

小濱道博の介護経営よもやま話
改定直前!居宅が注意すべきポイントをまとめて解説
- 2024/03/29 09:00 配信
- 小濱道博の介護経営よもやま話
- 小濱道博
-
4月の介護報酬の改定に向け、厚生労働省は、運営基準の解釈通知、報酬算定に関する留意事項通知、改定に関するQ&Aを出し、ようやく改定の全体像が見えてきた。今回は、居宅介護支援の改定内容のうち、特に注意してほしいポイントに絞って解説したい。
ターミナルケアマネジメント加算については、疾患の制限がなくなる。これまでは末期がんのみであったので、対象が大きく広がることになる。
これに合わせて、特定事業所医療介護連携加算の算定要件において、ターミナルケアマネジメント加算の算定回数の要件が、現行の「年5回以上」から「年15回以上」へと一気にハードルが上がる。いくら対象疾患が緩和されるとはいえ、15回は非常に厳しい。小規模事業所は確実に算定が困難になった。
ターミナルケアマネジメント加算の算定要件である死亡日の居宅訪問は、現実的に厳しい。看取り期に入った利用者のケアプランを見直す必要はほとんどなく、静かに旅立ちを見守るだけである。
亡くなる前の訪問の理由すらないとなると、死亡日に訪問する理由はなおさら示しにくい。そもそも、死亡日は家族も多忙で、ケアマネジャーの訪問自体歓迎されない。年15回の算定は、ケアマネジャーの在籍人数が多い大規模事業所でない限りは難しいであろう。
とはいえ、ターミナルケアマネジメント加算は月400単位、特定事業所医療介護連携加算は月125単位である。可能な限り、死亡日に訪問できる体制をシステムとして構築し、算定を目指すべきである。
情報連携関連の加算の変更点
6年に1度の医療と介護の同時改定に伴い、情報連携関連の加算の要件も変更が加えられた。
まず、入院時情報連携加算は、情報提供期日の要件が変わる。
現行は、入院後3日以内(200単位)と入院後7日以内(100単位)だが、入院当日(250単位)と入院後3日以内(200単位)に再編され、情報提供期日の要件も短くなる。入院から7日も経てば、病院は既に準備を終えており、遅すぎることが理由である。
では、新たな報酬区分はどちらを算定すべきか。これは圧倒的に入院当日(250単位)であろう。単位が増えることもあるが、算定そのものがしやすくなっているのだ。
現行の算定要件では、入院日より前の情報提供は不可となっている。体調の急変による緊急搬送でなければ、通常は持病関連による予定入院であり、1週間以上前から入院日はわかっている。その間に情報提供すれば良いのであるから、余裕を持った対応ができるであろう。なんらかの理由で入院日より前に情報提供できなかった場合は、3日以内の報酬区分に切り替えれば良いだけだ。
もう1つ、通院時情報連携加算の要件も見直される。
この加算は前回、2021年度(令和3年度)の改定で創設され、利用者の通院にケアマネジャーが同行し、主治医師と情報交換することで、月50単位算定できる。4月以降、この通院同行の対象に歯科医師も加わる。
新年度、ケアマネジャーの法定研修カリキュラムが見直され、誤嚥性肺炎マネジメントが大きく取り上げられる。誤嚥性肺炎は、高齢者の死亡要因の上位を占め、その予防において口腔ケアは重要であり、ケアプランにそれをしっかりと位置付けることが求められる。
通院時情報連携加算の要件の見直しにより、歯科医師との連携の重要性が改めて示されたといえる。
このように、加算の取得を検討する際は、その意味や背景を理解することが大切である。
口腔ケアに関しては、訪問系サービスに口腔連携強化加算が創設される。この加算は、事業所の職員が利用者の口腔状態を評価し、その結果を歯科医師と担当のケアマネジャーに報告することで、月1回50単位算定できる。これにより、ケアマネジャーは毎月、利用者の口腔状態を把握し、口腔ケアを適切にケアプランに位置付けることが可能となる。
大幅増の減算、居宅の注意点は?
4月から、BCP(業務継続計画)策定と高齢者虐待防止措置に未対応の事業所に減算が適用される。業務継続計画未策定減算と高齢者虐待防止措置未実施減算で、前者は施設・居住系サービスは3%減算、それ以外のサービスは1%減算、後者はいずれも1%減算となる。
居宅介護支援の場合、業務継続計画未策定減算の適用は特例によって1年猶予されるが、高齢者虐待防止措置未実施減算は4月から適用される。
注意すべき点は、BCP策定の義務化が4月から始まることに変わりはないということだ。減算にならなくとも、運営指導の際、運営基準違反として指導対象となる。高齢者虐待防止措置と併せて、年度内に対応を終えておくべきだ。
高齢者虐待防止措置未実施減算は、▽委員会の開催▽指針の整備▽研修の定期的な実施▽専任の担当者の設置―の4つを実施していない場合に適用される。
委員会の開催と研修の定期的な実施については、厚労省のQ&A(疑義解釈)において、少人数の事業所も義務を免れないとされており、1人ケアマネ事業所や少人数の事業所は、他の事業所との共同開催などを模索する必要がある。
居宅介護支援においては、同一建物減算も創設される。事業所の所在する建物と同一敷地内、または隣接する建物に居住する利用者は1名から、同一建物に居住する利用者は20人以上から適用される。減算率は5%だが、次回の改定で訪問介護と同様、10%まで引き上げられる可能性が高い。
さらに、緊急時のやむを得ない場合の身体拘束に関する記録の作成も義務化され、▽身体拘束の態様▽拘束時間▽利用者の心身の状況▽緊急のやむを得ない理由―の4点について、利用者ごとに記録する必要がある。今回は減算にはならないが、次回改定で減算となる可能性が高いだろう。
これから収入を確保する上で、加算の算定はより重要なテーマとなっていくだろう。
加算とは、国が介護事業者に求めるハードルに報酬を付けたものだ。加算をより多く算定する事業所・施設は、質の高さで国のお墨付きを得ることができる。裏を返すと、加算を算定できないということは、国の求めるレベルに達していない、質の低い事業所ということだ。そのことを改めて理解しておく必要がある。

- 小濱道博
- 小濱介護経営事務所代表。株式会社ベストワン取締役。北海道札幌市出身。全国で介護事業の経営支援、コンプライアンス支援を手掛ける。介護経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。個別相談、個別指導も全国で実施。全国の介護保険課、介護関連の各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター等主催の講演会での講師実績も多数。C-MAS介護事業経営研究会・最高顧問、CS-SR一般社団法人医療介護経営研究会専務理事なども兼ねる。
スキルアップにつながる!おすすめ記事
このカテゴリの他の記事
こちらもおすすめ
ケアマネジメント・オンライン おすすめ情報
介護関連商品・サービスのご案内
ケアマネジメント・オンライン(CMO)とは
全国の現職ケアマネジャーの約半数が登録する、日本最大級のケアマネジャー向け専門情報サイトです。
ケアマネジメント・オンラインの特長
「介護保険最新情報」や「アセスメントシート」「重要事項説明書」など、ケアマネジャーの業務に直結した情報やツール、マニュアルなどを無料で提供しています。また、ケアマネジャーに関連するニュース記事や特集記事も無料で配信中。登録者同士が交流できる「掲示板」機能も充実。さらに介護支援専門員実務研修受講試験(ケアマネ試験)の過去問題と解答、解説も掲載しています。



