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結城教授の深掘り!介護保険

利用者負担割合の引き上げがケアマネにもたらすもの

粘り強く2割を求め続ける財務省

2018年4月25日、財政制度等審議会の財政制度分科会で「制度の持続可能性や給付と負担のバランスを確保する観点から、介護保険サービスの利⽤者負担を原則2割とするなど、段階的に引き上げていく必要」という提言がなされた。財務省がこの趣旨の提言をするのは今回が初めてでない。3年おきの介護保険法改正に合わせて、粘り強く「原則2割」の実現を求め続けてきた。今回の提言は2021年度に予定される介護保険法改正に向けたものだ。

その後、6月15日に閣議決定された骨太方針では、「所得のみならず資産の保有状況を適切に評価しつつ『能力』に応じた負担を求めることを検討する」とする方針が示された。財政制度等審議会の提言がそのまま受け入れられたわけではないが、21年度の介護保険法に合わせ2割負担の範囲がどこまで拡大されるか、予断を許さない状態が続いている。

「原則2割」がもたらす「財源」

それにしても、なぜ、財務省はそこまで粘り強く「原則2割」にこだわり続けているのか―。この点は、財源面から考えると分かりやすい。

来月から利用者負担が3割に引き上げられる人も出始めるが、実際は、介護保険サービスを利用している人の約90%が1割負担だ。2割及び3割負担者は全体に占める約10%に過ぎない。

そして、介護保険の総費用の約11.1兆円のうち、利用者負担分の財源は約0.8兆円だ。そのため、「原則2割」が導入されると、大体0.5兆円から0.6兆円の財源効果が期待できるだろう。

0.5兆円がどのくらいのお金かをイメージするため、直近の介護報酬改定に置き換えて考えてみる。18年4月の介護報酬改定は全体で0.54%のプラス改定だった。そのプラス分を金額に直すと約500億円だ。0.5兆円とはその10倍。単純におきかえれば、5%のプラス改定を実現できるカネということになる。

ちなみに介護保険制度が始まって18年、プラス5%などという大幅なプラス改定が実現したことは一度もない。「原則2割」がもたらす財源効果は、それほどの大きなものなのだ。

1割負担が維持される低所得者の基準は?

既に述べた通り、「原則2割」が導入されるかどうかは、まだ予断を許さない状況だ。ただ、一部に2割負担が導入されてからわずか3年後、さらにその一部に3割負担が導入されることが決まった。この経緯と財源効果の大きさを思えば、今から3年後に「原則2割」が実現しても何の不思議もない。

そこで今回は、「原則2割」が仮に導入される方向となった時に注目すべきポイントについて先読みしてみたい。

「原則2割」の導入とは、具体的には、「一部の高所得者を除き、1割負担」という現状が「一部の低所得者を除き、2割もしくは3割負担」に変わるということだ。

そこで問題となってくるのが「一部の低所得者層」というカットラインの設定だ。過去の議論の経緯などを踏まえると、具体的にはおおよそ次のカットラインが考えられる。

  1. 「市町村民税世帯全員が非課税(年収約155万円)」。高齢者層全体の70%が2割もしくは3割自己負担の対象。
  2. 「世帯全員が市町村民税非課税かつ本人年金収入等80万円以下(生活保護受給者含む)」。高齢者層全体のうちの80%が2割もしくは3割自己負担の対象。

そのほか「モデル年金(厚生年金)198万円」、「平均的消費支出(無職高齢者単身世帯)170万円」なども考えられる。

ちなみに現在、2割負担や3割負担担と1割負担の分岐点は、「年収約280万円以上」の高齢者。この基準では、全高齢者の約20%が2割以上の負担となる。

現在の「2割」の基準にすら反発する現場のケアマネ

ただし、これらのカットラインを介護の現場がすんなり受け入れられるとは、ちょっと考えにくい。

3年前、私が在宅のケアマネジャーを中心に行ったアンケート調査の結果では、半数以上のケアマネが「2割負担=280万円以上の収入」という基準を維持すべきと答えた。その上、その基準をさらに引き上げるべきとの回答も多かった。

自由意見としては、「利用者の生活全般が厳しくなる」という声が数多く寄せられた。

この結果を見れば、現場のケアマネらは、2割負担のカットラインを引き下げることに強く反発する可能性が高い。

「原則2割」が招く孤立の増加

仮にこうした現場の声に耳を閉ざし、「原則2割」の導入を強行したとしても、サービスの利用回数も半分に減らそうとする高齢者も出てくるだろう。なかには、サービスの利用そのものを取りやめてしまう人だって出てくるかもしれない。

今後、介護や医療の保険料は定期的に上がっていく上、消費増税も断行される。一方で、年金収入が増えることはまずありえない。つまり、高齢者の可処分所得は年を追うごとに、確実に目減りしていく。そんな中で、介護保険サービスの負担は2倍に跳ね上がるのだ。

こうした懸念を口にすると、「介護はどうしても必要なサービスだから、多少値段が高くても利用するはず」と反論する人もいる。確かに収入に余裕がある世帯が対象なら、その考え方も通用するだろう。ただし、すべての高齢者に、その考え方が通じるとはとても思えない。私自身、高齢者現場で相談員の仕事に従事していた際に聞いたことだが、家計が厳しい高齢者世帯では、香典を捻出できず、知人の葬式への出席すらも諦めることがあるのだ。

知人との永(なが)の別れすらも諦めざるを得ないほどひっ迫した高齢者が、料金が急に倍になった介護サービスばかりは今まで通り利用し続ける―。そんなことがあり得るだろうか。やはり、さらなる2割負担の対象の拡大は、サービスの利用控えや中止に直結すると考えるのが妥当だろう。

多くの高齢者にとって、デイサービスやヘルパーサービスの利用控えや中止は地域社会から孤立を意味する。そして地域から孤立し、自宅に閉じこもる高齢者が増えれば、誰にも看取られることなく孤独死し、腐乱死体となって発見される高齢者も増加するだろう。

ケアマネの業務や財源への悪影響も

ケアマネにとっても、サービスを利用する人の減少は顧客の減少に直結する。また、中重度者や孤立した高齢者が増えるということは、対応が困難な高齢者が増えることに他ならない。ケアマネにとっても2割負担の拡大がもたらす影響は、対岸の火事とは言えないくらいに重いのだ。

さらに言えば、報酬単価が高い中重度者の増加は、財源面でも歓迎できることでない。下手をすると財源確保が期待できると踏んだ2割負担の拡大が、逆に財源を圧迫する遠因となりかねない。

まとめると、原則1割負担という介護保険制度が掲げてきた「原則1割負担」は、低額な負担で在宅要介護者がサービスを提供することにより、高齢者に公平な社会との繋がりを保障してきた。「原則2割」の導入は、そうした機能を低下させてしまう危険性があると言わざるを得ない。

結城康博
1969年、北海道生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒、法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)。介護職やケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護系の仕事に10年間従事。現在、淑徳大学教授(社会保障論、社会福祉学)。社会福祉士や介護福祉士、ケアマネジャーの資格も持つ。著書に岩波ブックレット『介護職がいなくなる』など、その他著書多数がある。

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