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結城教授の深掘り!介護保険

※この記事は 2023年6月30日 に書かれたもので、内容が古い可能性がありますのでご注意ください。

データで見えてきたケアマネ不足、「失策」を改めさせるには残された時間は少ない!

誰もがケアマネ不足を認識すべき

「ケアマネジメント・オンライン」が居宅介護支援事業所で働く会員を対象に行った調査(4月27日~5月16日、648人から有効回答)によると、自分が働く法人や事業所でケアマネジャーが「不足していない」と回答した人はわずか22.9%であった。つまり、ケアマネ不足の影響が出ている事業所や法人で働いている人は7割余りに達していたと理解できる。

実際、全国社会福祉協議会「中央福祉人材センター」におけるケアマネの有効求人倍率も、最近、3倍後半もしくは4倍と推移している。もはや、ケアマネ不足は、データ上でも明らかな事実であり、誰もが認めざるをえない現実である。

「ケママネ難民」の兆しが窺える!

しかも、「ケアマネ難民」の兆候が見え始めていることもデータで浮き彫りとなった。ケアマネジメント・オンラインの独自調査によれば、地域包括支援センターからの介護予防支援の業務委託や、新規の要介護者の依頼を「断らざるを得なかった」と回答したケアマネジャーが、いずれも3割を超えたことが分かった。

このまま抜本的なケアマネ不足対策がなされなければ、すべての団塊世代が85歳以上になる20235年ごろには、お金はあっても在宅介護保険サービスを使えない「ケアマネ難民」が世の中にあふれかえることになるかもしれない。

受験資格の厳格化は失策!

ケアマネ不足が深刻化している要因は、いくつか考えられるが、主な理由は次の4点だろう。

  1. (1)介護職員の処遇改善策が進みケアマネとの給与差が縮小したことで、ケアマネへの転職数が減った。
  2. (2)事務作業や更新研修など、特有の負担の影響で、ケアマネ自体の職種が不人気となった。
  3. (3)要介護(支援)者が増加し続けているため、供給(ケアマネ)が追いつかない。
  4. (4)ケアマネ受験資格の厳格化により受験者数が減少した。

このうち、(4)の受験資格厳格化は明らかに国の「失策」だ。表からも分かるように、第21回(平成30年度)介護支援専門員実務研修受講試験から、一挙に受験者数が減少している。

多くのケアマネが引退していく!

私が受験資格厳格化を特に問題視するのは、近い将来、ケアマネが大量に離職することが予測されるためだ。なにしろ、ただいま現在のケアマネの平均年齢は約53歳。言い換えるなら、今、現場で働いているケアマネの多くが10年もすれば、引退の時期に差し掛かるということだ。若い人材が次々と参入しているというのであれば、この平均年齢の高さも、あまり気にはならない。だが、既に述べた通り、受験資格の厳格化により、ケアマネを目指そうという人は、一気に減ってしまっているのだ。

表:介護支援専門員実務研修受講試験・受験者数及び合格者推移
受験者数(人) 合格者数(人) 合格率
第1回(平成10年度) 207,080 91,269 44.10%
第2回(平成11年度) 165,117 68,090 41.20%
第3回(平成12年度) 128,153 43,854 34.20%
第4回(平成13年度) 92,735 32,560 35.10%
第18回(平成27年度) 134,539 20,924 15.6%
第19回(平成28年度) 124,585 16,281 13.1%
第20回(平成29年度) 131,560 28,233 21.5%
第21回(平成30年度) 49,332 4,990 10.1%
第22回(令和元年度) 41,049 8,018 19.5%
第23回(令和2年度) 46,415 8,200 17.7%
第24回(令和3年度) 54,290 12,662 23.3%
第25回(令和4年度) 54,449 10,328 19.0%

厚労省HPより

受験資格を旧制度に、そして更新制は廃止を!

今後、より深刻化するケアマネ不足に備えるためにも、受験資格の門戸を、かつての制度と同じ程度まで拡げるべきだ。さらにいえば、更新研修を廃止してケアマネ資格を終身制にすることも、できるだけ早く、そして前向きに検討すべきではないか。

そもそも、社会福祉士、介護福祉士、理学療法士、保育士、看護師など、福祉・医療系専門職に更新制といった仕組みはない。2022年7月1日から教員免許の更新制も廃止されている。特に若い人材を確保する上で更新研修の撤廃は不可欠と考える。

研修をなくすことにより、ケアマネジメントの質が担保されないと考える人がいるかもしれない。だがこの点は、ちょっとした工夫でなんとでもなると思う。たとえば、「定められた研修を受けたケアマネが働く居宅介護事業所だけが算定できる加算の創設」などがありえるだろう。むしろ、制度で受講を強制するより、報酬によって受講を促した方が、皆、より熱心に受講すると考える。

いまこそ「勇気」ある提言を!

なお、ケアマネ試験の受験資格については、私だけが問題視しているわけではない。今年5月には山梨県がケアマネ受験資格の緩和を提言。この提言を踏まえ、6月19日には関東を中心とした1都9県の知事でつくる「関東地方知事会」が、ケアマネ試験の受験資格の見直しを求める要望書を厚生労働省に提出した。

こうした「勇気」ある行動には、敬意を表したい。というより、介護の職能団体や関係者は、大人しすぎると思う。もっともっと国に向けて現場の問題点を発信し、実現すべきことを要望すべきである。

ケアマネ不足については、介護に関わる人なら誰もがその深刻さを痛感しているはずだ。このまま介護業界が問題提起をせずにいては2035年以降、日本のあらゆる地域で、「ケアマネ難民」や「介護難民」があふれかえるようなことになりかねない。国の「失策」を改めさせ、利用者を守っていくには、現場の声を集めて世論を形成していくしかない。

地域包括ケアシステムは深化どころか机上の空論に!

当たり前のことだが、在宅介護を推し進め、地域包括ケアシステムを実現させるには、ケアマネ不足を放置しておくことはできない。というより、この問題を放置しておけば、地域包括ケアシステムは机上の空論になり果てるだろう。

解決のために残された時間は少ない。2024年度の介護報酬改定に向け、介護業界全体がケアマネ不足に真正面から対峙していくべき時が来ている。

結城康博
1969年、北海道生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒、法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)。介護職やケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護系の仕事に10年間従事。現在、淑徳大学教授(社会保障論、社会福祉学)。社会福祉士や介護福祉士、ケアマネジャーの資格も持つ。著書に岩波ブックレット『介護職がいなくなる』など、その他著書多数がある。

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