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居宅が包括の「窓口」に?!-期待外れで理念なき厚労提案を読み解く

11月14日、厚生労働省は社会保障審議会介護保険部会に、地域包括支援センター(包括)の業務負担軽減を目的とした、いくつかの施策案を示した。そして24日、同部会で本格的にその案が議論された。

一言で言って、厚労省の提案は衝撃的だった。期待外れで理念なき提案、という点において。

このままでは最悪の未来しか描けない―包括の「窓口」化

特に衝撃的だったのは「センターの専門性を活かした総合相談支援業務の効果的な実施の観点から、一般的な相談は高齢者にとって身近な地域でのつながりのもとで行うことができるよう、各地域で行われている取組を参考にしつつ、居宅介護支援事業所や小規模多機能型居宅介護事業所など地域密着型の拠点をブランチやサブセンターとして活用することを推進してはどうか」という提案だ。

この寄稿でも何度か述べた通り、既に全国でケアマネ不足が顕在化しつつある。そんな中、部分的であっても居宅が包括の「窓口」(あるいはサブセンター)と位置付けられてしまえば、どうなるか―。

仮に「窓口」やサブセンターを請け負うのが任意であれば、業務を請け負う居宅はほとんど現れないだろう。一方、「窓口」やセブセンターを請け負うことに何らかの強制力を働かせたり、強い政策誘導(例えば、高い報酬設定など)を導入したりすれば、要介護者へのケアマネジメントを減らしてでも対応しようとする居宅が出てくるかもしれない。その結果、顕在化しているケアマネ不足は、一気に深刻化するだろう。

無意味な施策に終わるか、あるいはケアマネ不足を加速させるか。残念ながら、居宅を包括の「窓口」にしようとする施策の先には、そんな最悪の未来しか予想できない。

ちなみに、この提案を強引に実現すると、無理をしてでも「窓口」を担った一部の居宅が、包括から過度な優遇を受ける可能性が出てくる。かつて包括が特定の居宅ばかりに新規利用者を依頼することが問題視されたこともあったが、今回の提案は、こうした過去の教訓を十分に踏まえたものなのだろうか?

効果は期待できそうにない「介護予防支援の指定対象の拡大」

また、厚労省は「地域包括支援センター以外にも介護予防支援の指定対象を拡大する」ことも提案した。もちろん、包括が担っている介護予防支援を、居宅も直接担えるようにすることを想定した提案だ。

この案は、介護予防支援費の報酬単価が毎月6500円以上とならなければ効果的な施策にはならない。だが、これまでの議論の経緯を鑑みれば、報酬単価は4300円程度に据え置いたまま、居宅が直に介護予防支援を担当できるようにすることしか想定されていないように思える。そうなれば、介護予防支援を積極的に担当しようとする居宅はほとんど現れないだろう。

残念ながらこの案も、実現したところで、あまり意味のある施策となりそうにはない。

介護予防ケアマネジメントAの簡素化は従来施策と矛盾する

さらに厚労省は、一定の条件を満たせば、介護予防ケアマネジメントAでもサービス担当者会議やモニタリングを省略できる案も示した。ケアマネにアンケートした結果に基づき、初回の簡素化は難しいが、2回目以降のサービス担当者会議やモニタリングの省略なら可能と判断したらしい。(表参照)。

だが、介護予防ケアマネジメントAの対象者の中には、しっかりフォローすれば、改善が期待できる人も多い。それを思えば、最低限のサービス担当者会議やモニタリングは着実に実施すべきであり、単に現場が多忙だから業務を簡素化させようとする姿勢には疑問に感じる。

表:従前相当サービスの介護予防ケマネジメントのプロセスのうち、 簡略化しても効果が変わらないと思われるもの( 814 センターからの回答)
サービス担当者会議の省略 訪問によるモニタリング時期の柔軟な設定 訪問によるモニタリングの省略 簡略化できるものはない
初回から 3.1% 15.1% 12.4% 24.9%
2回目以降 39.3% 52.2% 43.2%

厚労省「社会保障審議会介護保険部会(第101 回)参考資料」令和4年11 月 14 日195頁

そもそも、ケアマネに対する研修が重層化されているにも関わらず、要支援者や総合事業対象者の業務を簡素化していくことは政策の矛盾ではないだろうか?

財源確保の覚悟を固め、真に問題解決を目指した議論を!

控えめに言っても、今回の厚労省の提案は、性急で雑な提案であるとの印象を受ける。あまりにも包括の機能やケママネジメント業務に対する「理念」が欠けている内容と思えるのだ。

このような施策が実現されれば、かえってケアマネジメントの専門性を歪めてしまい、不適切なサービス利用が横行する危険性がある。介護予防施策も曖昧となり、軽度者の重度化を促進させしまうのではないだろうか。

今さら言うまでもないことだが、包括は「地域包括ケアシステム」の重要拠点だ。そして、介護予防ケアマネジメント業務は、包括の活動の骨格をなす業務といっても過言ではない。

この当たり前の事実を、厚労省の俊英たちが理解していないはずがない。それなのに、こんな提案が出てきてしまうのは、やはり「貧すれば鈍する」ということなのだろう。つまり、財源が確保できそうにない中で、必死にひねり出した苦し紛れの提案なのだろう。

だが、包括の激務もケアマネ不足も、苦し紛れの一策でなんとかできるほど、ぬるい問題ではない。真に解決を目指すなら、しっかりと財源を確保する覚悟を固めた上で、慎重に議論を進めなければならない。例えば、介護予防支援については、前述した通り、その単価を6500円以上にすれば、居宅への移行はスムーズに進むだろう。また、居宅を包括の「窓口」と位置付けるなら、それによって増える業務負担をどのようにフォローしていくかも提案・検討すべきだ。

少なくとも、これらの苦し紛れの提案が、24改正でそのまま実現するような未来だけは、願い下げたい。

結城康博
1969年、北海道生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒、法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)。介護職やケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護系の仕事に10年間従事。現在、淑徳大学教授(社会保障論、社会福祉学)。社会福祉士や介護福祉士、ケアマネジャーの資格も持つ。著書に岩波ブックレット『介護職がいなくなる』など、その他著書多数がある。

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