

“ケアマネ芸人”、ノン老いる小林の介護・言いたい放題
“死神ケアマネ”に変身させる?!世にも恐ろしい加算…
- 2024/02/19 09:00 配信
- “ケアマネ芸人”、ノン老いる小林の介護・言いたい放題
- ノン老いる小林
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「三途の川を渡らせない」でおなじみ、“ケアマネ芸人”ノン老いる小林です!
皆さん、4月の介護報酬改定の内容に一喜一憂していることと思います。もちろん私もです(笑)。
突然ですが、皆さん、“死神ケアマネ“をご存じでしょうか?
利用者さんの死を待つ、世にも恐ろしいケアマネ…。
今回は、あなたも“死神ケアマネ”に変身するかもしれない、あの加算について言いたい放題しちゃいます!
加算で賃上げできる!喜びもつかの間…
その加算は、2021年春の介護報酬改定で誕生しました。その名も「特定事業所医療介護連携加算」。善良なケアマネを死の世界へと誘う、世にも恐ろしい加算です…。
当時、うちの事務所は特定事業所加算(II)を取っていたので、「やった~!これで請求が伸びて、スタッフの賃上げができるぞ~!!」と、私の心は期待と喜びでいっぱいになりました。
皆さんもご存じの通り、この加算の要件は、退院・退所加算とターミナルケアマネジメント加算で構成されていて、退院・退所時の医療機関との連携が年35件以上、居宅で亡くなる方の連絡調整が年5件以上となっています。
これをクリアすれば、1件につき毎月125単位請求でき、年間○○万円の増益になって、スタッフのボーナスを増額できるっ!この思考回路で算定要件を満たすべく、ノン老いるは日々活動しました。
うちの事務所には200人以上の利用者さんがいるので、退院・退所加算35件以上、ターミナルケアマネジメント加算5件以上の要件をクリアすることは、それほど難しくないだろうと思っていたのです。ところが、なかなかどうして、思うように数字が伸びませんでした。
それでも、スタッフのボーナスアップのため、ノン老いるは懸命に、医療機関やターミナルの利用者さんとのつながりを探していました。
亡くなる2週間前に2回訪問…無理っ!
そんなある日、包括の方から1本の依頼電話がありました。その際、何気ないやり取りの中で、恐ろしい話を聞いてしまったんです…。
包「小林さん、新規お願いできますか?」
ノン「はい、どんな状況の方ですか?」
包「○○の方です。小林さんのところのように対応してくれるとこちらも助かります」
ノン「うちみたいって、他の居宅もそうでしょ。包括から新規もらわないとやっていけませんから(笑)」
包「それが最近、『支援は要らないから、重症な利用者を紹介してほしい』というところがあって…」
ノン「えっ?重症?」
包「医療連携で5件やらないといけないからって。経営的には理解できるけど、この加算、利用者さんの死を待っているみたいなところがあるから、気が進まないのよね」
ノン「ですよね…」(あれ?俺のこと?いやいや、俺は利用者さんの死を望んじゃいない!)
電話を切った後、ターミナルケアマネジメント加算の算定要件を読み返しました。
- 利用者が末期の悪性腫瘍の患者であり、在宅で死亡したこと
- ターミナルケアマネジメントを受けることについて、利用者またはその家族から同意を得ていること
- 24時間連絡できる体制を確保し、かつ、必要に応じて指定居宅介護支援を行うことができる体制を整備していること
- 死亡日及び死亡日前14日以内に2日以上、当該利用者又はその家族の同意を得て利用者の居宅を訪問し、利用者の心身の状況等を記録し、主治医及び居宅サービス計画に位置付けた居宅サービス事業者に連絡調整すること
1~3の要件を満たせば算定できると思っていたので、そう難しくないと考えていたのですが…。あれっ、4つ目の要件があるではありませんか!完全に見落としていました…。
しかも、この要件を読んでみると…無理じゃん、こんなの!!
「同意を得る」って…。亡くなる前の2週間は、利用者さんもご家族も精神的に相当大きなダメージ負っているし、亡くなった当日、ご家族から連絡があれば、「訪問していいですか?」って聞けるけど、こちらから連絡して「訪問していいですか?」なんて言えないですよね、普通。
そもそも、ご家族になんて言えばいいの?「あの~、加算がほしくて…」って、アホかっ!
三途の川を渡る2週間前と渡った当日で2回以上訪問したらお金がもらえるって…。ケアマネは三途の川の“船頭”?“死神”?なんじゃこりゃ!!
包括の方が言うように、「加算を取るために利用者の死を待つ」という表現はあながち間違いではない!ようやく話が理解できました。
疾患の制限撤廃でさらに“ひどい姿”に…
この出来事があってから、事務所であの加算について話すことはなくなりました。利用者さんの死に立ち会ってもらえるお金なんて要らないし、加算を廃止した方がいいとさえ思っていました。
ところが、残念ながら4月の介護報酬改定で、“死神ケアマネ”を生み出す加算がさらに“ひどい姿”に…。
改定前、「在宅で死亡した利用者(末期の悪性腫瘍の患者に限る。)」となっていた要件は「在宅で死亡した利用者に対して、終末期の医療やケアの方針に関する当該利用者」に変わりました。対象が広がったことに伴い、算定件数も年15件以上に増えました。
厚労省の官僚さんたちは、利用者さんの墓場まで行かせてケアマネに支援させたいのでしょうか?
官僚さんの声が聞こえてきそうです。
「ケアマネよ、物価高騰で給与も上がらず大変だな。だからこうやって稼げるようにしてやったから、たくさん稼げよ~」
官僚さん、こんなところに介護報酬を充てるんなら、この加算を廃止して、その分のお金を基本報酬に上乗せしてください!その方が、ケアマネさんたちは高い意識で働くと思いますよ。

- ノン老いる小林
- 1964年静岡市生まれ。大学卒業後、高校の英語教師として働いていたが、40歳という人生の節目を間近に控えた38歳の時、介護保険制度の創設を好機と捉えて転職。その後、介護施設を中心に経営支援などを行う。2013年にケアマネジャー、19年に主任ケアマネジャー取得。現在、静岡市内で居宅介護支援事業所「ケアプランはるな」を運営する株式会社はるな代表取締役。介護技能実習評価試験評価者のほか、セーフティマネジメントなど介護研修の講師も務めている。東京演芸協会理事。出演情報は同協会のホームページ。
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