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結城教授の深掘り!介護保険

24改正へ、政府が「本音」をむき出してきた!

先月29日、政府の経済財政諮問会議(※)で「令和5年度の予算の全体像」が示された。そこには「介護の利用者負担見直し」という言葉が盛り込まれていた。令和に入って以降の同会議の予算関連の資料を確認したところ、「介護の利用者負担見直し」に言及した例は、今回の文書以外では見当たらなかった。ならば、この「介護の利用者負担見直し」とは何を意味するのか―。今月は、このポイントを深掘りする。

抽象的な「霞ヶ関文学」を丹念に読み解くと…

まずは、先に提示された「令和5年度の予算の全体像」のうち、高齢者施策に関する資料を確認したい。注目すべきは、以下の2カ所だ。

  • 「セルフメディケーションの推進、ヘルスリテラシーの向上、インセンティブ付けなどを通じた、予防・重症化予防・健康づくりの推進、利用者負担見直しを含む介護保険の持続性確保」
  • 「給付と負担のバランスの確保、現役世代の負担上昇の抑制、マイナンバーの利活用、後期高齢者医療制度の保険料賦課限度額の引上げを含む保険料負担の在り方等各種保険制度における能力に応じた負担の在り方等の総合的な検討」
 

いずれも一読しただけでは、具体的に何をしようとしているのか、はっきりしない。だが、官僚お得意の言いまわしである「霞ヶ関文学」では、よくわからない抽象的な一文に、とんでもない意味を持たせていることがある。

そこで、1.と2.の単語を細かく読み解いてみた。

まず注目される「利用者負担見直し」。その直後に介護保険の持続性確保という言葉がある以上、この見直しが、「介護保険制度を維持するために利用者の負担を増やす」という意味であることは、疑う余地はない。

そして、直近の財政制度等審議会(財政審)の議論などを思えば、利用者の負担を増やすためのメニューが「ケアプラン有料化」「原則2割負担の実現」あたりを念頭に置いているといえるのではないか。

また1.では「予防・重症化予防・健康づくり」を推進するとしている。この部分は、繰り返し財政審が提言している「要介護1・2における訪問介護及び通所介護の総合事業化」と捉えて差し支えないだろう。

さらに2.では「後期高齢者医療制度」を引き合いに出しながら「各種保険制度」で「能力に応じた負担の在り方」を検討すると強調している。この一文は、「介護保険制度においても利用者負担増は避けられない」という、ダメ押しの一文といえる。

「2割負担の対象者拡大」と「ケアプラン有料化」、そして「要介護1・2における訪問介護及び通所介護の総合事業化」は、過去にないくらいに現実味を帯びたといえる。

後期高齢者医療制度と同じ基準まで拡大か-2割負担対象者

さらに、「令和5年度の予算の全体像」の行間を掘り下げ、政府が目指す「利用者負担増」と「ケアプラン有料化」の具体像を探ってみたい。

まずは「利用者負担増」から。「令和5年度の予算の全体像」では、後期高齢者医療制度に言及している。ここに、介護保険制度も後期高齢者医療制度と同じ流れを作ろうとしている気配がうかがえる。

今年10月から「課税所得が28万円以上かつ『年金収入+その他の合計所得金額』が200万円以上」の単身の75歳以上高齢者は、医療の窓口負担が1割から2割に引き上がる。これは、既に3割自己負担層を除く被保険者層(約1815万人)の20%だ。

政府は、この後期高齢者医療制度の新基準を、介護保険制度の2割負担対象者の新たな基準にしようとしているのではないだろうか。

定額制で実現?-ケアプラン有料化

続いて、「ケアプラン有料化」について。こちらは「令和5年度の予算の全体像」をいくら探しても、具体的な制度設計につながるヒントは見つからない。

ただ、昨今の議論の動向を見ると、1割自己負担ではなく「定額制」が導入される可能性があるように思う。例えば、一律1000円のケアプラン有料化といったことが考えられる。

居宅介護支援事業所の中には、特定事業所加算を算定している事業所も多い。そして、他のサービスと同様の自己負担を導入すると、特定事業所加算を算定できる事業所ほど、料金がかさんでしまうことになる。その結果、熱心で体制が整っている事業所ほど、料金が高くなり、要介護者から敬遠されてしまう恐れがある。

定額制であれば、そうしたリスクを回避することが可能だ。

ちなみに私自身は、一部の利用者の権利意識を増長させ、「無駄なサービス」利用を増やしかねないケアプラン有料化は、断固反対である。

導入が見送られたか、用具のみプランの報酬削減

既に述べた通り、「ケアプラン有料化」も「2割負担の対象者拡大」も、財政審が実現を求めていたものだ。そして、同じように財政審が実現をもとめていた改正案として「福祉用具のみのケアプラン(用具のみプラン)の介護報酬削減案」があった。

だが、「令和5年度の予算の全体像」には、この案の実現につながるような文言はなかった。さらに先月27日の「介護保険制度における福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会」に、厚生労働省が示した中間取りまとめ案にも、用具のみプランに関する記載は、ほとんどなかった。

このことから当初、財務省が提言していた「用具のみプランの報酬削減策」は、見送られたと理解していいのではないだろうか。

内閣支持率も影響する可能性

先の参院選の勝利によって「黄金の3年間」を獲得した政府が、利用者負担増という「本音」をむき出しにしたことで、一気に現実味を帯びた「ケアプラン有料化」。むろん、これは2024年度に予定される介護保険法改正を見据えた動きだ。そして同じタイミングで「2割負担の対象者拡大」や「要介護1・2における訪問介護及び通所介護の総合事業化」が実施となれば、居宅介護支援の現場にも、とてつもない影響が及ぶだろう。

だが、「ケアプラン有料化」も「2割負担の対象者拡大」も、政府の思惑通りに実現できると言い切れない要素も残されている。

特に注目すべきは、内閣支持率の動向だ。直近では、「旧統一教会と自民党との繋がり」などの報道が影響してか、内閣支持率がやや低下傾向にある。この流れが加速化し、来年の改正介護保険法が国会で議論される時期まで長引けば、安易に「利用者負担」を拡大させる施策は導入しにくくなるだろう。

※内閣府に設置されている「重要政策に関する会議」の一つ。経済財政政策や予算に関する重要事項について調査審議する。議長は内閣総理大臣が務める。

結城康博
1969年、北海道生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒、法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)。介護職やケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護系の仕事に10年間従事。現在、淑徳大学教授(社会保障論、社会福祉学)。社会福祉士や介護福祉士、ケアマネジャーの資格も持つ。著書に岩波ブックレット『介護職がいなくなる』など、その他著書多数がある。

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