

小濱道博の介護経営よもやま話
ケアプランにも影響? 居宅のLIFE加算
- 2022/07/25 09:00 配信
- 小濱道博の介護経営よもやま話
- 小濱道博
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厚生労働省は昨年10月~今年1月、訪問系サービスと居宅介護支援を対象に、LIFE(科学的介護情報システム)の活用に向けたモデル事業を実施した。これは、2024年度の介護報酬改定における加算の創設を念頭に置いたものである。
LIFEは、利用者の状態やケアの内容などのデータを提出すると、分析・評価結果となるフィードバック票が提供される仕組みだが、居宅介護支援については、ケアプランに関するデータを直接提供することは想定されていない。
モデル事業では、ケアプランに位置付けられたサービスの担当事業者が、サービス担当者会議におのおののフィードバック票を持ち寄り、それを事業者間で共有・検討し、必要に応じてケアプランに反映させるという活用方法が取られた。
この形式が、居宅介護支援におけるLIFE加算の算定要件になるのであれば、担当事業者がLIFEを活用していない場合、ケアプランへの位置付けに影響が出ることも予想される。すなわち、LIFEを活用してない事業者は、ケアマネジャーに選ばれにくくなる可能性がある。
訪問系サービスと居宅介護支援にLIFE加算が新設されれば、ほぼ全ての介護サービスにLIFE加算が導入されることになる。その先には、医療データベースとの連動も計画されており、今後、LIFEはさらにレベルアップしていくだろう。介護事業を営む限り、居宅介護支援事業所においても、決して無視できないツールであることを理解する必要がある。
フィードバック票の不具合は未解消
LIFEは5月30日のメンテナンスをもって、事業所へのフィードバックのみだが、グラフ化されたフィードバック票が提供されるようになった。それまでは、集計値の羅列のみの暫定版だった。現在は「科学的介護推進体制加算」の分だけではあるが、順次、他のサービス区分にも広がっていくだろう。
一方、期待されている利用者個人のフィードバック票については、「年内の提供は難しそうだ」との声も聞こえてくる。
LIFEの運営会社が東芝からNECに切り替わった影響で、4月1日から5月18日までの約1カ月間、LIFEの「お問い合わせフォーム」などが一時ストップした。5月30日のメンテナンスは、それが明けた直後の出来事だった。
前述の通り、5月30日から、事業所フィードバックが行われるようになった。しかし、半年前からデータを提供していないと、全国平均値が表示されるだけで、本来のフィードバックの体をなしていない。
「科学的介護推進体制加算」では、最低でも6カ月に1度、LIFEにデータを提供する必要がある。
しかし、中間月であっても、新規利用者の開始月のデータや利用停止者の最終月のデータを送信しなければならない上、その時点の既存の利用者のデータを提供することもできるようになっている。この時、服薬や誤嚥性肺炎、褥瘡などの情報が直近月の集計結果に反映される。
ところが、中間月における褥瘡などの新規発生情報が集計データに反映されないなど、異常値が発生していることが、厚労省が5月30日に通知した留意事項で明らかになった。
LIFEへのデータ提出をめぐっては、昨年4月のスタート時に起こったトラブルの長期化に伴い、猶予期間が設けられ、これを活用して同4〜7月分のデータを一括提出した場合、7月より前のデータは集計結果に反映されず、利用者総数が実際の集計対象とは異なる数字になっている。
こうした経過を見ても、LIFEへの信憑性が低い状況であることは否めないが、これは時間が解決してくれるだろう。
それでもLIFEを活用すべき理由
LIFEの目的の一つは、ケアの質の向上にある。その結果として、リハビリなどの成果を高めることも期待されているが、現実的には、LIFE加算を算定するためだけにデータを提供している施設や事業所もあるだろう。
フィードバック票が不十分な現状では、そう考えてしまうのも致し方ないといえる。しかし、長い間サービスを提供しているうちに、利用者への気付きが徐々に減り、一方向からしか見ないことも多いのではないだろうか。
LIFEを活用して「科学的介護提供体制加算」を算定する中で、職員自らが「Barthel Index」で利用者のADLを評価し、「DBD13」(認知症行動障害尺度)で認知症ケアを測定し、BMIや口腔ケアの内容を精査する。これまで、こうした取り組みを実施してこなかった事業所も多いことだろう。
LIFE加算の算定が目的であったとしても、定期的に利用者の状況を複数の指標で評価する習慣を身に付けることは、個々の事業所や施設のスキルアップのみならず、ひいては介護業界全体の底上げにつながる。もちろん、担当する職員が直接データを入力することで、新たな気付きも生まれるだろう。LIFEに多くのプラス効果があることをご理解いただければと思う。
LIFE活用が加算算定の必須要件に!?
昨年春の介護報酬改定では、リハビリ・機能訓練、口腔ケア、栄養改善に関連する新設の加算の算定要件にLIFEへのデータ提出とその活用が入り、既存の加算についても、LIFEに関する新たな区分が設けられた。
今後新設される加算は、LIFEを活用していないと算定できなくなる可能性が高い。さらに既存の加算に関しても、次回の改定でLIFEの活用が算定要件に加わることが想定される。現に、「ADL維持等加算」「褥瘡マネジメント加算」「排泄支援加算」については、昨年春の改定時にLIFEの活用が算定要件となった経緯がある。
LIFEというエビデンスが確立することのメリットも大きい。これまでは、自分たちが提供するサービスの質を客観的に評価することができなかったため、事業所や施設の方針を受け入れざるを得なかった。しかし、LIFEの活用が軌道に乗ると、全国規模でサービスの質を比較できるようになり、サービスの標準化が進むことが期待される。
利用者やその家族も、優良なサービスを提供する事業者を選べるようになり、全国標準に届かないサービスを提供する事業所や施設は淘汰されていくだろう。
ただ、LIFEの活用はあくまでも手段であって、その先にケアの質の向上や職員のスキルアップがあることを理解しておく必要がある。
LIFEの活用によって、一定の周期で栄養、リハビリ、排泄、褥瘡、自立支援などの評価を、介護現場や専門職の協働によって行われるのは良いことである。その結果として、多職種間のコミュニケーションが改善され、共通のルールの下で情報共有ができるようになり、それをケアに反映できるメリットが生まれる。
LIFEの活用はもはや時代の流れである。のんきに構えていると、取り残されることになるだろう。

- 小濱道博
- 小濱介護経営事務所代表。株式会社ベストワン取締役。北海道札幌市出身。全国で介護事業の経営支援、コンプライアンス支援を手掛ける。介護経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。個別相談、個別指導も全国で実施。全国の介護保険課、介護関連の各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター等主催の講演会での講師実績も多数。C-MAS介護事業経営研究会・最高顧問、CS-SR一般社団法人医療介護経営研究会専務理事なども兼ねる。
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