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「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」に期待すること、期待できないこと

4月15日、厚生労働省の「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」(検討会)が初会合を開いた。ケアマネジャーとケアマネジメントに関わる、あらゆることに深く関わる注目すべき検討会である。今回は、この検討会に期待すること、そして期待できないことを、筆者の個人的見解を交えて述べていきたい。

検討会の資料によれば、主に議論されるのは「ケアマネジャーの業務の在り方」「人材確保・定着に向けた方策」「法定研修の在り方」「ケアマネジメントの質の向上に向けた取り組みの促進」であるという。当然ながら、この検討会で取りまとめられた内容の一部は、2027年度に施行が予定される改正介護保険制度に反映され、今後のケアマネジメントの在り方を大きく変えていくだろう。

ケアマネ「ただ働き」解消のために業務範囲を明確に!

最初に期待したいことは、主に在宅ケアマネジメントの業務範囲の明確化だ。

現場のケアマネであれば、一度は「これがケアマネの仕事なのか?」といった業務を担ったことがあるはずだ。具体的には、「通院介助(緊急時除く)」「役所関連の書類対応」「電球の取り換えなどの生活支援」「銀行預金の引き出しの付き添い」などなど。いずれも本来のケアマネジメント業務とは、ややかけ離れているものでありながら、独居高齢者や老夫婦世帯などにとっては、不可欠な業務だ。それだけに、自分が担当する利用者がこうした困っていると、いたしかたなく支援してしまうケアマネも多いだろう。

その結果、高齢者や家族から、さらにさまざまな業務―それこそ、ペットの散歩とか、庭の除草とか―をまかされてしまい、文字通りの「何でも屋」になってしまっている人もいるのではないか。

こうした状況を少しでも解消するためにも、検討会においてケアマネや主任ケアマネの業務範囲をしっかり明示し、「ただ働き」をしてしまう(というか、せざるを得ない)ケアマネの負担軽減につなげていただきたい。

管理者の主マネ管理者要件の見直しを見据えた議論を

居宅介護支援事業所の管理者は、2027月4月以降、主任ケアマネの資格を保持することが完全な義務となる。

ここで改めて考えてみたい。「はたして居宅介護支援事業所の管理者が主任ケアマネの資格を持っている必要があるだろうか?」ということを。

主任ケアマネとは「他の保健医療サービス⼜は福祉サービスを提供する者との連絡調整、他の介護⽀援専⾨員に対する助⾔、指導その他の介護⽀援サービスを適切かつ円滑に提供するために必要な業務に関する知識及び技術を修得することを⽬的として⾏われる研修を修了した者」(【施⾏規則第140条の66第1号、第140の68第1項第1・2号】)である。主任ケアマネの資格を取るための研修も、この規則に則っている。

いいかえれば、主任ケアマネとは、ケアマネジメントに精通したスペシャリストであっても、事業所の経営・管理に長けたゼネラリストではない。そして、名選手が名監督にはならないのと同様、優れたスペシャリストが優れたゼネラリストになるとは限らない。検討会でもこの現実を踏まえ、管理者要件の見直しにつながるような取りまとめをしてほしい。ちなみに、私としては居宅介護支援事業所の管理者を主任ケアマネに限定する必要はないと考えている。

なにより必要なのは「ケアマネ試験の受験資格の変更」

今回の検討会でも重要なテーマとなっているケアマネの不足は、介護業界だけでなく日本の地域社会にも悪影響をもたらしつつある。その要因は多々あるが、大きな理由と言えるのは、2018年度のケアマネ試験で導入された受験資格の厳格化だ。

厳格化の目的は、ケアマネジメントの質の担保だった。だが、高齢化が進行し、ケアマネジメントへのニーズが高まっている社会で、ケアマネを志す人の門戸を狭めたことにより、ケアマネ不足は一気に加速したといえる。

これまでも何度か書いてきた通り、ケアマネジメントの質の担保は「試験」や「初回研修」でなされるべきである。そして、受験資格の厳格化を見直して第20回(17年度)時の仕組みに戻すべきである。

検討会の取りまとめには、ぜひ、この内容を盛り込んでほしい。

図:介護支援専門員実務研修受講試験の受験者数及び合格者数の推移
厚労省:ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会(第1回)「ケアマネジメントに係る現状・課題(参考資料)」2024年4月15日7頁より作成

ケアマネ不足対策といえば、どうしても欠かせない施策は処遇改善の実現だろう。だが、この施策は財源論と関連する。そのため、この検討会での議論は難しいのではないだろうか。ただ、極めて可能性は低いが、「ケアマネジメントの有料化」と「ケアマネの処遇改善加算の創設」をセットで議論すれば、検討会の枠組み内でも、財源論とセットで「ケアマネの処遇改善加算の創設」を提唱できなくもない。

法定研修、せめて「費用負担軽減」の提言を

もう一つ、大きなテーマとして掲げられている「法廷研修の在り方」については、何らかの改善点は議論されると考えられる。だが、根本的な負担軽減となるような結論が導き出されるかどうかは未知数だ。まして筆者の持論である「ケアマネ更新研修の廃止」といった議論は絶対になされず、むしろ、改めて更新研修の維持が確認される可能性が高い。

実際、15日の初会合では更新研修の廃止を求める声について「極論」と評した委員はいたものの、前向きに取り上げた委員はいなかった。

この点については、せめて法定研修の費用負担は軽減すべきとの提言を期待したい。

さらに「適切なケアマネジメント手法」の普及についても議論されることが予測されるが、筆者は、ICTなどの活用についての議論に着目したい。24年度の法改正でハードルの高い条件付きとはいえ、49件まで1人のケアマネが担当しても基本報酬が減算されない仕組みが導入された。しかし、ケアプランデータ連携システムやテクノロジーの活用が、ケアマネジメントの質にどのように影響するかについては、まだはっきりしていない。それだけに、今回の検討会では、現在のICT化技術レベルの限界についても議論し、取りまとめに盛り込むことを期待したい。

プラン有料化の是非、議題にはなっていないが…

最後に、第10期計画が始まる27年度までに結論を得るとされている「ケアマネジメントの有料化」の導入の是非が、この検討会で扱われるかどうかも考えてみたい。15日の初会合では、このテーマを扱う方針は示されなかった。そのため、この検討会が真正面からケアマネジメントの有料化の是非を議論することはないだろう。だが、既に述べた通り、処遇改善の方策を探る議論の流れで、ケアマネジメントの有料化が浮上する可能性がないとは言い切れない。念のため、この動きも踏まえながら議論の推移を見ていくべきであろう。

結城康博
1969年、北海道生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒、法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)。介護職やケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護系の仕事に10年間従事。現在、淑徳大学教授(社会保障論、社会福祉学)。社会福祉士や介護福祉士、ケアマネジャーの資格も持つ。著書に岩波ブックレット『介護職がいなくなる』など、その他著書多数がある。

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