の名前にしている以上、ここに相談すれば、ある程度、仕事と介護の問題を解決できるという状態を目指したいと思っています。今は、そのための仲間づくりをしている段階です。社会保険労務士、保健師、産業カウンセラー、産業医などと連携し、お互いに相談窓口を案内し合えるような多職種連携を構築していきたいです。
企業側がすぐに支援に向けて動けなくても、行政が関わることで、困っている方は支援を受けやすくなりますし、企業側の理解も進むと思うので、行政との協働も増やしていきたいと考えています。
組合としては、産業ケアマネなどの人材育成にも取り組んでいきたいです。賛助会員の方を増やしていきたいですね。
取材・構成/敦賀陽平
- 大城五月(おおしろ・さつき)
- 1980年、沖縄県浦添市生まれ。24歳から介護の仕事に携わり、2016年、「人生晴れるや~関わる人の明日を晴れやかにする~」を理念に、沖縄市に合同会社「hareruya(ハレルヤ)」を設立。居宅介護支援事業のほか、介護保険外の事業として「病院付添サービス」や「仕事と介護の両立サポート」も行っている。プライベートでは5人の子ども育てるシングルマザーでもある。日本介護支援専門員協会のワークサポートケアマネジャーや、日本単独居宅介護支援事業所協会の産業ケアマネ2級など、多数の資格を持つ。
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